第5話 静けさの中で(脚本)
〇空
〇暖炉のある小屋
リゼット・・・
リュテスにいる姉さんと・・・
姉さんの子を守ってあげて・・・
リゼット「リュテス・・・?」
母さんの最後のお願い・・・
どうか忘れないで・・・
リゼット「・・・母さん!」
〇貴族の応接間
「・・・ット」
宮廷魔導師リゼット「・・・・・・」
第一王子ミシェル「リゼット!」
宮廷魔導師リゼット「・・・ミシェル」
宮廷魔導師リゼット「いつのまにか寝ていたのか・・・」
宮廷魔導師リゼット「マリー様は?」
第一王子ミシェル「今、部屋までお送りしたよ」
宮廷魔導師リゼット「そうか・・・」
宮廷魔導師リゼット「・・・・・・」
宮廷魔導師リゼット「伯母上のこと 結局助けられなかったな」
宮廷魔導師リゼット「夢を見たんだ 昔の・・・」
宮廷魔導師リゼット「・・・母がわたしに言うんだ 姉さんと姉さんの子を頼むって」
第一王子ミシェル「叔母上がそんなことを・・・」
宮廷魔導師リゼット「・・・・・・」
第一王子ミシェル「母は・・・」
宮廷魔導師リゼット「え?」
第一王子ミシェル「リゼットがいなければ・・・ 母はもっと早く潰されていたと思う」
第一王子ミシェル「・・・もちろん僕も」
宮廷魔導師リゼット「そうだろうか・・・」
〇空
〇英国風の図書館
第一王子ミシェル「ではマリー様 これまでの復習をしましょう」
勇者マリー「はい、えっと・・・」
〇湖畔
勇者マリー「世界を創ったのは、聖地シャナに降り立った双子の女神」
〇キラキラ
勇者マリー「太陽神エグスキと月神イーリャ」
勇者マリー「双子の神は交代でこの世界を見守ってて」
勇者マリー「今はエグスキの番ですよね?」
〇英国風の図書館
第一王子ミシェル「ご認識のとおりです」
第一王子ミシェル「わたしたちの世界のことをご理解いただいて、本当にうれしいです・・・」
第一王子ミシェル「ありがとうございます、マリー様・・・」
勇者マリー「いやあ、あはは・・・」
勇者マリー(ゲームばっかりやってたから、こういうの覚えるの得意なんですよ)
勇者マリー(・・・なんて言ったら、ミシェル様、なんて思うんだろ)
宮廷魔導師ユーグ「ごきげんよう、お二方」
勇者マリー「うわっ、出た」
第一王子ミシェル「ユーグ・・・ なにか用ですか?」
宮廷魔導師ユーグ「ミシェル様 クレール殿下がお呼びですよ」
第一王子ミシェル「しかし、マリー様の座学の途中で・・・」
宮廷魔導師ユーグ「僭越ながら、続きはわたしが請け負いますよ」
勇者マリー「えっ!?」
宮廷魔導師ユーグ「いかがでしょう、勇者殿」
勇者マリー「・・・ミシェル様 クレール王子のところに行ってください」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
第一王子ミシェル「・・・わかりました 後ほど、また参ります」
「・・・・・・」
勇者マリー「・・・ユーグさん、暇なんですか?」
勇者マリー「あたしは、ミシェル様が戻るまで復習してますから」
勇者マリー「自分の仕事してていいですよ」
宮廷魔導師ユーグ「まあ、そうおっしゃらずに」
宮廷魔導師ユーグ「ミシェル様もリゼット殿もお忙しい身ですから」
宮廷魔導師ユーグ「本来、貴殿にばかり構っていられる方たちではないのですよ」
勇者マリー「そんなこと言われたって・・・ あたしを喚んだのはそっちの都合でしょ」
勇者マリー「ミシェル様とリゼットさんの力になりたいとは思ってますけど」
勇者マリー「リュテスって国には、別に恩返しをする義理はないですからね」
宮廷魔導師ユーグ「・・・ええ、そのとおり」
宮廷魔導師ユーグ「ですから、微力ながらわたしも勇者殿のお力添えをしたいと思いまして」
勇者マリー「どういう風の吹き回しですか?」
宮廷魔導師ユーグ「わたしなりに反省しているのですよ」
宮廷魔導師ユーグ「異世界から来た貴殿が、この国に不慣れであるのは当然なのだと」
勇者マリー「・・・・・・」
宮廷魔導師ユーグ「ミシェル様やリゼット殿にもずいぶんつらく当たってしまいました」
宮廷魔導師ユーグ「貴殿に助力して、お二人へのお詫びをしたいのです」
宮廷魔導師ユーグ「無論、これまでの無礼の償いになるとは思っていませんが・・・」
勇者マリー(なんかうさんくさいけど・・・)
勇者マリー「・・・わかりました そういうことなら、お願いします」
勇者マリー(この人、女を見下してて気に入らないけど)
勇者マリー(リュテスではそれが当たり前なのかな・・・)
勇者マリー(リュテスにはリュテスの常識があるんだし)
勇者マリー(あたしも、現代日本の価値観を押しつけてたのかもしれないな)
宮廷魔導師ユーグ「・・・・・・」
〇西洋の円卓会議
第一王子ミシェル「クレール様、お呼びとか」
第二王子クレール「ミシェル殿 よく来てくれた」
第二王子クレール「ガンディアが動き出した」
第二王子クレール「リュテスに向けて進軍しているようだ」
第一王子ミシェル「では・・・ 迎撃の準備を?」
第二王子クレール「ああ」
騎士団長ヴァレリー「国境を越えられる前に 帝国軍を叩かねばなりません」
第二王子クレール「メロヴィング要塞に戦力を集めよう」
第一王子ミシェル「また戦争になるのですね・・・」
第二王子クレール「・・・ところで 勇者殿の鍛錬の首尾は上々か?」
第一王子ミシェル「それが・・・ ここのところ雨続きですから」
第二王子クレール「そうか 勇者殿は炎使いだったな」
第二王子クレール「しばし様子を見たかったが 致し方あるまい」
第二王子クレール「勇者殿を指揮官に据え、進軍を開始する」
第一王子ミシェル「なっ・・・ お待ちください!」
第一王子ミシェル「マリー様は・・・」
第一王子ミシェル「・・・いえ 勇者様に陣頭指揮の経験はないかと」
第二王子クレール「無論、実際に采配を振るのは わたしとヴァレリーだ」
第二王子クレール「だが、勇者殿に率いられれば 軍の士気も高まるだろう」
第一王子ミシェル「わたしは反対です!」
第一王子ミシェル「マリー様は平和な国から来られたのですよ!」
第一王子ミシェル「そんな方を戦場にお連れするなど・・・」
第二王子クレール「・・・ミシェル殿 勘違いしておられるようだな」
第二王子クレール「異世界から勇者を召喚したのは 帝国に対抗するためだ」
第二王子クレール「王宮で大事に守るためではない」
第一王子ミシェル「し、しかし・・・」
第二王子クレール「これはリュテスを守るための戦いだ 戦いに私情を挟まないでいただきたい」
第一王子ミシェル「・・・わかりました」
第一王子ミシェル「ではせめて、わたしもお連れください」
第二王子クレール「いや、わたしがいないあいだ 城の留守をお頼み申す」
第一王子ミシェル「しかし・・・」
第二王子クレール「ミシェル殿 わがままも大概にされよ!」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
第二王子クレール「案ずるな、ミシェル殿 勇者殿は死なせないさ」
第二王子クレール「彼女はリュテスに必要な方だからな」
第一王子ミシェル「・・・はい・・・」
騎士団長ヴァレリー「・・・殿下」
第二王子クレール「・・・わかっている」
第二王子クレール「言葉選びというのは難しいものだな」
騎士団長ヴァレリー「やはりミシェル様に出撃していただくほうがいいのでは?」
騎士団長ヴァレリー「殿下は王位継承権をお持ちなのですから」
第二王子クレール「王位継承権を持つのは兄上も同じだ」
第二王子クレール「それに・・・ 兄上のような方に戦場は不向きだ」
第二王子クレール「いくら剣術がお得意でも あの繊細さでは・・・」
騎士団長ヴァレリー「しかし、ミシェル様がああも強固に主張されるとは」
騎士団長ヴァレリー「よほど勇者殿のことが大事なんでしょうなあ」
第二王子クレール「・・・・・・」
〇英国風の図書館
宮廷魔導師ユーグ「魔導にはいくつかの種類があります」
宮廷魔導師ユーグ「我々リュテスが得意とするのは自然魔導」
勇者マリー「精霊の力を借りて使う魔法ですよね」
勇者マリー「あたしの魔法も精霊に力を借りてるんですか?」
宮廷魔導師ユーグ「ええ」
宮廷魔導師ユーグ「勇者殿は炎使いですから 火精霊ザラですね」
勇者マリー「精霊に力を借りるのって、魔力の多さは関係あるんですか?」
宮廷魔導師ユーグ「精霊への対価として魔力を消費します」
勇者マリー「魔力を貸す代わりに魔法を使ってもらうって感じ?」
勇者マリー「じゃ、魔力が多いほうが精霊に何度も頼めるんだ」
宮廷魔導師ユーグ「そのとおり なかなか筋がよろしいですね」
勇者マリー「上からどーも」
宮廷魔導師ユーグ「覚えていただくことはまだまだありますが」
宮廷魔導師ユーグ「ひとまず休憩にいたしましょうか」
〇城の廊下
第一王子ミシェル(止められなかった・・・)
第一王子ミシェル(やはり僕は・・・力不足だ)
第一王子ミシェル(・・・いや 嘆くのはまだ早い)
第一王子ミシェル(せめて・・・ 僕にできることをしなければ)
〇英国風の図書館
宮廷魔導師ユーグ「勇者殿は妹君がおられるとか」
勇者マリー「ええ、まあ」
宮廷魔導師ユーグ「きっと心配されているでしょうね」
宮廷魔導師ユーグ「わたしも兄弟がいるので気持ちはわかります」
宮廷魔導師ユーグ「妹君のためにも、元の世界に戻らねばなりませんね」
勇者マリー「・・・はい」
宮廷魔導師ユーグ「・・・ガンディアが動き出したという噂を耳にしました」
宮廷魔導師ユーグ「国境を越えられる前に迎撃しなければなりません」
宮廷魔導師ユーグ「おそらく、勇者殿にも出撃要請があるでしょう」
勇者マリー「迎撃戦・・・ですか」
宮廷魔導師ユーグ「・・・実は、個人的に所有している召喚石がいくつかあります」
宮廷魔導師ユーグ「このことは誰にも知らせていないのですがね」
勇者マリー「・・・あたしに、日本に帰れと?」
宮廷魔導師ユーグ「勇者殿 戦争の経験はありますか?」
勇者マリー「・・・いいえ」
宮廷魔導師ユーグ「でしょうね」
宮廷魔導師ユーグ「平和な国から来られた方には耐えられないと思いますよ」
宮廷魔導師ユーグ「妹君が戦争に参加すると言ったら 勇者殿、どうなさいます」
勇者マリー「もちろん止めますよ」
宮廷魔導師ユーグ「ならば・・・」
勇者マリー「けどあたし・・・ 約束しましたから」
勇者マリー「ミシェル様とリゼットさんの力になるって」
宮廷魔導師ユーグ「・・・そうですか」
宮廷魔導師ユーグ「ところで勇者殿 紅茶のおかわりはいかがです」
宮廷魔導師ユーグ「2杯目はミルクを入れるのがリュテス流ですよ」
勇者マリー「・・・じゃあ、いただきます」
宮廷魔導師ユーグ「・・・・・・」
勇者マリー(ユーグさん あたしの心配してくれたのかな)
勇者マリー(ユーグさんのこと誤解してたかも)
勇者マリー「・・・あれ?」
勇者マリー(なんだろう・・・ すごく・・・眠い・・・)
宮廷魔導師ユーグ(・・・この警戒心のなさ 確かに平和な国から来られたようだな)
宮廷魔導師ユーグ「さて・・・」
宮廷魔導師ユーグ(勇者の不在に気づかれる前に 例の場所に連れて行かねばな)
「ユーグさんの座学、怖いよぉ!!!!」とか思っていたら「あれっ……?(*゚∀゚)♡」→「貴様、やっぱり!!!!!??」と、見事に踊らされました。これはもう、ワイン庫を破壊しに行くしかないですね……(?)。
マリーさんの譲歩思考(?)が、こう……これまたリアルで好きです。
「この世界ではこういう考えが当たり前なのだから、こちらの考えをそう押し付けては〜」なんて思ってくれた……のに、うぉおん😢
ついに物語が動き、戦争へとですね!
そんな中での、真理さんの適応力と図太さが頼もしいですね、、、あれ、ガンディアと戦争ということは、舞花さんが。。今後のストーリーが気になって仕方ないです