Tokoyo物語(脚本)
〇魔界
生あるものは必ず死あり
仏教では冥土
神道では常世とも呼ばれた場所に
必ず死者が訪れる場所がある。
〇皇后の御殿
閻魔大王の裁きを受ける場所
閻魔堂である。
〇祭祀場
エンマ「この場での証言で嘘をつけば、舌を引っこ抜いてすぐさま地獄へ落とす!!」
エンマ「それを心して発言するように!!」
亡者「は、はいぃぃぃ!!」
エンマ「貴様は山の手線の全駅で痴漢行為に及んだと聞く」
エンマ「それは本当か!!」
亡者「ち、違います!!」
亡者「中央線と埼京線の全駅ですぅ!!」
エンマ「今すぐ地獄に落ちろーっ!!」
〇血しぶき
〇祭祀場
エンマ「まったく、とんでもないヤツだ!!」
獄卒くん「あのぉ、エンマ様」
獄卒くん「もう少し、あの者の弁解を聞いても良かったのでは・・・」
エンマ「弁解の余地などあるか!!」
エンマ「業鏡で確認するまでもなく地獄行きだ!!」
獄卒くん「出過ぎた真似でした・・・」
エンマ「出過ぎた以前に、その格好はなんだよ!? 一体、なにがあったんだよ!?」
獄卒くん「仕事が終わったら 今日は野球をするんでさぁ」
獄卒くん「なにか問題がありましたかい?」
エンマ「問題しかないぞ!!」
エンマ「人間界で言うなればここは裁判所だ!!」
エンマ「そこにユニフォーム姿の鬼が居たらおかしいだろ!!」
獄卒くん「裁判所に鬼がいる時点でおかしいですぜ!!」
エンマ「それはそうだ!」
「ワッハッハッハー」
エンマ「今すぐ着替えてこい!!」
獄卒くん「ちょっくら着替えて来ます」
エンマ「まったく、威厳もなにもあったものでは無いな・・・」
〇ハート
カムロが出て行って、はや三ヶ月か・・・
母の言いつけで人間界で世俗を学んで来いと外へ出されたが、心配だ・・・
〇祭祀場
まぁ、たかだか三ヶ月。
何も変わるはずがないか・・・
「ただいまなのだー」
エンマ「この声はカムロ!?」
エンマ「帰って来たのか!?」
エンマ「変わったあああぁぁぁ!!」
エンマ「セレブにかぶれて帰って来たああぁぁ!!」
カムロ「はろう。 ゆー あ― まい ふぁざー!!」
エンマ「あなたは私の父です・・・」
エンマ「知ってるよ!! ちゃんと認知してるもの!!」
カムロ「ゆ、ゆあ まい ふぁざー?」
エンマ「ディア マイ ファザーじゃないか?」
カムロ「おう、でぃあまいふぁざー!!」
レンゲ「英語を教えたけど、まだまだダメね」
エンマ「セレブかぶれに仕立てた犯人はお前かぁ!!」
レンゲ「お前って言わないで、レンゲって呼んでよ」
レンゲ「ア、ナ、タ♡」
エンマ「たまにしか帰って来ないヤツには、お前で十分だ!!」
レンゲ「もう、冷たいわね」
レンゲ「ギオンも大変ね こんな怒りんぼうさんのパパで」
カムロ「まだギオンじゃなくて、カムロなのだ」
レンゲ「いい加減、一人前と認めて幼名を卒業させなさいよ」
エンマ「カムロは、まだまだ子供だぞ」
レンゲ「まぁ、だから私が人間界について行ってあげたんだけどさぁ」
エンマ「天上界での仕事は放り出してか?」
レンゲ「勿論、煩悩に悩める人間達を導いて来たわよ、ちゃんと!!」
エンマ「その煩悩の塊の品々はなんだ?」
レンゲ「こ、これはあれよ・・・」
レンゲ「托鉢の成果ね」
エンマ「嘘をつくな―!!」
エンマ「どっからどう見ても、欲望に身を任せて買い漁ったものだろ!!」
レンゲ「あーっと、ギオン。 私は天界に戻るから元気でね」
カムロ「うむ、母上も元気でな」
カムロ「この三ヶ月間、すっごく楽しかったぞ」
レンゲ「アタシもよ」
レンゲ「じゃ、またね。 バイバーイ」
カムロ「行ってしまったのだ・・・」
エンマ「カムロも着替えなさい」
カムロ「そうするのだ」
カムロ「着替えたのだ」
エンマ「よしよし、良い子だ!!」
エンマ「それにしても、やっぱり私の娘は可愛い。 可愛すぎる!!」
エンマ「はっはは、もう目に入れてしまおうかな」
獄卒くん「取り込み中にすいやせん」
獄卒くん「次の亡者さんが来てますぜ、エンマ様」
亡者「川を渡してくれた婆さんに連れられてきたのですが・・・」
エンマ「仕事か・・・」
エンマ「三ヶ月ぶりに娘と再会したばかりなのに、仕事かよ。嫌になっちまうな・・・」
獄卒くん「オニエンマ様に言いつけますぜい」
エンマ「それはマズイ!!」
エンマ「貴様の犯した罪を述べよ!!」
亡者「へぇ、痴漢を少々!!」
エンマ「地獄に落ちろぉ!!」
〇血しぶき
〇祭祀場
エンマ「まったくどうなっているんだ、人間界は!!」
獄卒くん「ホント許せませんぜ!! 一体、人間達は何をやっているのだか!!」
エンマ「お前も何をやってるんだよ。 着替えてこいって言っただろ!!」
獄卒くん「し、失礼しやす」
カムロ「父ちゃ!! あまり厳しく言うでないのだ」
エンマ「うっ・・・」
エンマ「しかし、厳しくしないと部下に対して示しがつかないからなぁ・・・」
カムロ「厳しいばかりでは鬼もついてこないのだ!!」
「カムロやあぁぁぁ!!」
エンマ「来たな親バカ、もとい爺バカが・・・」
トシオ「お帰りや、カムロォォオ!!」
トシオ「イヤオウ!!ワシの孫が可愛すぎる!!」
トシオ「悶死じゃあああっ!!」
トシオ「爺、悶死!!」
トシオ「箱に入れたくてたまらんわい!!」
トシオ「ほうら、はよう箱に入れ。 箱入り娘じゃあああ!!」
エンマ(なんという爺バカだ・・・ 目も当てられん)
カムロ「ただいまなのだ、オニエンマ」
エンマ「公然の秘密だから、その名前で呼んじゃだめー!!」
カムロ「あう・・・」
エンマ「それもダメだよ!! まっ先にトンボが出ちゃうぅぅぅ!!」
トシオ「はっはっは!! 良い、良い」
トシオ「そんなことではワシは怒らんて」
エンマ「元気だったか、オニエンマ」
トシオ「ぶっ飛ばすぞ、こわっぱ!!」
エンマ(怒らないって言ったじゃないか・・・)
「エンマさま!! エンマさまあぁ!!」
カムロ「ばあいぶれぇいしょーーーん!!」
獄卒くん「デ、デンマさま!!」
エンマ「マッサージ機かいっ!!」
エンマ「なんでノッて来るんだよ!!」
獄卒くん「すいやせん、つい楽しそうで」
エンマ「それで今度はどうした!!」
獄卒くん「へぇ、新たな亡者さんですぜい」
亡者「ここで裁きを受けろと言われて来たのですが・・・」
エンマ「よもや、貴様も痴漢を働いたと言うのではないな!!」
亡者「滅相もない」
亡者「女子高生の座ったサドルをペロペロしてたくらいでやす」
トシオ「地獄で反省してこい!!」
〇血しぶき
〇祭祀場
トシオ「むぅ、いかん。 つい昔の癖で、審判してしまったわ」
カムロ「爺ちゃは、まだまだ現役なのだ」
トシオ「嬉しいことを言ってくれるなぁ」
トシオ「そんな可愛いことを言うのはこの口か!?」
カムロ「爺ちゃはいつも面白いのだ」
獄卒くん「微笑ましい光景ですなぁ」
エンマ「どこがだよ」
エンマ「我が父ながら、痛々し過ぎて見ていられん・・・」
獄卒くん「エンマ様もどっこいどっこいですぜ」
獄卒くん「ビ、ビヨウ様がいらっしゃいましたぜ・・・」
エンマ「不用意な発言はするなよ・・・」
ビヨウ「お帰りなさい、カムロ」
カムロ「婆ちゃ!!」
カムロ「ただまいなのだ!!」
ビヨウ「人間界はどうでしたか?」
カムロ「とても楽しかったのだ」
ビヨウ「それは何よりだわ」
ビヨウ「楽しい以外にも何か学ぶことはあったかしら?」
カムロ「たくさん学んだのだ」
ビヨウ「そう、どんなことを学んだの?」
カムロ「人間界には介護や福祉さあびすが一杯あって、苦労した者達に報いろうとしてたのだ」
カムロ「カムロは常世にもそれを、いっぱい、いーっぱい広めたいのだ」
ビヨウ「そう、本当にやってみる?」
カムロ「やってみたいのだ」
カムロ「冥土も地獄も天国に変えるのだ」
エンマ「地獄は天国に変えちゃダメだろ!!」
カムロ「変えるのだ!!」
ビヨウ「ふふ、色々やってみなさい。 何事も勉強よ」
トシオ「ふむ、しかしカムロはまだ小さい」
トシオ「急がなくても良いと思うんじゃがなぁ」
ビヨウ「私達も協力すれば良いではありませんか」
ビヨウ「隠居して暇な身ですもの」
トシオ「しかしなぁ・・・」
ビヨウ「ああぁん!?」
トシオ「ワ、ワシも賛成じゃ・・・」
獄卒くん「なんだか、なし崩し的に決まっちまいましたぜい」
エンマ「仕方ない 俺には止められんよ・・・」
カムロ「先ずは長年、常世と地獄で働いた者達を労わってやりたいのだ」
カムロ「事前にアンケートも行ってきたのだ」
カムロ「えんとりーなんばー1番」
カムロ「ガシャドクロさん!!」
カムロ「彼は骨粗鬆症で悩んでいるのだ!!」
エンマ「全身、致命傷!!!!」
エンマ「今までよく頑張ったよ!!」
カムロ「えんとりーなんばー2番」
カムロ「奪衣婆さん(18)」
エンマ「サバ読み過ぎだろ!! 無理があるぞ、無理が!!」
カムロ「手漕ぎボートで三途の川を渡すのが辛いのだそうだ」
エンマ「おいおい、モーターボートを寄越せと言うんじゃないだろうな!?」
カムロ「欲しいのはコレだそうだ」
エンマ「スワンボーーートッ!!」
カムロ「一時的にでも恋人気分を楽しみたいだそうなのだ」
エンマ「亡者とイチャラブするつもりか!? ただの欲求不満だろ!!」
カムロ「えんとりーなんばー3番」
カムロ「餓鬼さん!!」
エンマ「全裸ーー!! もろ出しじゃないかっ!!」
獄卒くん「エンマ様、こんな物が落ちてましたぜ」
エンマ「隠せ、隠せ!!」
エンマ「どあー---っぷ!!」
エンマ「何見せつけてんだよ、こんちくしょう!!」
カムロ「痩せたいそうなのだ」
カムロ「みんな、カムロに悩みを打ち明けてくれたのだ」
カムロ「カムロは、カムロは・・・」
カムロ「約束にコミットしたいのだ!!」
エンマ「結果にコミットしろー!!」
〇皇后の御殿
果たしてカムロの願いは叶えられるのか──
エンマは過労死してしまわないか・・・
常世に積もりに積もった難題は山積みである。
それでも
今日も閻魔堂は平和である。
現世も常世も変わらぬ光景、いやー笑ってしまいました。そして現世は痴漢と変態で溢れかえっている世界ww
〇ンマ様には神経性胃炎にならないよう、ほどほどに頑張ってほしいですね!
本当に痴漢の多い埼京線と、混雑の中央線。路線の選択がいいですね。
そしてこの地獄の雰囲気作りが上手い。おそなえさん、世界観作るの本当に上手いです。こんな背景あったんだ、を組み合わせて見事に地獄にしてますね。
あと、ただの女性キャラを奪衣婆にしているのは笑いました。ライターだからこそわかるtapジョークでした。コメディは読んでて読後感が良くていいですよね。
めちゃくちゃ笑いました🤣
なんで痴漢ばかりなんだこの国はw
オニ◯ンマで真っ先にトンボが出ちゃう❤️