fall bride

村茶直季

仲秋(脚本)

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村茶直季

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〇広い公園
要汰(小学生)「おっしゃ!オレの勝ち!!」
陽樹(小学生)「すごいな、要汰」
陽樹(小学生)「オレも要汰みたいになれるかな?」
要汰(小学生)「ムリムリ、生まれ持った才能が違うって」
要汰(小学生)「なにすんだぁ、葉月!」
葉月(小学生)「わざとじゃないんだよ。 思ったより顔にいっちゃった」
葉月(小学生)「ごめんごめん」
葉月(小学生)「陽樹、要汰!3人でやろ!!」
要汰(小学生)「ヘタクソがついてこれるかよ」
陽樹(小学生)「じゃあ、オレと葉月の2人で組んで 2対1でやろう!」
要汰(小学生)「ズルいだろ、2対1は!」
陽樹(小学生)「生まれ持ったものが違う、ってやつだろ?」

〇田舎の学校
  どうして男子に混じって遊んでるの?
  陽樹といっしょだと楽しいから
  どうして男の子みたいな格好してるの?
  陽樹とお揃いでいたいから
  どうして『  』って言うの?
  それ、やめた方がいいよ

〇大きな木のある校舎

〇体育館の舞台
教師「久遠さん!」
教師「これは練習だけど、本番だと思って! 笑顔!!笑顔!!」
教師「もっと堂々として! ポーズを恥ずかしがらないで!」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「遊里ー、りほー、来たよ~」
教師「蝶野さん、あなた確か文化祭のモデル 去年やってたわよね」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「そうですけど?」
教師「ちょっと久遠さんの代わりに やってみてくれない? 彼女の見本になってほしいの」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「全然OKですよ~!」

〇体育館の裏
  正直、舐めてた
  ここまで、全然できないとは・・・
「ドンマイ、ドンマイ♪」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「大丈夫だよ、初めはうまくいかなくても みんな、許してくれるから」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「・・・もし、このまま下手だったら どうなるかな」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「進歩しない前提を言われてもね~、 誰か代わりにやるんじゃない?」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「お兄さんのドレス、素敵だよね モデルになりたい子、いっぱいいるよ?」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「ユキも、一目惚れしちゃってさぁ 猛アタックしたんだけど」

〇理科室

〇体育館の裏
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「”コレは、僕の我儘でできたドレスだから”」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「”葉月以外は無理”、だって」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)(そんなことあったんだ)
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「意味わかんないんだよね~、 ”妹のために作った”ならわかるけど」

〇白
  陽樹の作ったウェディングドレスを私が?
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「どうしてもかな? 人前に出るのはちょっと・・・それに」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「兄妹だから頼んでるのに、 兄妹だから何かダメな気が・・・」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「・・・了解」

〇教室
  ──前日
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「『どうすれば、陽樹のドレスの  モデルになれるか?』」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「ヨータ、幼馴染なんでしょ? 久遠・兄って、どんな人?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「少なくとも俺に、奴への発言力なんざ 皆無だぞ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「葉月がサッカーを辞めたら、 陽樹も辞めた」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「葉月が髪を伸ばし始めたら、 陽樹も伸ばした」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「なにそれ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「二人共、我が道を行くタイプだが 陽樹の方が、その傾向が強い」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「葉月が嫌だ、と言い出さん限り ありえねぇよ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「まあ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「葉月が本心どんなに嫌でも、 陽樹の頼みを断るわけねぇと思うけど」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「由姫にはわかんねぇだろ?」

〇体育館の裏
久遠 葉月(クオン ハヅキ)(ヘコんでいる場合じゃない)
久遠 葉月(クオン ハヅキ)(陽樹の我儘に付き合うと 決めたからには、頑張ろう)
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「久遠さんたちって、ホント仲いいんだねー」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「ユキも双子だけどさぁ」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「妹とメチャクチャ仲悪いから、 わかんないや」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「妹と同じ高校に通いたくなくてさ、 家から離れてるから、この学校にしたんだ」

〇黒
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「双子ってだけで、周りにからかわれたり 見世物みたいに扱われたことない?」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「何をしても比べられて、 結果が同じなら「双子だから」 結果が違えば、「双子なのに」」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「妹と間違えられる度に、 自分自身をちゃんと見てもらえてない ・・・気がした」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「・・・・・・・・・」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「けどさぁ」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「高校別々になって、ホント良かったよ」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「ここならユキは”双子の姉の方”じゃなくて ただの”蝶野由姫”だから」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「双子なんて、一緒にいなかったら 意味ないんだもん」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「いつまでもお兄さんと一緒にいられる わけじゃないって、わかってるでしょ?」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「進路、就職、結婚・・・ 人生の分岐点なんて、たくさんあるもんね」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「これが、最後の文化祭なんだもん」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「良い思い出になれるといいね」

〇文化祭をしている学校
  高校最後の文化祭・・・
  葉月を誘うのに失敗するは、
  クラスメイトも、チームメイトも
  捕まらず、最悪の事態だと思ってたが──

〇教室の外

〇グラウンドの水飲み場

〇グラウンドの隅
  ここまでの最悪は、想定外だった
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「ほら」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「・・・ありがとう」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「ちったぁ、落ちついたか?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「陽樹と何かあったか?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「お前が泣くなんて、陽樹絡み以外 ありえねぇんだよ」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「陽樹とは、何とも無いよ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「陽樹”とは”──何とも無いが、 陽樹と関係あること、ってとこか」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「小学生の頃、覚えてる?」

〇広い公園
  毎日、夕方になるまで3人で遊んで、
  ほとんどサッカーばかりやってたよね
  今でも思うんだ
  自分が”男”だったら、
  それが今でも続いてたのかな、って

〇グラウンドの隅
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「・・・どうだろうな」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「少なくとも、他の女子から 「変」とか「辞めた方がいい」とか 言われなかったと思うんだ」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「──あの頃、”オレ”って言ってたし」
  葉月が言わなくなってから
  陽樹も言わなくなった
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「成長すればするほど、 似てないことが当たり前になって」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「この年の男女だと、 カップルだと思われることも増えて」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「自分が女であることが、もう嫌で──」
  あぁ、だからか
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「私が、女じゃなかったら!」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「ずっと友達だったでしょ・・・」
  そんなの、とっくの昔から思ってる

〇田舎の学校
  穂坂くんって、
  葉月ちゃんのこと好きだよね
要汰(小学生)「ハァ!?」
小学女子「だって唯一、名前で呼んでるし」
要汰(小学生)「そりゃ、双子だからしょうがねぇだろ?」
小学女子「いつも一緒に遊んでるし」
要汰(小学生)「じゃあ、お前ら女子も、 一緒にサッカーすれば?」
小学男子「実は、付き合ってんじゃねーの?」
要汰(小学生)「んなわけねぇだろ!!あんな男女!」
要汰(小学生)「自分のこと「オレ」って言うし、 女じゃねーよ、アイツ!!」
要汰(小学生)「えっ・・・」
  葉月がさすがに、人を選んで”オレ”を
  使っていたことを、そこで初めて知った
  葉月が、サッカーを辞めたのも
  禄に笑わなくなったのも
  オレのせいだ

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