空白のひとコマ

遠藤彰一

エピソード4(脚本)

空白のひとコマ

遠藤彰一

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  午前3時5分──

〇家の廊下
  木嶋の死を受け、清香は洗面所に篭っていた──。
小田正人「清香さん。大丈夫ですか?」
「・・・・・・」

〇漫画家の仕事部屋
宮本義和「何ですかこのお金は」
石黒理「先日ここに寄った時、財布を会社に忘れてしまってね」
石黒理「それで、先生にタクシー代として1万円借りたんだよ」
宮本義和「だからなんだって言うんですか。 そんなことより、早く救急車を」
石黒理「まあまあ。聞いてよ。 救急車はすぐに呼ぶから」
宮本義和「でも」
石黒理「ただね。 このお金借りたんじゃなくて、もらったのかもしれないと思ってね」
宮本義和「くれるわけないじゃないですか」
石黒理「いや、しかし、記憶が曖昧でね。 先生、気前がいいだろう」
石黒理「もしかしたら、このお金は私にくれたのかもしれない」
宮本義和「さっきから何を言ってるんですか。 それ、こんな時に話すことですか」
石黒理「死人に口なしとはまさにこういうこと。 いやー、借用書は作成しておくべきだったな」
宮本義和「・・・・・・」
宮本義和「石黒さん。 あなた・・・まさか」
石黒理「ん?」
宮本義和「僕のことを言ってるんですか」
石黒理「はて? 何のことやら?」
宮本義和「僕に、先生に借りた金を踏み倒せって言ってるんですか!」
  とぼける石黒に宮本が掴みかかる。
石黒理「宮本君、先生に借金があるの? 借用書はちゃんと書いたの?」
宮本義和「・・・・・・」
  睨みつける宮本のポケットに、石黒が手で弄んでいた1万円を入れる。
宮本義和「何を!」
石黒理「これは君が持っていてくれよ。 私もどうしたらよいか分からなくてね。 使い道は任せるよ」
宮本義和「ふざけないでください」
石黒理「君と先生は友人だろ?」
宮本義和「だからなんですか」
石黒理「たまには奢(おご)ってもらったりもするだろう。 もらっておきなよ」
宮本義和「意味が分からないです」
石黒理「それにしても、よくアシスタントをやる気になったね、友人の下で」
宮本義和「こっちの勝手じゃないですか」
石黒理「君の方から直接先生に申し出があったそうじゃない。 それも、連載が決まった途端に」
宮本義和「・・・何が言いたいんですか」
石黒理「300万」
宮本義和「どこまで・・・知ってるんですか」
石黒理「いやいや。何も知らないよ」
宮本義和「金額まで知ってるじゃないですか!」
石黒理「細かいことが気になる質でね。 悪気はないんだよ。本当にたまたま」

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