第6話 風の行方(脚本)
〇闇の要塞
〇謁見の間
「攻城戦だというのに 全軍待機だなどと」
「陛下はなにを考えておられるんだ」
「今回は偵察だそうだからな」
「それに、巫女様がおられるし」
「・・・異世界人だというあの巫女 神の力を得たというのは本当だろうか」
「おまえも見ただろ?」
「あんな魔術 人間が使えるものじゃない」
「おれたちもようやく 豊かな暮らしができるんだ」
「・・・・・・」
〇荒野
皇帝トビアス「うおっ!?」
巫女マイカ「ここからは徒歩で行くぞ」
皇帝トビアス「急に放り投げるな!」
巫女マイカ「これ以上は重くて無理だ」
皇帝トビアス「ああ・・・ すまなかったな」
巫女マイカ「目的地は国境のメロヴィング要塞だったな」
皇帝トビアス「ああ 2日後には到着するだろう」
巫女マイカ「・・・そうか ならばちょうどよい」
巫女マイカ「こいつらを召喚するのに 魔力を少々使ったからな」
巫女マイカ「その頃には魔力も戻るだろう」
巫女マイカ「リュテスの魔導師どもの力 見せてもらおう」
皇帝トビアス「・・・・・・」
皇帝トビアス「・・・おまえは・・・ 本当にマイカか?」
巫女マイカ「昨夜から何度同じことを訊くのだ」
巫女マイカ「わたしはマイカだ」
巫女マイカ「女神エグスキの力を得たゆえ 見た目は少々変わったがな」
皇帝トビアス「女神エグスキ・・・」
皇帝トビアス「声を聴いただけでなく 力まで賜ったとは・・・」
皇帝トビアス「城の者たちも喜んでいた マイカこそ救国の巫女だとな」
巫女マイカ「・・・・・・」
皇帝トビアス「しかし・・・ 本当によいのか?」
皇帝トビアス「おまえの姉はおそらく リュテスに召喚されている」
巫女マイカ「・・・姉?」
皇帝トビアス「リュテスに進軍すれば 姉と戦うことになるかもしれぬぞ」
巫女マイカ「案ずることはない」
巫女マイカ「見ただろう? わたしの力を」
巫女マイカ「今のわたしならば 姉上など恐るるに足らず」
皇帝トビアス「い、いや・・・ そういうことでは・・・」
巫女マイカ「リュテスへの進軍は神の思し召しだ」
巫女マイカ「行くぞトビアス 帝国の民を救いたいのだろう?」
皇帝トビアス「あ、ああ・・・」
巫女マイカ「フフフ・・・」
〇空
〇教会内
第一王子ミシェル「・・・天におわす女神よ」
第一王子ミシェル「リュテスの民をお守りください・・・」
第一王子ミシェル「ガンディアの民に安らかな心を・・・」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
第一王子ミシェル「どうかマリー様を・・・」
第一王子ミシェル「勇者様をお守りくださるよう・・・」
宮廷魔導師リゼット「ミシェル・・・」
第一王子ミシェル「・・・リゼットか」
宮廷魔導師リゼット「帝国が動き出したようだな」
第一王子ミシェル「・・・ああ」
宮廷魔導師リゼット「クレール殿下はなんと?」
第一王子ミシェル「・・・僕に城の留守を預けると」
宮廷魔導師リゼット「それは・・・ 大役を任されたな」
第一王子ミシェル「・・・ああ 僕もそう思う」
宮廷魔導師リゼット「マリー様は出撃するのだろう?」
第一王子ミシェル「クレール様は・・・ マリー様を指揮官に据えると」
宮廷魔導師リゼット「・・・なるほど 確かに士気は上がるかもしれないな」
第一王子ミシェル「だけどマリー様は・・・ 平和な国のご出身だ」
第一王子ミシェル「殺さなければ殺される・・・ そんな現実に耐えられるだろうか」
宮廷魔導師リゼット「・・・そうだな」
宮廷魔導師リゼット「だがミシェル・・・ マリー様は勇者だ」
宮廷魔導師リゼット「出撃していただかないことには みんな納得しないだろう」
第一王子ミシェル「それは・・・わかってる」
第一王子ミシェル「僕たちは城での待機を命じられた 無事を祈って待つしかない」
第一王子ミシェル「だけど、せめて・・・ わたしにできることをしようと思うんだ」
第一王子ミシェル「だからリゼット 手を貸してくれないか?」
宮廷魔導師リゼット「ああ、もちろん!」
〇城の廊下
第二王子クレール(夜明けには出撃か・・・)
第二王子クレール(やるべきことは山積みだが ひとまず勇者殿のもとへ行かねば)
第二王子クレール(兄上・・・ 勇者殿は戦に不慣れだと言っていたな)
第二王子クレール(・・・十二分に配慮せねば)
第二王子クレール「そこの者 勇者殿はどちらに?」
侍女「書庫におられます 今はユーグ様がご一緒かと」
第二王子クレール「・・・そうか ありがとう」
侍女「失礼いたします」
第二王子クレール(ユーグが勇者殿と一緒にいる・・・?)
第二王子クレール(・・・なぜだろう 胸騒ぎがするな)
〇貴族の応接間
第一王子ミシェル「ここは青い糸を使って・・・」
宮廷魔導師リゼット「ミシェルの裁縫を見るのは久しぶりだが」
宮廷魔導師リゼット「相変わらず見事な針さばきだな」
第一王子ミシェル「そうかな・・・」
第一王子ミシェル「まあ、リゼットは不器用だからな」
宮廷魔導師リゼット「し・・・仕方ないだろう ちまちましたことは苦手なんだ」
第一王子ミシェル「以前、リゼットが裁縫したハンカチ・・・」
第一王子ミシェル「ユーグには雑巾呼ばわりされてたっけ」
宮廷魔導師リゼット「あの男の見る目がないだけだ」
第一王子ミシェル「あはは・・・」
第一王子ミシェル「・・・よし、できた」
宮廷魔導師リゼット「早いな」
第一王子ミシェル「これぐらい簡単なものならすぐできるさ」
宮廷魔導師リゼット「わたしなら半月はかかるぞ」
第一王子ミシェル「・・・そうだろうね」
宮廷魔導師リゼット「でも、本当によかったのか?」
宮廷魔導師リゼット「そのハンカチは叔母上の形見だろう?」
第一王子ミシェル「・・・いいんだ」
第一王子ミシェル「フィロメナの刺繍を綺麗だと マリー様は言ってくださった」
第一王子ミシェル「だからきっと 母上がマリー様を守ってくれるだろう」
宮廷魔導師リゼット「・・・ああ わたしもそう思う」
第一王子ミシェル「それにしても・・・ なぜ帝国が動き出したのだろう」
第一王子ミシェル「帝国は確かに召喚術に長けているが 兵糧には乏しいはずだろう?」
宮廷魔導師リゼット「帝国が周辺諸国を侵略できたのは 召喚術による短期決戦のおかげだ」
宮廷魔導師リゼット「山に囲まれたリュテスを攻めるには 長期戦を覚悟しなければならない」
宮廷魔導師リゼット「ましてや攻城戦ならなおさらだ」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
宮廷魔導師リゼット「なにか策があるに違いない」
宮廷魔導師リゼット「もしくは強力な戦士を召喚したか・・・」
宮廷魔導師リゼット「出撃許可が下りれば 分析ができるかもしれないのに」
第一王子ミシェル「・・・僕たちはここで待つしかない」
宮廷魔導師リゼット「ああ、わかってる」
宮廷魔導師リゼット「だからこそ わたしたちにできることをしよう」
宮廷魔導師リゼット「さあミシェル 双生神のメダルをこちらへ」
第一王子ミシェル「ああ 頼んだよ」
宮廷魔導師リゼット「魔力を込める 少し離れていてくれ」
宮廷魔導師リゼット「太陽と月の加護があらんことを・・・」
〇英国風の図書館
第二王子クレール「勇者殿もユーグも見当たらないな」
第二王子クレール「どこへ行ったんだ・・・?」
リュテス兵「ユーグ様でしたら 先ほど出て行かれましたよ」
第二王子クレール「・・・なんだと?」
第二王子クレール「勇者殿もご一緒だったか?」
リュテス兵「いいえ?」
第二王子クレール「では・・・ おかしな様子ではなかったか?」
リュテス兵「そういえば・・・ 大きな麻袋をお持ちでした」
第二王子クレール「・・・麻袋? ・・・まさかな」
第二王子クレール(いや、万が一ということもある)
第二王子クレール「ユーグはどこへ向かった?」
リュテス兵「書庫を出て左へ行かれました」
第二王子クレール「魔導研究所の方向だな」
第二王子クレール(急がなければ・・・)
〇研究所の中
宮廷魔導師ユーグ「ふふふ・・・」
宮廷魔導師ユーグ(もしものときのために 送還石を温存した甲斐があったな)
宮廷魔導師ユーグ(これで勇者を元の世界へ帰す)
宮廷魔導師ユーグ(もし殿下や陛下になにか聞かれたら)
宮廷魔導師ユーグ(怖じ気づいて逃げ出したのでしょう 勇者殿は平和な国のご出身ですから)
宮廷魔導師ユーグ(・・・とでも答えればよい)
宮廷魔導師ユーグ(これであの庶子も目障りなあの女も 以前のように大人しくなるはずだ)
勇者マリー「うーん・・・」
宮廷魔導師ユーグ(勇者が目覚める前に 魔法陣を発動させなければ)
宮廷魔導師ユーグ「我は扉を開く者なり・・・」
宮廷魔導師ユーグ「天におわす双生の女神よ この者をあるべき場所へ・・・」
第二王子クレール「ユーグ 勇者殿はどこに・・・」
第二王子クレール「なっ・・・ なにをしている!?」
宮廷魔導師ユーグ「で・・・殿下!?」
第二王子クレール「なにをしているのかと聞いているのだ!」
第二王子クレール「勇者殿、起きてくれ!」
宮廷魔導師ユーグ「あっ、殿下・・・! 今、勇者殿に触れたら・・・」
勇者マリー「ん・・・んん・・・?」
勇者マリー「あれ、あたし・・・?」
宮廷魔導師ユーグ「クレール殿下! 勇者殿から離れてください!」
〇白
第二王子クレール「うわっ! なんだ・・・!?」
勇者マリー「この光・・・! あのときと同じ──」
〇渋谷のスクランブル交差点
「あのコスプレの2人組 いきなり出てこなかった?」
「えー? 気のせいじゃない?」
第二王子クレール「ここはどこだ・・・?」
勇者マリー「・・・!」
第二王子クレール「高い建物ばかりだ・・・ それに、ずいぶん人が多い」
勇者マリー「・・・嘘でしょ・・・!?」
第二王子クレール「ここは本当にリュテスなのか?」
勇者マリー「日本に・・・ 戻ってきちゃった・・・」
そういう目に遭うのはミシェル様かと思いきや……クレール様??! 殿下降臨……!
いろいろと錯綜していて、おぉ……どうなるやらでワクワクします✨
戦闘直前、緊張感が走る中でのまさかの展開に驚きです!真理さんは元の世界に戻るも、クレール王子と一緒!?次話の展開が気になって仕方ないです!