fall bride

村茶直季

晩秋(脚本)

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村茶直季

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〇体育館の舞台
???「あれ?」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「ファッションショーは、午後からだよね? 妹さんと文化祭、回らないんだ?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「・・・最近、何かあったらしくてね。 僕といても元気なさそうだから、」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「要汰に預けてきた」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)(捨てられたような顔してたから、 今頃、泣いてるかも)
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「大丈夫かな〜、 尻軽男と二人っきりなんでしょ?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「そういえば、君は要汰の元カノの 一人だっけ?」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「そんなことも、あったっけ?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「要汰は、何かよほどのことをしたのかな?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「モテてはいたんだから、それなりに 女子の扱いは心得てるはずだけど」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「さあ?・・・どうだか」
  ヨータはそんな、悪い彼氏じゃなかった
  意外と大事にしてくれたけど・・・

〇駅前広場
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「由姫? 確か、今日、 先約あるんじゃなかったのか?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「その髪、染めてんの? 似合ってるじゃん」
  ”それがユキじゃない”って
  気づかないまま、デートしたって聞いて
  すぐ別れた

〇体育館の舞台
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「アイツ、元カノは幾人もいる どうしようもない奴だけどさ、」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「クソデカ感情をこじらせてるのは、 葉月だけだよ」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「・・・だったら、あの2人で 付き合っちゃえばいいじゃん」
  安直に『男女の関係』になれば
  2人共、楽だったろうか?
  自責の念にとらわれてるのか
  そもそも、本気で女として見てないのか
  それなのに──

〇散らかった職員室

〇グラウンドの隅
  クソだせえ
  女として見ていない、いや、
  女として見る資格すら無いのに、
  それでも他の男に、取られるのは
  気に食わなくて──
  いざ、誘ったら、地雷踏んだって・・・
(どうしたんだよ、一体・・・)
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「ごめん、まさか泣くとは・・・」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「やめろ、俺が一番驚いてるわ!」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「試合で負けた時くらいでしか、 泣かない男だと、思ってたよ」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「・・・さっきの、ごめん」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「思いっきり、癇癪だった・・・」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「ここで打つか!?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「なんとなく」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)(・・・泣かれるよりか、マシか)
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「・・・どうせ私は子供だよ」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「「いつまでも一緒に、  いられる訳じゃないんだから」って」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「「いつか二人共、 互いに大事な人ができるんだから」って、」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「親も、先生も、あの子も・・・」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「どいつも、こいつも──」

〇おしゃれなリビングダイニング

〇散らかった職員室

〇体育館の裏

〇グラウンドの隅
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「どいつも、こいつも、わかってない!!」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「要汰!!」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「陽樹と私が、 離れ離れになるなんてイメージできる!?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「私に!陽樹に! 自分の片割れ以上に「大切な人ができた」なんて言う日が、来ると思う!?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「生まれる前から、一緒なのに その間に割って入れる存在がいると思う!?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「──私だけがそう考えてるって思う!?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「ちょっと、待ってくれ・・・、俺は今、 否定できない自分に打ちのめされている」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「こんな話、ちゃんと答えてくれるの きっと、要汰くらいだよ」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「だから──」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「陽樹の次には、大事だと思ってる」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「だけど、彼女とかはムリ・・・ごめん」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「・・・いいよ、それで」

〇空
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「お前が、誰の物にもならなくて 少なくとも、俺は特別だって言うなら」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「それで、いい」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「・・・今までと何が違うの?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「おまえにとっては、何も変わらんか。 ・・・イヤ、むしろ」

〇グラウンドの隅
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「そのまま、変わらないでいてくれ、 ってことだよ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「あー!あと、もう1つ言えることは」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「この後のウェディングドレスを 平穏に見れる──」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「ちょっと、緊張するだけ、だよ・・・。 あー、あと、致命的に──」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「うまく笑えない、だけで・・・」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「陽樹から『ハウス』って、」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「「戻ってこい」なら  他に言いようあるだろ」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)(それで通じるから、ダメなんじゃ?)

〇体育館の舞台
アナウンス「次のプログラムは、ファッション造形基礎科のファッションショーです」

〇体育館の舞台袖
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「無理!無理!!ムリ!!」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「あんな花とかオーラ、飛ばせないって!」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「実に、禍々しいオーラだ」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「こんな感じに出せないか?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「どうやって出してるの?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「あえて言うなら、溢れる自信」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「自分は自分でいいんだ、という絶対感」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「難しい・・・」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「何を言っている」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「どんな我儘だろうが、付き合ってくれる 相方がいる」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「どんな自分だろうが、受け止めてくれる 片割れがいる」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「僕の自信は、ほぼほぼ葉月の存在から 出来上がっている」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「ここまで言われても、 まだ自信が持てないか?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「さあ、観客をあっと言わせてきてくれ」

〇体育館の舞台

〇文化祭をしている学校

〇学校の屋上
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「どうして、そんなこだわってたんだ?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「葉月に、ウェディングドレス着せるの」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「これから先、おそらく──」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「葉月のウェディングドレスを拝む機会 一生、来ないだろうな、って思ってるんだ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「妹を生涯独身認定かよ?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「別に、結婚しても 式を挙げるとは限らないだろ?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「高校卒業したら、 もうスカートは履かなくなると思うし」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「一度でも思い出が欲しかっただけだから、 これから先は、葉月の好きにさせたい」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「・・・お前は、葉月のことわかってんだな」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「誰に向かって言っている」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「ズルい。2人だけ楽しそう」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「お前には、これが楽しそうに見えるか」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「ん、」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「腹減ってるだろ?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「おい、陽樹」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「お前が葉月に向ける、その・・・ 慈愛の眼差しつーか、ソレって・・・」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「『Like』or『Love』案件か?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「──!!」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「フム」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「葉月、口元ついてるよ」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「葉月、実は僕は──」

〇ハート
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「葉月のことを、兄妹以上の気持ちで 好きなんだ、愛している!」

〇学校の屋上
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「アラ、嬉シイ。私モヨ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「ハァッ!?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「葉月」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「陽樹」

〇空
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「お前らぁ! 俺をからかってるだけだろぉ!!」
  ─fin─

コメント

  • 双子故の微妙な関係と、ウエディングドレスというキーアイテムが化学反応を起こしており面白かったです。ラストの展開も各位悩みながらも、どこか軽いタッチで捉えているのがある意味救いのように感じました。

  • 自分を好きになる、認める、には色んなカタチがあるんだなって思いました。誰かから貼られたレッテルなんか関係無ぇ!好きなんだよ!ってゴーイングマイウェイしたり、誰かに『嫌いな自分』を少しだけ好きにしてもらったり。面白いもんですよね☺️
    …村茶直季節、久々に浴びれて『コレだよコレェ!』って感じになりました!🤣ようこそ、タップノベル!🤣

  • 双子と幼馴染の奇妙な三角関係、繊細な感情の起伏を見事に描かれてますね。要汰の「一番は陽樹でいい」という言葉に葉月と一緒にぐっときてしまいました。面白かったです!

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