【美】『少女』の秘密(脚本)
〇女の子の部屋
さよか「私は可愛い。私は可愛い。私は可愛い。今日も可愛い」
さよか「今日も──私は可愛いに決まってる」
さよか(だって、私は)
〇お嬢様学校
私立 百合翁高等学校
女子生徒1「さよちゃんおはよう!」
さよか「おはよー」
女子生徒2「さよかさん、おはよう」
さよか「おはよ」
女子生徒1「今日も可愛いなぁ」
女子生徒2「今日も凛々しくて素敵だわ」
〇女子トイレ
さよか「大丈夫、私は可愛い私は可愛い私は可愛い」
さよか「バレてない、バレる訳ない、バレちゃいけない」
さよか「私はもう昔の私じゃない」
さよか「──大丈夫」
〇階段の踊り場
さよか「!?」
ゆゆり「うわっ、スミマセン!!」
さよか「わ、私こそボーッとしててごめんなさ──」
ゆゆり「ってあれ、さよ?」
さよか「ゆゆり!?」
ゆゆり「気付かなくてごめん。怪我ない?」
さよか「私は大丈夫。そっちは?」
ゆゆり「大丈夫系。てか、今日顔色ちょっと悪くない?」
さよか「えっ」
ゆゆり「なんか元気ないってか」
さよか「そ、そんなことないよ!」
ゆゆり「でも」
さよか「ほら、予鈴鳴ったし行こっ!」
ゆゆり「だね」
〇広い廊下
さよか「ってか、いくら私服とはいえ今日も随分攻めた服だね」
さよか「私もだけど、一応中にシャツ着たり、制服っぽい見た目にする人が多いけど・・・」
ゆゆり「そう?別に校則違反じゃないし気にしないかな。それに」
ゆゆり「1年後の私は、また違う服が好きになってるかもしれないじゃん?」
ゆゆり「だから、『今の私』が1番好きな服を沢山着ておきたいだけだよ」
さよか「・・・」
ゆゆり「えーっと、さよ?大丈夫?マジで今日調子良くない感じ?」
さよか「──ゆゆりは、本当に変わらないね」
ゆゆり「えっ?」
さよか「私、ゆゆりのそういう所見る度に、自分が惨めになって嫌になる」
ゆゆり「さよ?」
さよか「自分に嘘だらけの私を知ったら、ゆゆりはきっと嫌いになるんだろうな」
さよか「・・・ごめん」
さよか「先行ってるね」
ゆゆり「さよか・・・」
〇教室
さよか(はーっやっちゃった。最低だ)
さよか(今日はいつもより注目浴びて焦ったからって八つ当たりなんて)
さよか(あとでちゃんと謝りたいな。絶対に驚いたよなぁ)
さよか(昔とは違うのに、何でこうも上手くいかないんだろう)
さよか(手紙?)
さよか(ゆゆりからだ)
放課後 17時に教室で話があるから
さよか(この文面からして、怒ってる・・・よね)
さよか(そりゃそうか。心配してくれたのにあんな態度。もしかしたら許してもらえないかも)
さよか(ゆゆりは大好きで大事な友だちだから、今日ちゃんと私のこと話そう)
さよか(それでもしも受け入れて貰えなかったら)
さよか(その時は、その事実を受け入れよう)
〇教室
〇教室
〇特別教室
いじわるな男の子「おいっ!こいつ似合いもしないのにスカートはいてるぜ〜!」
いじわるな男の子2「きっも〜!!」
???「な、何でそんなイジワル言うの」
???「別にどんなスカートはいったっていいじゃん・・・」
いじわるな男の子「は?なに言ってんの」
「だってオマエ」
〇教室
さよか「!?」
さよか(び、ビックリした・・・鞄が落ちちゃったのか)
さよか「──もう少しで約束の時間だ」
さよか「ゆゆり・・・」
ゆゆり「待たせてごめん」
さよか「ううん。大丈夫」
さよか(まずは嫌な態度しちゃってごめんって謝ろう。それから、ちゃんと話をしよう)
さよか(怖くても、ちゃんと伝えなきゃ)
さよか「ゆゆり、あのねっ──」
ゆゆり「さよか。聞いてほしいことがあるの」
さよか「えっ?」
ゆゆり「私の秘密」
さよか「わかった」
ゆゆり「ありがと」
ゆゆり「私ね」
〇特別教室
「だってオマエ」
〇教室
ゆゆり「男の子なの」
さよか「──えっ」
〇特別教室
「だってオマエ、男じゃん」
ゆゆり「男の子だってスカートはいてもいいじゃん」
いじわるな男の子「男の子はズボンはくもんなんだよ」
いじわるな男の子2「やーいオンナオトコ〜声もたけ〜」
いじわるな男の子「名前も女みてー」
ゆゆり「や、やめてよ・・・」
ゆゆり(自分の好きを信じたらだめなの?)
〇教室
ゆゆり「子どもの頃の話だよ。それから暫くは周りの目を気にして男として過ごしてたんだけど」
ゆゆり「こんな生き方したら、絶対に後悔すると気付いた」
ゆゆり「あいつらは私の人生を滅茶苦茶にしても、その責任は取らない」
ゆゆり「そんな奴らの言葉気にしてるの、すごくアホらしいなって思ってさ」
さよか「・・・」
ゆゆり「だから、地元を離れて私服の学校に来たの。先生たちにも話してる」
ゆゆり「まだ誰にも気付かれてないと思うけど、時間の問題かな」
ゆゆり「入学してからバレる覚悟はあったけど、今でも嫌われる覚悟が足りてないんだ」
ゆゆり「さよにはちゃんと自分の口から伝えようと思ってたのに、遅くなってごめん」
ゆゆり「騙してたし、嫌いになった?」
さよか「そんなことないよ!!」
さよか「話してくれてありがとう。聞けてすごく良かった。男の子でも、変わらないよ」
ゆゆり「良かった」
さよか「──それに騙してるなら、私もそうだよ」
さよか「私」
さよか「──整形してるの」
〇ダイニング(食事なし)
母「あの子、大きくなる度あなたに似てくるわね」
父「お前に似てきたんだ。あの分厚い唇なんかソックリじゃないか」
母「何よっ!あの腫れぼったい一重瞼なんてあんたと同じじゃないっ!」
父「ニキビの多さはお前譲りだろう!?」
母「あの子の顔が可愛くないのは私のせいだって言いたいの!?」
さよか「・・・」
〇教室
さよか「それから新聞配達でお金貯めたりお年玉崩して、プチ整形を繰り返したの」
さよか「私の顔は嘘だらけ」
ゆゆり「整形は批判されるものでも、恥ずべきことでもないよ」
ゆゆり「なりたい自分になるのに、ちょっと周りから手を借りるだけ」
さよか「ゆゆり」
ゆゆり「私たちは、似た者同士惹かれ合ったのかもね」
〇お嬢様学校
数ヶ月前
さよか(入学して間もないのにこの服は攻めすぎた?猫耳はまずい?)
さよか(でも可愛くなったら絶対につけてみたかったんだよねー)
さよか(てか、整形ってバレたらどうしよう!?あーっもう!)
さよか「す、すみません!」
さよか(うわっ、すごい美人。しかも服も自由だなぁ)
ゆゆり「私もごめんなさい。新入生?」
さよか「は、はい」
ゆゆり「そっか!私はゆゆり。よろしくね」
さよか「さ、さよか、です。よろしく」
ゆゆり「じゃあさよ。よかったら一緒にいこ?」
さよか「う、うん」
さよか(良い人そうで良かった)
ゆゆり「あっ、そーそー」
ゆゆり「その猫耳、超かわいーね」
さよか「ありがとう」
〇教室
さよか「そうかも」
さよか「さっきは本当にごめんね」
ゆゆり「仲直りしたから問題なしッショ」
さよか「ありがとう そして」
「これからもよろしく」
〇お嬢様学校
〇白
私たちは今日も可愛い
だって、自分の信じる【美】『少女』だから
完
人は誰にも言えない秘密をひとつは持っているもの。でも、それを話せる人に会えたときのうれしさは格別のものなんでしょうね。心にしみる素敵なお話でした。