初秋(脚本)
〇文化祭をしている学校
〇空
高3の秋、最後の文化祭
よりによって、一番覚えているのは
あの時の夕焼けなんだ
〇アーケード商店街
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「気に入ったかい? 機嫌は直してもらえたかな?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「さあ、それはどうでしょう」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「朝から急に 「買い物に付き合ってほしい」って」
〇アパレルショップ
〇雑貨売り場
〇大きいショッピングモール
〇アーケード商店街
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「さっきまで色んな 手芸屋・生地屋をはしごしてたんだから」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「いきなり誘ったのは、悪かったよ」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「はしご自体は嫌じゃなかっただろ? いい材料も手に入ったんだし」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「それで何作る?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「ワントップに向いてるから、 ネックレスにして、周りはシンプルに 仕上げるかな」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「定番だけど、ベストだな」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「出来上がりを楽しみにしてるよ」
???「すみませ〜ん、ちょっといいですか?」
テレビスタッフ「街頭インタビューなんですが、 よろしいでしょうか?」
テレビスタッフ「道行くカップルに質問! 『最近、喧嘩した内容は!?』」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「すみません、生憎ですが・・・」
テレビスタッフ「『無し』はなしです!!」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「僕ら、兄妹なんで」
テレビスタッフ「美麗兄妹ですね〜!!」
最近、増えたなあ、こういう間違い
〇公園の入り口
男の子と女の子の双子なの!?
そっくりね~!
間違えられる程、似ていることが
楽しかった、自慢だった──
それは、自分たちだけの”特別”で
一緒であることは、”当然”で
あの頃は、それを信じて疑わなかった
──あの頃には、もう戻れないんだ
〇大きな木のある校舎
〇教室
女生徒「ちょっと、勝手に撮らないでよ!」
卒アル委員「それじゃ、不意打ちになんねえじゃん」
卒アル委員「大丈夫、今のは使わねーって」
男子生徒「おーい!卒アル委員が来たぞー」
〇屋上の入口
???「こんなとこにいたのか──」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「探したぞ」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「うちのクラスは出し物不参加、 当日参加のみのはずだけど?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「何の用?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)(せめて、こっち見ろよ)
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「陽樹が呼んでんだよ。 アイツ忙しいから、俺が代わりに──」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「行くよ、どこ?」
〇学校の廊下
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「お前さあ、他のやつにも そんな態度なのか?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「他の人にこんな態度しないよ。 幼馴染なんだから、許してほしい」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)(そもそも、 話しかけてくる人いないからなあ)
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「揃いも揃って同じこと言うな。 さっき同じセリフ聞いた」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「「何で俺がパシられなきゃならん」 「幼馴染なんだから、頼まれてくれ」」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「って感じ?」
〇渡り廊下
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「あのさ、文化祭どうすんだ?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「予定、決まってるのか?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「1・2年の時と、そう変わらないでしょ?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「私達は二人で回って どこぞの誰かさんは、彼女さんと 文化祭、回ってたんだから」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)(今年は陽樹が文化祭の出し物があるから、その間、一人だけど)
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「何で知ってんだよ!?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「知りたくて、知ってるんじゃないよ」
〇中庭
〇グラウンドの水飲み場
〇商店街の飲食店
〇学校沿いの道
〇渡り廊下
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「衣替えかよ!?ってくらい、 彼女が変わるって、周りが騒いでたんだよ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「あー!そうだよ!! いたよ、この間まで!」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「どれだけ振ってるの?振られてるの?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「どっちにしろ、 俺がろくでなしじゃねえか!」
???「要汰、興奮しすぎ」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「葉月も。 無自覚だろうけど、煽るんじゃないよ」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「・・・ごめん」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)(ほんっとに、 陽樹の言うことだけは、聞きやがる)
〇体育館の舞台
〇体育館の舞台袖
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「やっと完成したんだ」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「まだ、微調整が必要だけどね」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「あと何より、モデルが着てこその完成だ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「陽樹、俺の聞き間違いかもしれないから もう一度、説明してくれないか?」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「お前はこの程度のことが 一度で理解できないのか・・・」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「何をどうしたら──」
「「自分の作ったウェディングドレスを 妹に着てくれ」ってことになる!?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「毎年、ファッション造形基礎(3年)は 文化祭で、制作衣装の披露があるし」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「ほぼほぼ皆、作るのは ウェディングドレスだから」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「魔法少女の方が、よかったのか?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「その2択しかねぇのかよ!!」
「作り甲斐と出来栄え、的では」
兄が妹にウェディングドレスなんて
気持ち悪くねぇか?
いや、フツーそう思っても
こいつらフツーじゃねぇし
・・・確か、最近しょっちゅう
カップルに間違えられる言ってたよな──
〇ハート
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「葉月・・・」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「ダメだよ、私たち兄妹なんだよ・・・」
〇体育館の舞台袖
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)(何を考えてんだ、俺は!?)
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「モデルなら、他の女子に頼めばいいだろ」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「モデルを頼むとは、 スリーサイズを測らせてもらう ということだぞ」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「ちなみに、バストは必須だ」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)(その測定を、他の女子に 頼めばいいことに気づいていない)
久遠 陽樹(クオン ハルキ)(そこが、お前の美点だよ)
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「そもそも、葉月がいるのに あてにしないでどうする」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「いや、それ以前に──」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「僕を説得できると思っているのか?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)(さっきの幻のせいもあって、 あまり見たくない・・・)
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)(けど当の本人が嫌がる以外、希望がねえ)
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)(それが無いから、この状況なんだよな)
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「・・・・・・・・・」
久遠 陽樹(クオン ハルキ)「どうした、葉月?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「何でもないよ」
〇黒
実物を見て、ようやく湧いた気持ちだった
コレを着た自分が、想像できない
〇大きな木のある校舎
〇教室
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「葉月、もしかしてモデルの件、 すごく嫌じゃないか?」
ウェディングドレスが嫌な理由?
何がある?
逆に陽樹が
”葉月の花嫁姿を見たくない”なら、わかる
俺だって
葉月が、いつかどこぞの誰かと
一緒になる姿なんか──
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「全くイヤじゃないわけじゃないよ」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「人前に出るのは苦手だし、 デコルテから上は丸出しなんだから」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「最初からわかってる事だから、今更だよ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「・・・本当にか?」
久遠 葉月(クオン ハヅキ)「くどい」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「文化祭、陽樹がいない時間の予定は?」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「だったら、俺と一緒に──」
???「ヨータ〜、いるー?」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「ちょっと相談があるんだけど──」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「お取り込み中?」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「ヨータ♡ ユキ、ちょっとお願いがあるんだぁ」
穂坂 要汰(ホサカ ヨウタ)「俺は今、一世一代の告白に 失敗した所なんだが・・・」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「ユキの知ったことじゃないもん」
蝶野 由姫(チョウノ ユキ)「それに無節操クズ野郎が 何、ピュアぶってんの」
〇まっすぐの廊下
ずっと”友達”だと思ってた
昔のように、3人でいることは、
すっかり無くなったけど
あの頃の自分でも、今の自分でも
変わらないでくれる存在、だって
どうして皆、変わるんだろう
どうして自分は
皆のようになれないんだろう