整形プリクラ

金平糖とピエロ

整形プリクラ(脚本)

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整形プリクラ
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〇大学の広場
生徒1「ねぇねぇ、整形プリクラって知ってる? 友達の友達から聞いた話なんだけど」
生徒B「都市伝説だろ。プリクラで整形なんて出来ないって」
寿里「楽しそうな話してるね、私も仲間に入れてくれる?」
生徒1「じゅ、寿里先輩。その、今、整形プリクラの話をしてて」
生徒B「お、俺、帰ります。さようならっ!」
寿里「■■君、帰っちゃった。仲良くしてたのに、ごめんね?」
生徒1「そんな、気にしないでください。それで、整形プリクラ・・・・・・」
寿里「知ってるよ?600円で整形出来るなんてお得だよね。貴方もしてみる?」
生徒1「いっ、いえ、私は・・・・・・」
寿里「あはっ、した方が良いのに」
生徒1「・・・・・・っ、失礼しますっ!」
寿里「あーあ、帰っちゃった。・・・・・・生意気なブス。後で躾けてあげないと」
寿里「それにしても、これで遊ばない手はないわ」
  くすくすと笑う寿里の目線は、クラスの端の席に向けられていた。生来の加虐者である彼女は、既に次の獲物を狙っていた。

〇大学の広場
晶「おはよう、桜」
桜「晶。おはよう」
  晶と桜は幼馴染である。恋人、とはまだ言わない距離感ではあるが、お互いに惹かれている。
  しかし、この二人の関係を良く思わない人間がいた。
寿里「おはよう、晶君。桜」
晶「・・・・・・寿里先輩。 おはようございます」
桜「おはようございます、寿里先輩」
  そう、寿里は晶に片想いをしている。だから彼女は、桜に事あるごとに嫌がらせをしていた。
  しかし、桜は嫌がらせを前に薄い表情を崩さない。生まれつきのものだから崩しようがないのだ。それすら、寿里の怒りを買う。
寿里(本当、ムカつく女。晶君、こんな女の何処が良いの?・・・・・・まぁ、良い。今日こそこの女を終わらせてやる)
寿里「ねぇ、桜。今日、私と遊びに行かない?」
桜「・・・・・・先輩が良ければ、是非」
晶「っ、桜! 俺も行くよ、だって」
  先輩は君を嫌っている。そう言おうとした瞬間、寿里が桜を睨みつける。桜は、寿里が自分を嫌っていることを理解している。
  それでも晶に助けを求めないのは、彼女は晶を守りたいからだ。自分が助けを求めれば、逆上した寿里が晶に危害を加えかねない。
  寿里の取り巻きはいくらでもいる。もしも先輩の男子生徒に絡まれてしまえば、その時は桜の力ではどうにもならない。
  晶が自分と同じような苛めを受けないように、桜は寿里の言うことを聞く。晶を盾にすることなど、桜には出来なかった。
桜「大丈夫、晶。私と寿里先輩、二人で行くよ」
寿里「じゃあ決まり。放課後、よろしくね~」

〇ゲームセンター
寿里「桜、整形プリクラって知ってるでしょ。それで写真撮ろうよ」
桜「あの、先輩。私、顔を変えるのは嫌です」
寿里「どうして? そんな不愛想な顔じゃ、晶もいつか飽きちゃうよ。もっと可愛い顔に整形してあげるからさ?」
桜「確かに、私は不愛想です。でも、私はこの顔が嫌いじゃないんです。父にも母にも、似ているって言われるから」
寿里「・・・・・・本当ムカつく女。良いから早く入れよ! その能面顔、ぶち壊してやる!」
桜「嫌っ、やめてください・・・・・・!」
  抵抗も虚しく、桜は整形プリクラの中に突き飛ばされてしまった。そのまま、寿里が画面を操作し、桜の顔を設定する。
寿里「あはは、これとか良い顔じゃん。あんたにはこれがお似合いよ」
  桜の顔が作り変えられていく。二目と見られないその顔を前に、寿里の高笑いが続く。絶望の中で、桜は帰路につくのであった。

〇女性の部屋
寿里「ああ、楽しかった! 桜のあの顔、見物だったわ!」
整形プリクラ管理者「失礼いたします」
寿里「きゃあっ!? だ、誰!?」
整形プリクラ管理者「整形プリクラの管理者です。お客様は規約違反をしましたので、顔を頂きにまいりました」
寿里「はぁ!?何のことよ!?」
整形プリクラ管理者「整形プリクラはご本人以外の顔を整形してはいけないのです。規約違反者からは顔を頂き、整形プリクラに設定させて頂きます」
整形プリクラ管理者「まぁ、貴方様の性格の悪さがにじみ出た顔では、買い手はつかないでしょうが」
寿里「嫌、来ないで・・・・・・きゃあああ!」
  寿里の目の前は真っ暗になり、そして。次に目覚めた彼女の顔は、悲鳴を前に歪むのだ。

〇見晴らしのいい公園
晶「桜。寿里先輩、学校に来なくなったよ」
顔を変えられた桜「え・・・・・・なんで、先輩が?」
晶「顔が無くなったんだ。整形プリクラの規約違反だって」
顔を変えられた桜「そう・・・・・・可哀想に」
晶「君を傷付けたあいつだ、可哀想なんて思わなくて良い!」
顔を変えられた桜「だって・・・・・・顔を無くす悲しみは、私も知っているから。先輩はきっと、つらいと思う」
晶「桜・・・・・・」
整形プリクラ管理者「失礼します。貴方が桜様ですね」
顔を変えられた桜「はい、貴方は?」
整形プリクラ管理者「管理者として、貴方様に謝罪いたします。そして、貴方様のお顔をお返しいたします」
整形プリクラ管理者「人々の幸福を奪うことは、私の本意ではないですので」
  管理者の一言に、桜の姿が元に戻る。驚く二人を前に、管理者は深々と頭を下げる。
整形プリクラ管理者「どうか、優しい桜様に、幸多からんことを」
晶「桜、ごめん。力になれなくて。これからは、僕が君を守る。守らせて、くれるかい?」
桜「晶・・・・・・ありがとう・・・・・・ 私、晶を頼って、良い? 無表情でも、好きなままで、良い?」
晶「勿論だ! 僕も、君が好きだ」
  涙と笑顔の中で、二人は愛を告白する。互いを思い合い微笑み合う二人を眺めながら、管理者は静かに呟く。
整形プリクラ管理者「整形プリクラ、お客様もどうでしょうか? ただし、プレイは自己責任。規約違反の際には、お覚悟を」

コメント

  • このお話のプリクラではないけれど、今はスマホで自撮り→加工が当たり前ですから、ある意味自分の顔を自分で捨てている状態かもしれませんね。管理者が来て「元の顔がいらないなら頂戴」と言われないように、加工はほどほどに、と思います。

  • 物語設定がすごく面白いですね!
    近い未来、プリクラ感覚で整形が行われそうかもしれませんので、こういった物語のような展開も…かもですね!

  • そんな手軽に自分の顔を変えられたら….。
    確かにはそれぞれコンプレックスはあると思いますし、私も少なからずありますが、両親から貰ったものって考えると、やはり躊躇しちゃいそうですね。

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