凛とする黒瀬さん

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一日目「意見」(脚本)

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〇教室
  キーンコーンカーンコーン...
白山 文也「ふわぁ~あ~・・・・・・、ねっみ・・・・・・」
  俺は白山 文也(しらやま ふみや)
  4月に東雲高等学校の情報学部に入学した
  1年生だ。
  GWを過ぎた今、1年生でもいくつかの
  グループができあがっており、昼休みが
  始まってグループで集まり始めていた。
白山 文也「アイツら学食だろうな・・・・・・。 早いとこ向かうかー」
東田先生「白山君、先ほど言ってた件、 忘れてないだろうね?」
  学食へ向かおうと教室を出ようとした
  ところを担任の東田先生に呼び止められた。
白山 文也「えーと・・・・・・何でしたっけ?」
東田先生「全く・・・・・・、寝てたのかも知れないが 文化委員の仕事があるだろう? 君も早く文化教室に向かいなさい」
白山 文也「ああそうだった!はい! 行ってきます!」
  俺は別クラスの友人に『ルート』を開いて
  文化委員の仕事に行くメッセージを送る。
  早く片付けようと文化委員室へ向かった。

〇生徒会室
白山 文也「お待たせー!」
黒瀬 凛「・・・・・・」
白山 文也「うぇっ!?く、黒瀬さん・・・・・・?」
  なるべく飛ばしてやってきた文化委員室で
  待っていたのは同じ情報学部1年の
  黒瀬 凛(くろせ りん)だった。
  自分が文化委員であることは4月に
  決まったことだが、もう一人が黒瀬さんで
  あることは全く認識していなかった。
  同じ中学校出身で彼女の成績を知っている俺からすれば正直なところ、この学校は
  場違いである。
白山 文也「えーと、担当の先生は・・・・・・?」
黒瀬 凛「・・・・・・まだ来てない」
  彼女とコミュニケーションを取ったことは
  皆無だ。
  言葉少なに返す彼女に動揺を隠すため、
  俺は空いている椅子に座った。
  ・・・・・・外から他の学生の声が
  聞こえるだけで教室内の沈黙がきつい。
  俺から口を開くことにしよう。
白山 文也「黒瀬さんは高校上がってからどう? 同じ中学の人って俺ぐらいしか いないからさ」
  この地域には通える高校だけで4つある。
  ここ東雲高等学校は学部は多いものの、
  他の学校と比べるとレベルは低い。
  この学校に来るのは大体それぞれの
  学部分野を学びたい学生か、
  言ってしまえば学が足りない学生である。
黒瀬 凛「特にない」
白山 文也「え・・・・・・、入学した時、クラスの人たちと 連絡先交換してたんじゃないの?」
黒瀬 凛「したよ。でもやり取りしてない」
白山 文也「えーと・・・・・・、何で?」
  俺は言った後で気づいたがあまり考えずに
  発言してしまった。地雷でも踏まなければ
  いいのだが。
黒瀬 凛「来るメッセージが陰気なメッセージばかり だもの。「先生ウザイ」とか 「あの子調子乗ってない?」とか」
白山 文也「その子たちなりのコミュニケーション なんじゃないかなぁ?」
  聞いたものを前向きに考えて
  俺が意見する。
  だがそれを聞いた彼女の表情は呆れた表情
  そのものだった。
黒瀬 凛「白山君は呑気なんだね、少し羨ましい」
白山 文也「え・・・・・・?」
黒瀬 凛「私は他人を卑下したり、 馬鹿にしたりするの嫌いなの。 その同調を求められるのも嫌」
黒瀬 凛「そんな話ばかりメッセージ通知で 流れてくるから『ごめん無理』って 送ってそれっきり」
白山 文也「で、でもさ!付き合いみたいなところは あると思うよ。その子たちも悪気があって そういうこと送ってきてないと思うし・・・」
白山 文也「それに、あまりにストレートに 言われても言われた側も傷付くと 思うんだ」
  自分で言ってても彼女の視線が痛い。
黒瀬 凛「・・・・・・嫌なものを嫌と言って何が悪いの。 例え付き合いであっても言いたいことは 言うべきだと思う」
黒瀬 凛「嘘をついて付き合っても相手のためにも、 自分のためにもならないもの」
  それを聞いて普段の教室で彼女は
  一人でいることが多いのを思い出した。
  他の人と喋っているところは
  あまり見たことがない。
  返す言葉に困っているところに
  この教室に走ってくる音と
  何かが転がる音が廊下から聞こえた。
北畑先生「おう!遅くなってすまんな! 2人揃ってるな!よしよし!エライぞ!」
白山 文也「うぉっ!?びっくりした・・・・・・」
  突如教室のドアが開いて勢いよく
  入ってきたのは体育の北畑先生だった。
  廊下に台車が止まっている。
黒瀬 凛「遅いですよ、北畑先生」

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