冬の日のお出かけ

陽菜

愛斗編(脚本)

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陽菜

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〇渋谷駅前
  昼前、私は愛斗とともに駅前までやってきた。
高雪 愛斗「涼恵さん、どこ行くー?」
森岡 涼恵「うーん・・・どこでもいいよ」
高雪 愛斗「じゃあ、映画見に行こうよ!」
  愛斗は私の手を握り、映画館に向かった。
  ・・・愛斗の耳が赤いのは気のせいだろう。

〇映画館の入場口
  映画館の前まで来て、今上映されている映画の種類を見る。
森岡 涼恵「恋愛ものが多いな・・・」
高雪 愛斗「そういう映画、嫌い?」
森岡 涼恵「いや、私は大丈夫だけど・・・」
森岡 涼恵「お前、恋愛系好きなのか?」
高雪 愛斗「うーん、ビミョー・・・」
森岡 涼恵「だったら、別のところ行った方が・・・」
高雪 愛斗「でも、興味ある映画、あるんでしょ?」
高雪 愛斗「それ、見ようよ」
  確かに、興味のある映画はあった。
  でも、つき合わせていいのかと考えてしまう。
高雪 愛斗「ほら、行くよ」
  しかし、愛斗はそのまま映画館に入っていった。
森岡 涼恵「ちょっ、待ってよ!」
  慌てて私も後ろをついていく。
高雪 愛斗「ほら、これでよかったでしょ?」
  彼は既にチケットを買っていたらしく、渡してきた。
  見ると、私が見たかった映画のチケットだった。
森岡 涼恵「・・・よく分かったな」
高雪 愛斗「だてに幼馴染じゃないよ」
高雪 愛斗「ほら、入ろう?」
森岡 涼恵「うん」
  せっかく買ってもらったのだ、楽しむことにしよう。

〇映画館の座席
  上映されるまで、私は愛斗と話していた。
森岡 涼恵「ありがとう、本当に見てみたかったんだ」
高雪 愛斗「これくらいいいよ、いつもお世話になってるし」
高雪 愛斗「それに、涼恵さんと一緒に見るなら楽しいだろうし」
森岡 涼恵「お前な・・・佑夜さんとかいるだろ」
高雪 愛斗「好きな子と一緒っていうのがいいんだよ」
森岡 涼恵「まったく・・・本当に好きな人に言わないとダメだぞ?」
高雪 愛斗「・・・・・・」
森岡 涼恵「あ、始まるな」
  映画が始まり、そちらに集中する。
  ・・・愛斗がこっちを見ていたのはどうしてだろう?

〇映画館の入場口
森岡 涼恵「楽しかった!」
高雪 愛斗「それはよかった」
  映画館から出て、私は伸びをする。
森岡 涼恵「本当にありがと、愛斗」
高雪 愛斗「涼恵さんが楽しんでくれているならよかった」
森岡 涼恵「この後、どこ行く?」
高雪 愛斗「そうだね・・・」
高雪 愛斗「だったら、少し付き合ってよ」
  そう言われ、私は疑問符を浮かべながら愛斗についていった。

〇川沿いの公園
  歩いていると、すっかり夜になっていた。
森岡 涼恵「ここ・・・」
高雪 愛斗「懐かしいでしょ?」
森岡 涼恵「・・・うん」
  ここはおじいちゃんが生きていた時によく連れてきてもらっていた場所だ。
  ・・・亡くなってから、一度も来ることはなかったけど。
高雪 愛斗「よく遊んでたよね」
森岡 涼恵「そうだね、記也と、兄さんと・・・」
高雪 愛斗「そうそう」
  思い出話をしていると、不意に愛斗が真面目な顔になった。
高雪 愛斗「涼恵さん」
森岡 涼恵「どうした?」
高雪 愛斗「その、付き合わない?」
森岡 涼恵「・・・?」
森岡 涼恵「そりゃ、時間あればいつでもつきあうぞ」
高雪 愛斗「そうじゃなくて・・・」
高雪 愛斗「・・・恋人にならない?」
森岡 涼恵「・・・え?」
高雪 愛斗「その・・・昔からずっと好きだったんだ」
高雪 愛斗「・・・女の子として」
森岡 涼恵「女の子・・・」
高雪 愛斗「もちろん、涼恵さんがそんな目で見てないならボクだって身を引くよ」
高雪 愛斗「好きな女の子には幸せになってほしいからね」
  その告白に、私は考える。
  そして、答えが出た。
森岡 涼恵「・・・うん、いいよ」
高雪 愛斗「・・・・・・」
高雪 愛斗「・・・ほんとに?無理してない?」
森岡 涼恵「無理してないって」
森岡 涼恵「・・・私も、愛斗が好きだし」
高雪 愛斗「そう・・・」
高雪 愛斗「それなら、よかった」
  思い出の場所で、幼馴染と恋人になる。
  人生何があるか分からないなぁ、なんて思いながら、愛斗と手を握った。

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