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マヤマ山本

第2話『英雄と音ちゃん』(脚本)

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〇白いアパート
  英雄と音ちゃん

〇汚い一人部屋
  カタカタカタカタカタ・・・
真下 英雄「あ~、甘いもん食べたい・・・」

〇散らかった部屋
真下 英雄「どう、勉強捗ってる?」
向井 音「おかげさまで」
向井 音「家だと奏がうるさくて」
真下 英雄「受験生には厳しい環境だよね」
  ガサゴソガサゴソ
真下 英雄「チョコいる?」
向井 音「いる」
  モグモグモグモグ・・・
向井 音「ねぇ、真下さんは数学得意?」
向井 音「この問題が全っ然わかんないんだけど」
真下 英雄「どれどれ・・・」
真下 英雄「これ、答えは見た?」
向井 音「見たけど、何でいきなりこうなったのかがわかんなくて」
真下 英雄「そっか」
真下 英雄「これは、この公式をこうアレンジして、ココに代入してるんだな」
向井 音「おぉ~」
向井 音「じゃあさじゃあさ、こっちは?」
真下 英雄「ん~・・・」
真下 英雄「あ、ココで二乗し忘れてるから答えが変なんじゃない?」
向井 音「なるほど・・・」
向井 音「真下さん、教えるの上手いね」
真下 英雄「・・・昔取った杵柄、かな?」
向井 音「ふ~ん・・・昔から頭良かったんだ~」
真下 英雄「何、俺の事バカだと思ってた?」
向井 音「あ・・・申し訳」
真下 英雄「いや、思ってたんかい・・・」
「おい俺だ、出てこいよ!」
真下 英雄「あれ、音ちゃん家の前に誰か居る・・・?」
向井 音「あの声・・・」
真下 英雄「音ちゃん・・・?」

〇アパートの玄関前
角野 拓哉「おい音、居るんだろ!?」
向井 音「ちょっと拓哉、近所迷惑でしょ!」
角野 拓哉「え、音? 何でソッチから・・・?」
向井 音「・・・何でだっていいでしょ?」
向井 音「拓哉こそ、こんな時間に何の用なの?」
角野 拓哉「いや、俺はただ・・・」
真下 英雄「音ちゃん、大丈夫?」
角野 拓哉「・・・そうか、お前か」
向井 音「? 拓哉?」
角野 拓哉「よりによって、こんなオッサンと二股かけられてたとはな」
真下 英雄「? 二股?」
角野 拓哉「人の女に手ぇ出しやがって、このロリコン野郎!」
真下 英雄「勘弁しろし・・・」

〇散らかった部屋
向井 音「何か、申し訳」
真下 英雄「本当だよ」
向井 音「まさかあんなに嫉妬深かったとは・・・」
真下 英雄「でも何でまた、二股なんて誤解を?」
向井 音「あ~・・・『二股』自体は事実だから」
真下 英雄「あぁ、なるほどね」
真下 英雄「・・・って、えぇ!?」
向井 音「あ、お母さんと奏には内緒だからね」
真下 英雄「え、二股かけてんの? 何で?」
向井 音「いや『何で?』って言われても・・・」
向井 音「拓哉とは1年の頃から付き合ってて、高校も『一緒の高校に行こう』って言われてて」
向井 音「でも、拓哉バカでさ」
向井 音「ウチもそこまでレベル下げたくないし、『拓哉がウチに合わせてよ』って言っても聞く耳持たないし」
真下 英雄「・・・何でだろう、目に浮かぶ」
向井 音「で、ちょっと冷めたところに・・・」
向井 音「志望校が同じな別の男子が現れて、意気投合」
真下 英雄「で、二股?」
向井 音「・・・引いた?」
真下 英雄「別にいいんじゃない?」
向井 音「えっ!?」
真下 英雄「まぁ、その拓哉君っていう彼の立場からしたらたまったもんじゃないだろうけど・・・」
真下 英雄「俺が直接被害に遭ってる訳でもないし」
向井 音「今、ぶっ飛ばされたじゃん」
真下 英雄「そこは大いに反省してもらうとして」
向井 音「申し訳」
真下 英雄「単純に、凄いなと思うよ」
向井 音「・・・ディスってる?」
真下 英雄「そんなつもりはないけど」
真下 英雄「でも二股って事は、好きなんでしょ?」
真下 英雄「拓哉君の事も、もう一人の彼の事も」
向井 音「うん・・・まぁ」
真下 英雄「『誰かを好きになる』って事は『その人の良い所を見つけられる』って事でしょ?」
真下 英雄「1人ですら難しいのに、2人同時なんて凄いと思うよ」
向井 音「そう・・・かな?」
真下 英雄「俺は『人の悪い所』ばっか見つけちゃうからさ、正直うらやましいよ」
真下 英雄「だから、胸張りな」
真下 英雄「『人を好きになれる』っていうのは、立派な才能なんだから」
向井 音「・・・どうだか」
真下 英雄「さて、俺もそろそろ仕事に戻るか」
真下 英雄「それじゃ、ほどほどにね」
向井 音「それは、勉強を?」
真下 英雄「他に何かある?」
向井 音「・・・・・・」

〇汚い一人部屋
真下 英雄「システムエラー、ねぇ・・・」
真下 英雄「って、え? 俺が行くの? 今から?」
大家 健「だって今の時間、電車ないだろ?」
真下 英雄「そりゃあ、俺は車持ってるけど・・・」
大家 健「何より、英雄には『他人が書いたコードのミスを見つける才能』がある」
大家 健「こういう時にはうってつけだと思う訳だ」
大家 健「な?」
真下 英雄「勘弁しろし・・・」

〇散らかった部屋
真下 英雄「ごめん音ちゃん、俺急に出る事になって・・・」
向井 音「すー、すー」
真下 英雄「勘弁しろし・・・」

〇散らかった部屋
向井 音「ん・・・」
向井 音「ん?」
向井 音「やばっ、寝てた・・・ん?」
向井 音「いつの間に・・・ん?」
  急な出張が入ったので、戸締りよろしく
  
  真下
向井 音「ふ~ん・・・」

〇整頓された部屋
真下 英雄「この鍵は?」
向井 奏「奏たちの家の合鍵なのです」
真下 英雄「えっと・・・何で?」
向井 小百合「真下さんの家の合鍵を戴いたので」
真下 英雄「いや、そもそもあげた訳じゃ・・・」
向井 小百合「でもほら、一人暮らしだと何かと不便なこともあると思うので」
真下 英雄「それは、まぁ・・・」
向井 小百合「私たちも、何かあった時に頼れる男の方が隣に居ると安心だったりするので」
真下 英雄「・・・・・・」
向井 奏「ダメなのですか?」
真下 英雄「・・・わかりましたよ」
向井 小百合「良かった~」
向井 小百合「では、私は仕事があるので」
向井 小百合「奏、行ってくるね」
向井 奏「行ってらっしゃいなのです」
真下 英雄「奏ちゃんも、学校遅刻するよ?」
向井 奏「今日は開校記念日でお休みなのです」
真下 英雄「あ、そうなんだ」
向井 奏「そうなのです」
「・・・・・・」
真下 英雄「・・・え、ウチに居る気?」
向井 奏「そんな事はないのです」
真下 英雄「ハハ・・・だよね」
向井 奏「奏、遊園地に行きたいのです」
真下 英雄「・・・はい?」

次のエピソード:第3話『英雄と奏ちゃん』

コメント

  • 音ちゃんのリアルな生活が伝わってくると同時に、主人公との相互理解が深まった感じですね!合鍵交換、何だか家ぐるみで緊密な関係になった感じで……

  • マイペースな音ちゃんが個人的にお気に入りです☺️続きを楽しみにしております🌟

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