脱皮

尾長イルカ

脱皮(脚本)

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尾長イルカ

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〇黒背景
  蠱惑の微笑み
  男を誘惑する美少女
男「💛💛💛💛💛」
皮屋「いいフェロモンだしてんなぁ〜」
皮屋「姉さんの・・・そろそろだなぁ?」
皮屋「とぼけんなよ 皮だよ」
皮屋「姉さんの皮 もらうぜ!!」
男「人殺し ヒイイ!!」
  男は逃げていった

〇水中
茂手那 杉男「くっ 苦しい・・・我慢だ・・・ もうすぐ 楽になる ゴボゴボ」
茂手那 杉男「もうすぐ もうすぐ 楽になる・・・ ゴボゴボゴボ」

〇土手
茂手那 杉男「・・・・・・」
茂手那 杉男「生きてる どうして?」
茂手那 杉男「あんたが 助けたのか? 余計なこと・・・ 死なせてくれたら よかったのに」
皮屋「モテたいか?」
茂手那 杉男「!?」
皮屋「モテたいなら それ被れ」
皮屋「人生 変わるぜ」
  それは ぺちゃんこの美少女
  いや 少女の形をした皮だった
皮屋「人生変えたいなら 被れ 半年後に また来るぜ」

〇綺麗な部屋
  確かに人生が変わった
  俺は人気インフルエンサーになり
  動画サイトで 幾らでも金は稼げた
  ちょっと微笑めば 
  バカな男たちが 投げ銭してくれる
  スポンサーもついた
  写真集 コンサートも開かれた
  すっかりアイドルだ
  誰も中身を知らないのに・・・
  いや誰も 俺の中身には興味ない
  見てくれが良ければ それでいいのだ
  世間なんてチョロイ
  人生は もっとチョロイ
  皮のせいで 肌荒れがヒドイ
  抜け毛 吹き出物
  中身の俺は もっと醜くなっていた
  もう 皮を脱ぐことはできない!!
  皮がなければ 俺に価値はない!!
ミライ「みんな〜愛してる!!」
ミライ(だって みんなバカだから!!)

〇コンサート会場
  熱心なファンがいた
  初めは適当にあしらっていたが
  あまりに熱心で ついつい・・・
  もしかしたら彼の中に
  昔の自分を見ていたのかも・・・

〇ホテルの部屋
  いつのまにか
  身も心も 女になっていた
  容姿の悪い男でも
  彼を思うと 体が火照る
ミライ「?」
ファン「アア! ダメだ 返せ!!」
ミライ「何これ?」
ファン「君は知らなくていい!!」
  慌てて男は隠した
  後日 彼のスマホを盗み見た
  買物の記録が・・・高額な媚薬だった
  惚れ薬!!
ミライ(騙された!! 彼への愛情も 全て媚薬のせい)
  或る日 媚薬を盗んでホテルを出た
  もう二度と コイツの顔は見たくない

〇ジャズバー
  最強アイテム 手に入れた!!
  欲しい相手は 誰でも手に入る
  可愛い男 イケメンばかり喰った
  すっかり 女になっていたのだ
  美女に生まれた幸せを満喫していた

〇水中
  私に見捨てられ 男は自殺したらしい
  らしい というのは
  興味がなかったから
  そういえば 
  自殺しようとしたことが・・・あったかな?
  何で 死のうとしたんだっけ?
  ん~ 思い出せない・・・

〇綺麗な部屋
  ネットで私を叩く 醜い男女を嘲笑った
  裏垢で そいつらを撃破していた
  もぐら叩き・・・
  いやゴキブリ叩きだ!!

〇清潔なトイレ
  半殺しにして
  ワザとトイレで溺れさせる
  必死に暴れる ゴキブリたちを見るのが
  私の趣味だった

〇手
  怖いものが なくなった私は
  イケメンや 美女たちにも容赦なかった

〇黒背景
  結局 みんなゴキブリだ!
  すべて トイレで半殺し!!
ミライ「アハハハハハ」

〇清潔な浴室
ミライ「最近 自分が臭いと感じる なんだか 腐ったような体臭がした」
ミライ「もう長いこと 皮を脱いでいなかった 最後に本当の自分を見たとき 吐き気をもよおした」
ミライ「その姿は・・・人の・・・」
皮屋「いい匂いだ だいぶ仕上がったな?」
ミライ「どこから 入った!?」
皮屋「言っただろ 半年後に来ると」
皮屋「皮を返してもらうぜ」
ミライ「ま まって! まだ これから これからが オイシイところなのに!!」
皮屋「もう十分 熟成したろ?」
ミライ「熟成?」
皮屋「熟成肉ってあるだろ? 旨味が満ちて 美味いんだ!!」
皮屋「肉も魂も 腐りかけが一番美味い!!」
皮屋「勿論 正しく処理しての話だがな!!」
ミライ「な なにを言ってるの!?」
皮屋「この皮を着れば 姿は美しくなるが その分 魂は醜くなる」
皮屋「もともと醜い奴は コンプレックスがあり ネタみ ソネみ ヒガみが強い」
皮屋「そこを美しくすると 歪んだ性格が かえって肥大する」
皮屋「これは そのための熟成皮だ お前の歪みを育てる 腐った魂を 更に腐らせる!」
皮屋「いい匂いだ! フェロモンが発酵して 魂の腐った匂い これを 待っていた!!」
皮屋「いまこそ 収穫の時だ!!!!」
ミライ「いやだいやだ!! ヤメテ!!」
ミライ「ヒドイ!! 人生が変わるって 言ったじゃない!! 信じたのに!!」
皮屋「確かに 人生が変わると言ったさ でも・・・」
皮屋「良い方向に変わるとは 言ってない」
ミライ「!!!!」
ミライ「あんた・・・あんた 一体 何者?」
皮屋「俺? 俺はただの・・・」

〇水中
茂手那 杉男(思い出した!! 俺 ある女の子が好きだったんだ!! でもフラれて それで川に・・・)
茂手那 杉男(美人・・・いや みてくれだけの つまらない女に・・・なんで? 俺・・・)

〇清潔な浴室
  皮の中には
  彼の本性が入っていた
  すっかり醜く 人間ですらなくなった姿

〇研究開発室
皮屋「ミンチにして エキスを抽出と・・・」
皮屋「できたぞ」
皮屋「媚薬!!」
皮屋「人の心を 狂わせる媚薬は 狂った魂からしか 取れないのさ・・・」
皮屋「俺は ただの薬屋さ・・・」
皮屋「今 これを読んでるアンタ アンタも この皮着るかい? 人生変わるぜ ヒヒヒヒ!!」
  END

コメント

  • 連打してたらリアクション吹っ飛ばしてました。変なリアクションだったらすみません。

    ただ転落系と思いきや、ラストで最初に繋がるのですね。人の心の醜さと、それが肥大化してゆく様が不気味で良かったです。
    皮と媚薬と中身、全てが繋がるラストには驚かされました

  • 人間の皮の中で悪い魂が発酵・熟成するという発想が素晴らしすぎる。生の牛肉ドレスを着てカッコつけてたレディ・ガガも真っ青だよ。そして皮屋が汚物から媚薬を作る薬屋だったというオチもすごすぎた。かつて段ボールで肉まんを作って売ってた中国人もびっくりだよ。世界の奇人変人をも震撼させるトンデモホラーに、私もびっくりしすぎて被ってた皮が脱げちゃいました。

  • 私は人生が変わると言っていたのでてっきりその皮をくれてその皮をもらった人にとって神様のような存在になるのかと思いましたが、悪魔のような存在になったのがすごい発想だと思いました。

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