冬の日のお出かけ

陽菜

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〇豪華なリビングダイニング
  これは、十二月に入ったある日の話。
高雪 愛斗「涼恵さーん!」
森岡 涼恵「なんだ?愛斗」
  こいつは私より三歳年上の愛斗(あいと)。
  幼馴染で、よく遊んでくれていた。
  ・・・腐れ縁、ともいうのかもしれない。
高雪 愛斗「どっか出掛けよーよー!」
森岡 涼恵「今この家にいるの、お前と私含めて八人だぞ・・・」
高雪 愛斗「みんな帰ってるもんねー」
  せめてみんなが帰ってきた時に言えよ・・・と思っていると、愛斗は手を握った。
高雪 愛斗「だから涼恵さんとデートしたいな♡」
森岡 涼恵「その気色悪いのやめろ」
森岡 涼恵「あと私達は恋人じゃない」
高雪 愛斗「えー?いいじゃん」
  そんな会話をしていると、玄関が開く音と「スズ姉ー!」という声が聞こえてきた。
森岡 記也「なぁなぁ、どっかで時間ないか!?」
  こいつは私の双子の弟の記也(しるや)だ。
  見て分かる通り、かなり人懐っこい性格である。
森岡 涼恵「どうした?急に」
高雪 愛斗「記也君、どうしたの?」
森岡 記也「遊び行かないかなーって思って!」
森岡 涼恵「まぁ、今冬休みだし、時間はあるけど・・・」
祈花 慎也「いいな、ボクも涼恵と遊びに行きたい」
森岡 記也「慎也、いつの間に!?」
森岡 涼恵「というより、みんな帰って来てるじゃん」
  本当にいつの間に帰ってきていたのだろうか?
祈花 佑夜「涼恵さん、夕食の材料買ってきたよ」
森岡 涼恵「あ、ありがとうございます」
  さて、ここで説明しておこう。
  私達はとある理由によりルームシェアをしている。
  まぁ、それはまた別のお話、ということになるのだが・・・。
森岡 涼恵「あ、コーンがある。コンポタ作ろ」
祈花 慎也「それ、佑夜の好物じゃん」
祈花 慎也「涼恵が作るやつ、おいしいもんな」
祈花 佑夜「う、うるさいよ、兄さん・・・」
森岡 涼恵「ふふっ、ちゃんとおいしいものを作りますよ」
  この二人は愛斗と同い年の双子で、慎也(しんや)が兄、佑夜(ゆうや)さんが弟だ。
  ・・・え?なんで慎也の方は呼び捨てなのかって?
  それも事情があるのだが・・・ここでは割愛させてもらう。
霜月 怜「今日は簡単なものにしようかって言ってたもんね」
秋原 蘭「コンポタは簡単なのか・・・?」
  この二人は兄弟で、怜(れい)さんがうちの兄と同い年、蘭(らん)が私達と同い年だ。
  名字が違うのは、かなーり複雑な事情があるのだが・・・分かりやすく言えば二人は異母兄弟なのだ。
森岡 恵漣「涼恵、兄さんも手伝いますよ」
森岡 涼恵「ありがとう、兄さん」
  彼は私達の実兄の恵漣(えれん)で、調理師免許を持っている。
  本当はまだいるのだが・・・今家にいるのは私含めてこの八人。
  そして、今日は来客もいる。
森岡 亜花梨「お姉ちゃーん!」
森岡 涼恵「やっほ、亜花梨ちゃん」
  この子は亜花梨(あかり)ちゃん。私達の末妹だ。
  幼い頃から両親が家にいなかったため、いつもは私がお世話になっている人に預かってもらっている。
  ・・・預かってもらっている、というよりは拾ってもらったと言った方が正しいのだが。
神龍 雪那「亜花梨、うれしいのは分かるけど落ち着いて」
  彼女は雪那(ゆきな)さん。亜花梨ちゃんを預かってくれている女医さんだ。
  ここだけの話、若いように見えるが、実はかなり年上の女性だ。
森岡 涼恵「大丈夫ですよ、雪那さん」
森岡 涼恵「亜花梨ちゃんも可愛いなぁ」
森岡 亜花梨「ちょ、ちょっと!あんまり髪を撫でたら・・・!」
  私が亜花梨ちゃんの髪を撫でていると、亜花梨ちゃんは慌てだした。
  なぜかというと・・・。
森岡 亜花梨「・・・・・・・・・・・・」
森岡 涼恵「あ、ごめん・・・」
  ・・・記也と同じくもともとくせ毛で、いつもは整えているらしいからだ。
森岡 亜花梨「ストレートヘアーの恵漣お兄ちゃんとお姉ちゃんがうらやましい!」
森岡 涼恵「悪かったって」
神龍 雪那「まぁまぁ、亜花梨。涼恵も悪気はなかったんだから」
森岡 涼恵「髪の毛整えてあげるから許して」
森岡 亜花梨「わーい!」
森岡 涼恵(それでいいの・・・?)
  なんて思いつつ、可愛いので黙っておく。
  亜花梨ちゃんの髪を整え、私は兄さんと一緒に夕食を作り始めた。

〇豪華なリビングダイニング
森岡 恵漣「ご飯できましたよー」
森岡 涼恵「とりあえずハンバーグにしたー」
霜月 怜「二人の料理はおいしいから何でもいいよ」
祈花 佑夜「そうですね」
秋原 蘭「運ぶの手伝うぜ」
森岡 涼恵「ありがとう」
  蘭と佑夜さんと怜さんが運ぶのを手伝ってくれて、食卓に着く。
高雪 愛斗「涼恵さん、結局出かける?」
森岡 涼恵「うーん・・・」
森岡 涼恵「そうだね、たまにはいいかも」
  私がそう言うと、全員が一斉にこっちを見た。
森岡 涼恵「え、何々?どうしたの?」
高雪 愛斗「いや、まさか本当に遊んでくれるとは思ってなかったから・・・」
森岡 涼恵「私を何だと思ってるの・・・?」
森岡 記也「仕事優先の研究所長」
森岡 涼恵「あながち間違っていなかった・・・」
  こう見えて私は大学生ながら、祖父母の研究を引き継いで研究所の所長をしている。
  だからそんな印象を持たれていてもおかしくはない。
森岡 恵漣「休むことも大事ですよ、涼恵・・・」
森岡 亜花梨「そうだよ、お姉ちゃん!」
森岡 亜花梨「だから遊んで!」
森岡 涼恵「それが主な理由だよね? いいけどさ」
  でも、確かに最近はずっと休んでいなかった。
  ・・・「彼」との時間もなかなか取れていなかった。
森岡 涼恵(たまには、遊びに行きたいなぁ・・・)
  思い出すと、途端にその思いがあふれてくる。
神龍 雪那「明日は休んだら?」
神龍 雪那「たまには休むことも大事だからね」
森岡 記也「そうだぜ、スズ姉」
森岡 記也「「あの人」との時間も大事だからな!」
森岡 涼恵「絶対からかってるだけでしょ・・・」
森岡 涼恵「でも、そうだね。お言葉に甘えさせてもらおうかな」
  久しぶりの休みに内心ワクワクしながら、その日は過ごした。

〇本棚のある部屋
  その日の夜、私は本を読んでいた。
森岡 涼恵「へぇ・・・そんな研究が・・・」
  いつも研究のため、夜に本や論文を読むのが日課だ。
  さらに、机の上には研究所から持ってきた資料。
森岡 涼恵(こりゃ、仕事人間と言われても仕方ないわ・・・)
  不意に思い出して、ため息をつく。
  その時、ドアのノックと「涼恵、飲み物を持ってきましたよ」と兄の声が聞こえてきた。
森岡 涼恵「ありがと、兄さん」
森岡 涼恵「入っていいよ」
「では、失礼しますね」
森岡 恵漣「遅くまでお仕事、お疲れ様です」
森岡 涼恵「そっちこそお疲れ」
森岡 涼恵「いつも食堂の料理長をしているのは疲れるでしょ?」
森岡 恵漣「いえ、兄さんはいつもやっていたことですから」
森岡 恵漣「涼恵の方こそ疲れていませんか?」
森岡 涼恵「大丈夫だよ」
森岡 涼恵「本当に心配性だね、兄さんは」
森岡 恵漣「大事な妹ですからね」
森岡 恵漣「コーヒーを持ってきていてなんですけど、出かけるなら寝た方がいいですよ」
森岡 涼恵「まぁ、そうだけど・・・」
森岡 涼恵「・・・ここまではやらないと仕事に支障が出てくる・・・」
森岡 恵漣「お、お疲れ様です・・・」
森岡 涼恵「早めに寝るようにはするよ」
森岡 恵漣「えぇ、そうしてください」
森岡 恵漣「洗い物は明日持ってきてくれたらいいですからね」
  そう言って、兄さんは部屋から出た。
森岡 涼恵「・・・さて」
森岡 涼恵「明日のためにとっとと終わらせるか」
  次の日を楽しみにしながら、私は仕事を始めた。

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