凛とする黒瀬さん

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二日目「見方」(脚本)

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〇応接スペース
白山 文也「うーむ・・・・・・」
  俺は悩んでいた。黒瀬さんと連絡先を
  交換したものの、あれから全くやりとりは
  していない。
  今日はいつもお世話になっている
  カードショップに来ており、相方が
  来るのをカードを触りながら待っていた。
佐武 良明「よう!ふみちゃん待ったか?」
白山 文也「おう、たけちゃん。来たか・・・・・・」
  親友の佐武 良明(さたけ よしあき)が
  ショップに来て、俺が待っている
  プレイテーブルにやってきた。
  佐武は俺より圧倒的に頭が良く、
  高校もこの辺では一番レベルの高い
  京橋高校に通っている。
佐武 良明「どうしたふみちゃん? そんな顔するなんて珍しいな。 調子でも悪いのか?」
白山 文也「いや、そういうわけじゃないんだ。 こっちの学校の問題」
  何となく誤魔化しつつ、持っている
  マジカルデュエル、通称『MD』の
  デッキをシャッフルする。
佐武 良明「ふみちゃんの学校・・・・・・、 あれか、女子絡みか?」
白山 文也「・・・・・・お前鋭いなー」
  佐武が同じようにMDのデッキの準備を
  しながら悩んでる俺の姿を見て出した
  解答は一発で正解だった。
佐武 良明「マジかよ!いやーとうとうふみちゃんにも 彼女が出来たか!てことは俺との MD付き合いも今日で終わりかー・・・・・・」
白山 文也「違う違う。同じ中学だから分かると 思うけどさ、黒瀬さん、って分かるだろ?」
佐武 良明「あー、めっちゃ成績優秀だったあの子ね。 そういやふみちゃんと同じ学校 行ったんだっけ。その子がどうした?」
  そう言いながらお互いにシャッフルした
  デッキを交換し、いくつかの束に分け、
  それを組みなおす。
白山 文也「同じ文化委員になってさ、連絡先、 交換したんだ。あ、サイコロの出目が 大きい方が先手な」
  そう言いながら手持ちのポーチから
  サイコロを2つ取り出して振る。
  出目の合計は「6」だった。
佐武 良明「へぇ、あの大人しそうな子が ふみちゃんと、ねぇ・・・・・・。 何かやり取りしてるのかよ? あ、先手貰うわ」
  佐武のサイコロの出目の合計が「8」で
  先手となった。お互いにデッキから
  最初の手札を引いて確認し、ゲームを
  開始した。
白山 文也「まだ特にやり取りしてないから 困ってんだよ。別に文化委員の仕事だけ ならクラス内で納まる話だろ?」
  お互いの手番でカードを盤面に出しながら
  雑談の続きを話していく。
  俺はあの後、冷静に考えたら学校内で
  顔を合わせるなら連絡先など交換する
  必要などないはず、と気付いたのだ。
  それなのに相手から連絡先の交換を
  求めてきたのには疑問が残る。
  特に俺が何かしたわけでもないのだが。
佐武 良明「まあ無理してやり取りする相手でも ないだろ?で、あれば相手と会話できる キッカケを待つのが吉ってもんさ」
  佐武の言う通りだ。明日は文化委員の
  活動日でもある。その時にまた話をする
  機会があるからそこで話をすればいい。
白山 文也「そうだな、たけちゃん。 じゃあ戦闘前に『ネコチャリ』で」
佐武 良明「おう、そうだよふみちゃん。 んじゃそのカードは文字通り『否定』で」
  調子よく切り札を切ったものの、見事に
  対処されてしまい、俺はこのゲームを
  落とした。
佐武 良明「言ったろ?キッカケを待つのが吉、ってさ」

〇生徒会室
  次の日・・・・・・
白山 文也「よっしゃ!セーフ!」
黒瀬 凛「・・・・・・」
白山 文也「うぇっ!?黒瀬さん早っ!」
  今日の文化委員の活動は放課後で
  午後の授業が終わって、飲み物を
  買ってから文化委員室に来ると
  既に黒瀬さんが待っていた。
白山 文也「せ、先生はもう、来てたり・・・・・・した?」
  授業が終わってから少し遅れてきた
  自分に罪悪感を感じながら最悪の場合を
  想定して聞いてみる。
黒瀬 凛「・・・・・・まだ来てない。さっきの時間、 体育やってるクラスあるから北畑先生は 遅れてくるよ」
白山 文也「そうか!ならセーフだな!」
黒瀬 凛「・・・・・・ちょっとごめん。席外すね」
白山 文也「お?おう・・・・・・」
  どうやらスマホに通話の着信があり、
  黒瀬さんは文化委員室を出る。
  廊下で電話しているようだ
白山 文也(戻ってきたらこの前の意図でも 聞いてみるか・・・・・・? 何から振るべきか・・・・・・)
黒瀬 凛「・・・・・・ごめん、白山君。急用できたから 今日は先に帰らせてもらうね」
白山 文也「うぇっ!?マジかよ。 急用なら仕方ない。北畑先生には 俺から言っとくよ」
黒瀬 凛「ありがとう、ごめんね」
白山 文也「・・・・・・」
白山 文也(あああああああ俺のバカ! 何せっかくの話す機会逃がしてんだよ! ちょっとは呼び止めるとかあるだろ!!)
白山 文也「あー何なんだよ俺・・・・・・。 突拍子もなかったとはいえ少しは 踏み込めよ・・・・・・。ちくしょー」
北畑先生「そうだよなー。勇気を持って 踏み出さなきゃいけない時って 若い時にもあるもんなー」
白山 文也「そうそう、少しの勇気が・・・・・・、 って北畑先生!?いつからいたんですか?」
北畑先生「んー?今来たばっかりだが? あれ、黒瀬がいないな?どうした? フラれたか?」
白山 文也「黒瀬さんは急用で帰りましたよ。 で、今日の活動は何ですか?」
北畑先生「おーすまんすまん!今日の活動は 掲示用のポスターの分配だ! 貼るのは明日の文化委員の仕事だ」
北畑先生「各学科棟の廊下と階に2枚ずつ貼るから 持ってきてるポスターを分けておいて。 んじゃ私は陸上部の部活見てくるわ!」
白山 文也「あ、北畑先生!?」
  台車に積まれたポスターが文化委員室の
  前に残され、北畑先生は足早に部活が
  行われているグラウンドへ向かっていった
白山 文也「しょうがない・・・・・・、一人でやるか」
  とりあえず文化委員室の机の上に
  それぞれのポスターを置いてみる。
  5種類の掲示ポスターが並んだ。
白山 文也(結構枚数あるなこれ・・・・・・)
  1種類ずつ取って5枚の束にし、それを
  作る作業を繰り返す。一人寂しく
  長机を周回する作業は虚しい。
上杉 恵美「あ、あのー・・・・・・」
白山 文也「うわっ!?」
上杉 恵美「あっ!ご、ごめんなさい・・・・・・! 驚かすつもりはなくて・・・・・・」
白山 文也「い、いやこっちが勝手に驚いただけさ。 えーと、どうしたの?」
  男子一人シュールに長机をぐるぐる
  している様子を見られていたら、と
  考えると恥ずかしくてたまらない。
  何とか平静を装う。
上杉 恵美「ここに黒瀬さんがいる、って話を聞いて 来たんですけど・・・・・・いませんか?」
白山 文也「あー・・・・・・、黒瀬さん今日は急用で もう帰っちゃったんだ。 急ぎの要件なら伝えられるけど」
上杉 恵美「あ、いえ!以前お借りしていた本を 黒瀬さんにお返ししたくて。 えーと・・・・・・」
白山 文也「あ、俺は情報学部1年の白山。 君は?情報学部じゃないよね?」
上杉 恵美「家庭学部1年の上杉です。 それで白山君は黒瀬さんとは仲が 良いんですか?」
白山 文也「あー・・・・・・えっとぉ・・・・・・、 良い方、なのかな?連絡先知ってるし」
上杉 恵美「凄いです!白山君から連絡先交換 求めたんですか!?」
白山 文也「い、いや黒瀬さんの方から・・・・・・」
上杉 恵美「黒瀬さんの方から・・・・・・。 なるほど、ふふっ・・・・・・」
白山 文也「えーと・・・・・・、 で、上杉さんどうするの? 本返しにきたこと、メッセージで伝えて おこうか?」
上杉 恵美「いいんですか? ではお願いします」
白山 文也(えーと確か『黒セリ』だったよな・・・・・・)
  俺はスマホを取り出して『ルート』の
  連絡先から黒瀬さんのアカウント名を
  探し、メッセージ画面を開く

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