鬼面人の唐紙

キリ

-後編-(脚本)

鬼面人の唐紙

キリ

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〇村の広場
唐紙(あ、お侍様だ...)
唐紙(何してるんだろ...っしょっと)
唐紙「おーい!お侍様~!」
環「ん?」
環「この声は...」
環「どこから...」
唐紙「あれ、気づいてない?」
唐紙「ここだよっ!うーえ!」

〇木の上
  環は少し空を見上げると、
  木の枝に腰かけるあの子がいて
  大きく手を振っていた
  風がなびいて、ちょっとだけ見えた
  あの子口元は、白い歯が見えるほど
  微笑んでいた
環「っ!」
環「そんなところに...」
環「気を付けろ?」
唐紙「平気、平気♪」
唐紙「お侍様は、そんなとこでたそがれて 何してるんです?」
環「護衛中の身だ」
唐紙「ごえーちゅー?」
環「...そういえばお主、名は何と言う?」
唐紙「あ、オイラ唐紙っていうんだ」
唐紙「お侍様は?」
環「私は環と申す」
唐紙「環殿かあ~よろしくな」
環「ああ」
唐紙「うおっ!」
唐紙「おお?」
  唐紙の頬に、微かに触れる感覚がした
  唐紙が頬に手をあてると、桜の花びらが
  手のひらに乗っていた
唐紙「にしても、夕べの桜は綺麗だね~♪」
唐紙「オイラ、誰かと一緒に花見がしたいな~」
環「今朝も桜を観ていたではないか」
唐紙「そうなんだけど、でも...」
唐紙「誰とも一緒じゃなかったからさ...」
環「・・・」
環「・・・そうか」

〇黒
  私は、こやつを疑(うたぐ)っていた
  見たことがない身なりを気にして
  唐紙殿のことを、しかと見ていなかった
  こんなにも純粋無垢な相手を
  鬼かもしれないだなんて...
  私もまだまだ未熟だな

〇木の上
環「唐紙殿、よければ明日にでも 私と花見をしないか?」
唐紙「え」
唐紙「・・・・・・いいの?」
環「ああ」
唐紙「やったあ! わーい!わあ~い♪」
唐紙「じゃあ明日!今朝の桜の木で 会いましょうぞ♪環殿♪」
環「ああ。楽しみにしてる」
  花見が見たいと願う唐紙と約束を交わした

〇木の上
  日が沈みきった時刻が、
  環の護衛終了時刻を示していた
環(そろそろいい頃合いだろ)
  帰りの道は、環が灯すちょうちんの明かり
  だけで他は真っ暗闇だった
環(今夜は月も見えないな、早く帰ろう)
「ヨオ 小僧」
環「っ! ! !」
鬼「オマエシカ、コノ道 歩イテイナクテナ」
鬼「何処ニイケバ、小僧ノヨウニ 人間ハ 居ルカ~?」
環「教えると思うか」
環「フッ!」
環「はっ...」
  瞬時に刀を振りかざすも、
  二本の指先で刀を掴まれた
鬼「ヒゃははハハはハハはハっっ! ! !」
鬼「人間ノ道具デ、鬼ヲ倒セルトデモ?」
鬼「アアアッ!」
環「クッッッ! ! !」
  鬼の長く尖った爪が、環の腕に
  深く引っ掻き傷を負わせた
鬼「悪アガキヨ! ! !喰ッテヤラアアア! ! ! ! !」
環「こんのっ...」
  環が振るう刀は、鬼に当たらず
  鬼は交わす一方だった
環「うぐぅっ」
  片腕だけで刀を持つ環の襟元を掴み、
  鬼は、自身の口元に環の顔を近づけた
  すると、鬼の鼻に甘いかおりを感じた
鬼「オ前、女カ」
鬼「女ダナア! !コノ匂イハ 違エネエ!」
環「っ.......?」
鬼「女ハ鬼ノ好物ダ!喜ベ!鬼ニ喰ワレルコトヲナ!」
環「っ!そっ...んな...」
環「くぅっ! !」
  環は必死に、鬼の手を襟元から離そうと
  刀を振り落とすが、手首の軽い力で
  止められてしまう
環「くそっ...」
鬼「ハハハハハハハッッ」
「さっきっからうっせえなあ~」
「よく笑いやがるし」
鬼「ナンダ テメエハ」
「悪ぃけど、ここはオイラの縄張りだ、散れ」
鬼「何ガ 縄張リダ、人間ノ住ミカヲ 見逃ス鬼ガ何処ニイル」
「はあ~...」
「お侍様、刀、借りるわ」
  襟元を掴まれたままの、
  環の腰に携えた刀を抜いた
鬼「ゥグオオオオオオッ!」
  一撃ダメージを与えると、鬼の指先に
  掴んでいた襟元から環を奪還した
環「なぜっ...?」
「待ってろ」
鬼「ううううっ...」
鬼「ナンダ...ナゼ、人間ノ刀ガ 刺サル...ううっ」
「それはさぁ...」
「てめえが交わせなかっただけだ」
鬼「オノレ......ぐばあぁっ...」
  鬼は血を吐き、切り傷からも出血していた
「あーあ、もったいねえ せっかくの生き血が」
「足りなくなるうちに」
「はあ」
  鬼を切りつけた者は、弱った鬼を丸飲みに
  して、口に付着した血を拭い
  環のいる方へ身体を横に反転させると
  環のところへ一歩ずつ歩み寄ってきたのだ
環(...ううっっ)
環(身体が...思ったより強ばっている)
環(こいつ...鬼をも喰らう...)
環(鬼...なの...か...)

〇黒
  環は恐怖と緊張から、
  意識を失ってしまった──
唐紙「・・・お侍様!お侍様!」
唐紙「はっ!怪我してらぁ!大丈夫かなぁ! ?」
唐紙「だけど......」
唐紙「環殿...」
唐紙「本当に、お侍様、なんだろうか...」
唐紙「っ...」

次のエピソード:-花見と唐紙-

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