第3話『英雄と奏ちゃん』(脚本)
〇遊園地
英雄と奏ちゃん
向井 奏「着いたのです〜」
真下 英雄「勘弁しろし」
チケット係「では大人1枚、こども1枚です」
向井 奏「ありがとうなのです」
チケット係「お父さんと2人で来たの?」
真下 英雄「え、あ、いや・・・」
向井 奏「そうなのです」
真下 英雄「・・・・・・」
向井 奏「『親子じゃない』なんて言ったら、今のご時世色々とややこしいのです」
真下 英雄「大人だねぇ」
向井 奏「でも奏たち、親子に見えるのですか?」
真下 英雄「まぁ、全然見えるんじゃない?」
真下 英雄「音ちゃんだと、結構ギリだけど」
向井 奏「なら今日1日、真下さんの事を『パパ』と呼びたいのです」
真下 英雄「えっ!?」
真下 英雄「まぁ、別にいいけど・・・」
向井 奏「あっ、奏アレに乗りたいのです」
向井 奏「行くのです、真下さん」
真下 英雄「・・・いや、呼ばないんかい」
奏のパパは、奏が生まれてすぐに死んでしまったのです
〇メリーゴーランド
なので、パパの事は全然覚えていないのです
〇暗い廊下
よく『寂しい?』と聞かれるのですけど
〇ジェットコースター
『パパが居る』という状態を経験した事がないので、何とも言えなかったのです
〇観覧車の乗り場
でも、もしパパが居たらこんな感じなのですね
〇観覧車のゴンドラ
向井 奏「奏、やっぱりパパが欲しいのです」
真下 英雄「・・・そっか」
向井 奏「だから今、パパ活中なのです」
真下 英雄「いや、それは大分意味が違うね」
向井 奏「真下さんのパパはどんな人なのですか?」
真下 英雄「俺の?」
真下 英雄「もう死んだ」
向井 奏「そうなのですね・・・」
向井 奏「では、どんな人だったのですか?」
真下 英雄「う〜ん、そうだな〜・・・」
真下 英雄「俺みたいな人、じゃないかな?」
向井 奏「なら、優しい人だったのですね」
真下 英雄「・・・・・・」
向井 奏「寂しいですか?」
真下 英雄「いや、全然」
真下 英雄「パパなんて、居なくても大丈夫だよ」
向井 奏「嫌なのです、奏はパパが欲しいのです!」
真下 英雄「そんなに欲しい?」
向井 奏「はい」
向井 奏「パパも欲しいですし、何より妹が欲しいのです」
真下 英雄「妹?」
向井 奏「お姉ちゃんにだけ妹が居るなんて、ズルいのです」
真下 英雄「そういうもんか・・・?」
向井 奏「そういえば、真下さんはご兄弟居るのですか?」
真下 英雄「ん?」
真下 英雄「・・・居ないよ」
向井 奏「そうなのですね、意外なのです」
真下 英雄「意外?」
向井 奏「なんとなく、真下さんにはお姉さんも妹さんも居そうなイメージだったのです」
真下 英雄「・・・そっか」
向井 奏「で、どうなのですか?」
向井 奏「真下さんは、奏のパパになってくれるのですか?」
真下 英雄「あ、え、そういう話だったの?」
向井 奏「ママと結婚するの、嫌なのですか?」
真下 英雄「何とも答えづらい質問を・・・」
向井 奏「もしかして奏のパパより、奏の旦那さんになりたいのですか?」
向井 奏「奏、困ってしまうのです」
真下 英雄「俺、何も言ってないよ?」
向井 奏「では、どう思っているのですか?」
真下 英雄「俺は奏ちゃんのパパにも、旦那さんにもなるつもりはありません」
向井 奏「何故なのですか?」
向井 奏「もしかして、奏たちの事嫌いなのですか?」
真下 英雄「そんな事ないよ」
向井 奏「じゃあ、何故なのですか?」
真下 英雄「『何故』って言われてもな・・・」
向井 奏「やっぱり、奏たちの事が嫌いなのですね」
向井 奏「もういいのです」
向井 奏「(ぷいっ)」
真下 英雄「・・・・・・」
真下 英雄「嫌いだったら、一緒に遊園地なんて来ないよ」
向井 奏「・・・・・・」
真下 英雄「奏ちゃんたちは1ミクロも悪くない」
真下 英雄「悪いのは、俺だから」
向井 奏「えっ!?」
真下 英雄「俺には向いてないんだよ、家族ってのが」
向井 奏「家族に向き不向きなどあるのですか?」
真下 英雄「あると思うよ」
真下 英雄「俺は父親役も向いてない、夫役も向いてない」
真下 英雄「兄貴役も弟役も息子役も、何一つ向いてないんだよ」
向井 奏「そんなの、やってみなければわからないのです」
真下 英雄「・・・かもしれないね」
真下 英雄「でもそうやって、無責任に父親役をやり始めるようなヤツが──」
真下 英雄「子供殴ったりするんだよ、きっと」
向井 奏「・・・大丈夫なのです」
真下 英雄「え?」
向井 奏「真下さんは、そんな人じゃないのです」
真下 英雄「・・・何でそう思うの?」
向井 奏「なんとなく、そう思うのです」
真下 英雄「・・・そっか」
真下 英雄「ありがとね」
向井 奏「何故真下さんがお礼を言うのですか?」
真下 英雄「奏ちゃんにそう言ってもらえたら『そうなのかもな』って思えたからさ」
向井 奏「お礼を言うのは、奏の方なのです」
〇遊園地
奏の夢、叶えてもらえたのです
初デートの相手は──
向井 奏「パパ・・・」
〇汚い一人部屋
大家 健「どうだ?」
真下 英雄「ふ~ん・・・」
真下 英雄「今回は随分スケジュールに余裕あるプロジェクトだな」
真下 英雄「何、働き方改革でも始めた?」
大家 健「仕事じゃねぇよ」
大家 健「アッチの話に決まってんだろ」
大家 健「な?」
真下 英雄「・・・アッチの話?」
大家 健「だからほら、この間言ってた・・・」
大家 健「9歳の娘が居る15歳の未亡人、って人」
真下 英雄「いや、混ざってる混ざってる」
大家 健「頼むぜ?」
大家 健「お前の婚活のために色々調整してやって、コレなんだから」
大家 健「な?」
真下 英雄「だから、俺は別に婚活なんて・・・」
大家 健「案ずるな」
大家 健「英雄が思っている以上に、英雄は好かれてるよ」
大家 健「多分」
大家 健「な?」
真下 英雄「・・・どうだか」
真下 英雄「ん? 今日は早いな・・・」
〇整頓された部屋
真下 英雄「音ちゃん、いらっしゃ・・・」
真下 英雄「・・・今日は何科目勉強するつもり?」
向井 音「しばらくの間、お世話になります」
真下 英雄「・・・はい?」
向井 音「家出してきた」
真下 英雄「家出!?」
楽しみにしておりました☺️
キャラクター同士の掛け合いが可愛いですね🌟
次回も期待しております🙌