とある世界の物語

ビスマス工房

Story#0004:魔法少女と蜘蛛の道化師(脚本)

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〇近未来の会議室
  リゲル・エルダールの神官、シリウス・セレストは、地球に関する会議に出席していた。
「ソル星系は今、人間種族が意識の覚醒に向け邁進しているにも拘らず、カバール魔神軍の影響を受け、人心が荒廃しつつある」
「特に顕著なのは地球と火星だ。あの二つの星は過去に争い、我々宇宙連合と銀河帝国の両勢力から忠告を受けている」
「実に興味深い多面性だ。保護観察のしがいがある。流石は創造の主アザトース様の故郷だ」
「しかし自滅の道を歩むのは残念だ。なんとしてもソルを助けたい」
「一つ、良い方法がある」
「あの種族の中には、未だに魔法の力の源たる"精霊の心"を有する個体がいる」
「最後の一人、だったか。まだ幼い子どもだと聞くぞ」
「あらゆる存在と心を通わせるその個体が覚醒の祈りを捧げることで、人間種族全体の覚醒を促進できるだろう」
「一人では足りない。その祈りをソル星系全体に展開するには、多くの覚醒者が必要だ」
「144000人ではどうか」
「異議なし」

〇港の倉庫
  幻夢境。今日の依頼任務は、異種族人身売買組織の捜査。
  眠りにつき、教えられたように念じると、見知らぬ倉庫の前にいた。
アキラ・ロビンソン「すいません、誰かいませんか?」
  歩き回ると、その奥に、水の入った大きな水槽があり、その中に人魚の少年がいた。
ミルピピ「あ、人間さん。組織の人じゃないね」
アキラ・ロビンソン「君のお姉さんの依頼で、探しに来たんだ」
ミルピピ「ふーん。ここがどこか、分かる?」
アキラ・ロビンソン「ああ」
  そこで対話を切り上げ、固有夢に戻る。
楪司「見つかりましたか?」
  場所を教えると、楓先生は難しい顔をした。
アキラ・ロビンソン「どうしたんですか?」
楪司「ユスチヌフファミリーに連絡します」
アキラ・ロビンソン「え?マフィア?」
楪司「こういった犯罪組織の摘発には、あの人たちの協力が必要なのです」
メイシュジュ「ありがとう。君の仕事はここまでよ。おやすみなさい」
  少し眠たくなってくる。そのまま夢の世界に入っていった。

〇豪華なリビングダイニング
エマ・レイ「おはよう」
  朝起きて、服を着替える時には、勝手に箪笥が開き、その日の気分に合った服が目の前に飛んでくる。
エマ・レイ「ありがとう」
  その度ににこにこと話し、笑い合う。
エマ・レイ「今日は何があるの?」
  自分にとって、大いなる何かと繋がる感覚はごく当たり前のものだ。
エマ・レイ「あ、楓先生からだ」
  ローカルなニュースサイトには、ハーピーたちによる家畜襲撃が激減したと書いてあった。
エマ・レイ「ハーピーたちの件、解決したんだ」
  リビングに入ると、紅茶の入ったポットが目の前に現れた。
アキラ・ロビンソン「おはよう」
  婿養子のアキラくんは、魔法を見ても、驚く様子を見せない。
アキラ・ロビンソン「今日は休みだね。どこか行く?」
  金曜日、土曜日、日曜日の三日間は休みだ。
エマ・レイ「駅前のお菓子屋さんに行きたいです」

〇西洋風の駅前広場
エマ・レイ「それは"差異"ですね。本来のその種の性質からかけ離れた性質を持つ人のことです」
  金平糖の大袋を手提げに入れて、僕たちは駅前を歩いていた。
アキラ・ロビンソン「金平糖って、こっちの世界にもあるんだ」
エマ・レイ「星くずを食べてるみたいですね」
  そう言って、笑い合った。その時だった。
アキラ・ロビンソン「人集りが出来てる」
エマ・レイ「真ん中に誰かいるみたいですね」
  男女が激しく言い争っている。その手には、刃物があった。
エマ・レイ「ちょっと行ってきます」
アキラ・ロビンソン「あれ、エマ?」
  エマがいない。探すと、人集りの中の男女のところに近付いていくエマが見えた。
エマ・レイ「あのー、どうしたんですか?」
?「こいつがまた高い買い物したからだよ」
シルエット1「彼がまた可愛い女連れてたからよ」
エマ・レイ「そうですか」
  険悪なムードが漂う中、エマは二人に微笑みかけた。
  すると、信じられないことが起きた。
シルエット1「ええ、そうね」
?「そうだな。ごめん」
  二人は刃物を捨てて歩き去った。
アキラ・ロビンソン「エマ、何をしたの?」
シルエット2「魔法だ」
  人々は口々にそう言って、歩き去った。

〇大教室
  ミランダのことで進展があった。どうやら、ミステリースクールに通い、瞑想を学んでいたが、そこで異星人に会っていたらしい。
フレデリック・バーネット「蜥蜴だ。蜥蜴が心の隙間に入り込んだんだ」
  しかも、あることから"現人神"と化していたミランダを、蜥蜴族とプレアデスが奪い合い、争っていたらしい。
香月忍「プレアデスと言えば、惑星フェイトンの滅亡に関わる種族だな」
  一触即発の空気の中に、ミランダは沈んでしまったのだろう。
アルフェン卿「皆様、こんにちは」
  羊の角が頭に生えた学校長、アルフェン卿が笑顔で現れた。
アルフェン卿「あなた方に質問です。本気でこの件に関わりたいですか?」
  僕たちは頷く。
アルフェン卿「そうですか。ではまず、"ハロン"に会ってもらいます」
  ハロンとは、シャンバラ族のコンタクティであるらしい。
アルフェン卿「きっと、あなた方に"答え"をもたらしてくれるでしょう」

〇大きい交差点
  サイト89から出る時、ある二つの事を条件として出された。一つは、魔法のリミッターである彼から離れないこと。
  もう一つは、魔法の力を社会人として役立てろということだった。
ノアール「お前のやるべきことは分かるな?」
  モンスターが暴れているという情報を受け、ここまで瞬間移動してきた。柊先生が難しい顔で言う。
エマ・レイ「はい」
  一人の少年が佇んでいる。災害レベルの異能力を有するモンスターだ。自分のやるべきことは、この"モンスター"との対話である。
エマ・レイ「ねえ」
  話しかけると、きっと睨まれた。じっとその瞳を見つめると、その心の傷が見えてきた。
シアン「何だ。何故、泣いている?」
  少年が警戒心を解くと同時に、背後から何者かの気配を感じ、麻酔銃の発砲音がした。
エマ・レイ「駄目!」
  声を上げるも空しく、少年は倒れ込んだ。

〇豪華なリビングダイニング
  家で寛いでいると、アルフェン卿が現れた。
アルフェン卿「こんにちは」
アキラ・ロビンソン「どうしたんですか?」
  アルフェン卿は難しい顔で言う。
アルフェン卿「アキラ・ロビンソン・レイさん。エマ・パトリック・レイさんから目を離さぬよう」
  そう言って、アルフェン卿は姿を消した。

〇魔法陣
  キャサリンは魔法について調べ続けていた。
キャサリン・オークランド「・・・・・・あの子、本当に?」
  信じがたいことを、沢山知ってしまった。
キャサリン・オークランド「知らせないと、あの子・・・・・・」

〇海岸の岩場
エマ・レイ「ねえ、いる?」
  海辺に立って"彼"を呼ぶ。小さい頃はずっと一緒だった彼。
エマ・レイ「・・・・・・いないんだ」
  いつしかその存在は薄くなり、消えた。
エマ・レイ「・・・・・・帰ろうかな」
  帰ろうと立ち上がった時、背後から視線を感じた。
エマ・レイ「あれ、あなたは」
  以前、依頼任務で捜索した人魚の少年が、海の中からこちらを見つめていた。
ミルピピ「何かあったの?」
  WSAの任務には、担当区画の住人からの依頼で動く依頼任務と、上からの命令で動く特殊任務がある。
エマ・レイ「実は、」
  その日あった任務の話を、モンスターの少年の事を話した。
ミルピピ「忘れたい?」
  少年は手を差し伸べる。その手をとるか否か悩んでいると、声が飛んできた。
アキラ・ロビンソン「エマ!どうしたの?」
  人魚の少年は姿を消していた。

〇カラフルな宇宙空間
  シャンバラ族は、別名をゼータレチクル人、グレイとも呼ばれ、大きな眼が特徴である。
シルエット3「お待ちしておりました。チーム・ミライの方たちですね?」
  無機質ながら吸い込まれるような美貌を持つその人に、僕たちは尋ねた。
アキラ・ロビンソン「何故、フーバーダムで待ち合わせを?」
シルエット3「今から貴方たちを私たちの星に連れていきます。見てほしいものがあるのです」
  何かに引き寄せられる感覚があって、周囲の景色が変わる。地球から、ゼータレチクルの荒野の星に移動したのだ。
シルエット3「こちらです」
  そこにあったのは、水が枯れ果てたフーバーダムの姿だった。

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