第二話「闇カジノ」(脚本)
〇大きい病院の廊下
草ケ部がニヤニヤしながら歩いていると
向かいから高田がやってくる。
高田「おー、草ケ部くん。 ずいぶん機嫌良さそうだねぇ」
草ケ部雄大(あんたの顔を見るまではな)
高田「娘さんの学校決まったんだろ? 有名校だっていうし、将来楽しみだな」
草ケ部雄大「どうしてそれを・・・?」
高田「はっはっは。 私はこう見えて情報通なんだよ。 今度入学祝いを用意させてもらうよ」
草ケ部雄大(チッ・・・ お返しに余計な気を遣わせやがる)
高田が立ち去って行く。
草ケ部雄大「あの日、闇カジノに行った俺は、一晩で 五百万近い大金を手に入れることができた」
草ケ部雄大「娘の入学資金を支払っても、 俺の手元には三百万近い金が残っている」
草ケ部雄大「それもこれも加賀見のおかげだが、あいつには闇カジノだけでなく、患者の家族から袖の下をもらったことも知られている」
草ケ部雄大「加賀見か・・・まだ帰宅せずに院内に 残ってるなら、一応釘を刺しておくか」
〇綺麗な病室
加賀見がベッドで寝ている
加賀見春樹(かがみはるき)を
見守っている。
加賀見勝「あぁ、先生ですか」
草ケ部雄大「どうも。先日の件は──」
加賀見勝「あ、その顔はもしかして心配でした? 僕が先生のことを外に漏らすわけ ないじゃないですか?」
加賀見勝「闇カジノなんてバレたら、 僕だってアウトなんですから」
草ケ部雄大「・・・すまんな」
加賀見勝「ははっ。 僕等、運命共同体ってやつですね!」
草ケ部雄大(くっ・・・ 落ちこぼれが調子に乗りやがって)
草ケ部雄大「ところで、そこに寝ている子は──」
加賀見勝「不肖の息子ですよ。心臓が弱くてね、 うちで入退院を繰り返しています」
草ケ部雄大「こんなに大きなお子さんだったんですね」
加賀見勝「若いときに勢いで作った子でね。 嫁さんは早くに出ていってしまったし、 男手一人で育てたんですわ。あはは」
草ケ部雄大(ふんっ・・・ 他人の苦労話ほどあくびの出るものはない)
加賀見勝「ところで先生。また、どうですか? 今度は別の闇カジノに行ってみましょう」
草ケ部雄大「なぜ別のところに行くんだ」
加賀見勝「目を付けられちゃうからですよ。 前回、僕たち大勝しましたし」
加賀見勝「大きく勝ったタイミングで別に移る、 これは鉄則です」
草ケ部雄大「なるほど」
加賀見勝「次に行こうと思っているカジノは、 ノーレートなんです」
加賀見勝「上限がなく、賭けたいだけ 賭けることができます」
草ケ部雄大「・・・興味ないな」
加賀見勝「またまた~。100万円が、一晩で1000万 1億になるのだって可能なんですよ。 夢があるでしょう?」
加賀見勝「ただ今回は、前のようにディーラーの 癖を掴んでいるわけではありません。 だから最初は軽い下見の予定です」
草ケ部雄大「興味がないと言ってるだろ。こないだ 行ったのは、ほんの気まぐれなんだ。 小遣い稼ぎ程度のな」
加賀見勝「じゃあもし興味出ましたら、土曜日の夜、 連絡ください。待ってます」
草ケ部雄大「待たなくていい。絶対に行かない」
加賀見勝「あはは。期待せずお待ちしています」
草ケ部雄大(くそ・・・しつこい男だ)
〇おしゃれなリビングダイニング
草ケ部雄大「土曜日の夜?」
草ケ部英恵「うん。真美が前から行きたいって 言ってたレストランがあるの。 デザートがおいしいんだって」
草ケ部雄大(土曜日の夜は・・・ ああ、加賀見が言ってた闇カジノの日か)
草ケ部英恵「どうかな? 厳しい?」
草ケ部雄大「いいじゃないか、行こう」
草ケ部英恵「いいの?」
草ケ部雄大「最近仕事続きだったしな。 真美も頑張ったんだから、 お祝いしてあげないと」
草ケ部英恵「ありがとう! 明日、話したらすごく喜ぶと思う」
〇パチンコ店
大当たりを連発しているが、
上の空の草ケ部。
草ケ部雄大(・・・ダメだ。全然興奮できない)
〇ナースセンター
草ケ部がやって来て、
色めく女性看護師たち。
その中で神田美沙(かんだみさ)だけが
草ケ部に関心がない風に書類整理を
している。
草ケ部雄大「神田くん。ちょっといいかな?」
神田美沙「今でしょうか?」
草ケ部雄大「ああ、すぐに終わる」
〇警察署の資料室
草ケ部が美沙の身体に抱き着いている。
神田美沙「先生ってほんと鬼畜よね」
草ケ部雄大「うるさい」
神田美沙「呼ばれて応える私も私だけど」
草ケ部雄大「黙ってろ」
神田美沙「土曜日の夜くらい、 早く帰って家族孝行でもしたらいいのに」
草ケ部雄大(くそ・・・ 女を抱いても満たされないのはなんでだ)
神田美沙「ねえ、心ここにあらずって感じだけど、 一体どうしちゃったの?」
草ケ部雄大(くっ・・・こいつの言う通りだ。 あの日、あのカジノの興奮を味わってから 俺はおかしくなってる)
草ケ部雄大「・・・気が変わった、帰る」
神田美沙「えっ?」
神田美沙「なんなの、わけわかんない」
〇山中のレストラン
英恵と草ケ部真美(くさかべまみ)が
草ケ部を待っている。
草ケ部英恵「パパ、早く来るといいね」
草ケ部真美「うん・・・!」
草ケ部英恵「あ、パパからだ。もしもし?」
草ケ部英恵「え・・・? 急患? ・・・うん。 わかった。仕方ないよね。 うん、大丈夫だから」
草ケ部真美「パパなんだって?」
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