お稲荷様は結婚したい!(脚本)
〇睡蓮の花園
月次神友(つきなみかみとも)会
古代神1「まだまだピッチピッチだねぇ、フレルは」
フレル「そりゃ雨神だもの♪」
古代神2「ところでコンはまた欠席か?」
フレル「ひっぱりだこみたいね」
古代神2「人を優先するとは、眷属上がりが偉くなったものだ!」
古代神1「サービス過剰なのよ!いつか身を滅ぼすわ」
〇神社の本殿
「ぷェッ」
ニエちゃん「風邪ですか?」
コン「噂されとるかな」
ニエちゃん「どうぞ、温まりますよ」
コン「半分こだぞ?二人で食う方が旨い!」
コン「ふぅ、馳走になった」
コン「もう三月もタダ飯じゃ。礼をさせよ」
ニエちゃん「差し入れですよ。コン様、いつも人のために頑張ってますから」
ニエちゃん「役立たずの孤児、社会のお荷物なんかに気を遣わないでください」
コン「それじゃがニエよ、我と結婚せんか?」
コン「お前と家族になりたい」
ニエちゃん「けっ!?」
ニエちゃん「うっ!嬉しい!でふ!けどぉっ!」
ニエちゃん「神様と結婚なんて、バチ!当たります!」
コン「確かに異なるものの交わりは、魔を呼び易い」
コン「が、我ら狐属には『狐の嫁入り』がある!」
コン「狐の婚儀には欠かせぬ、厄災を祓う祝福の雨じゃ!」
ニエちゃん「素敵♥️」
ニエちゃん「でもお式に呼べる人がいません」
コン「我もじゃ!こう見えて新しき神、知り合いも3柱の古代神くらいで──」
コン(彼らは──呼べんよ。人間と結婚など、どう思われるか)
ニエちゃん「では二人挙式ですね♥️」
コン「じゃな!明日早速フレル──雨神に頼んでこよう!」
コン(皆とは最近会っとらん。フレルさえ誤魔化せれば、隠し通せるじゃろう)
〇古びた神社
フレル「日照雨(そばえ)を?」
フレル「そりゃめでたい!相手は誰だい?この辺は狐も神も老いぼればかりで──」
コン「コッ!婚礼ではなく──」
コン「う、腕試しじゃ!隣町から我が社に日照雨を降らせられるかのぅ?」
フレル「君ねぇ、この雨神フレルを謀るつもりかい?」
フレル「僕の芸当を見たいなら、『敬意』をお見せよ!」
コン(しめた!騙せてる!)
コン「う、うむ、供え物じゃな!すぐ持って参る!」
〇神社の本殿
フレル「ま、来てあげたよね。何度も出直させるの悪いし」
コン「ではこちらで一つ、お願いします」
フレル「却下」
フレル「君の基準で考えるなよ!僕は『オンリーワン』が欲しいんだ」
コン(金以外の物など──)
コン「では我が社をやろう」
コン「往来も多く、管理も行き届いとる!」
コン(惜しいが、ニエと新居を探すのも悪くない)
フレル「隠し芸ごときに太っ腹すぎない?」
フレル「ま、いらないけど♪」
コン「何ゆえ!?」
フレル「静かに苔むした我が家が落ち着くのさ」
フレル「他の物をおくれ」
コン(背に腹は代えられぬ、か)
コン「では、こいつを譲るが──くれぐれも、くれぐれも大切にな!」
フレル「妖精かい?初めて見たよ」
コン「テフ子じゃ。輸入品にでも紛れたか、彷徨っとってのぅ」
テフ子「オオキニ ヨロシュー♥️」
フレル「迷子なら家を探してあげよう。異国だろうとひとっ飛びさ!」
ガシッ!
コン「お、おい、丁重に──」
〇空
テフ子「ギャ────!!!」
フレル「ほら、どの辺りだい?君の国は?」
〇神社の本殿
フレル「ダメだった」
コン「テフ子ーッ!」
テフ子「ぅえっぷ──」
コン「テフ子ッ!」
フレル「わっ!穢れっ!」
フレル「あ・・・」
フレル「落ち込むなよ!妖精だろ?埋めときゃ花から咲くかも──」
コン「・・・」
フレル「繊細すぎるんだって。次は頑丈なものを頼むよ?」
コン「次──」
フレル「手詰まりかい?」
フレル「まだ隠してるよなぁ?君の『一番大事』」
コン「もうよい、この話は無かったことに──」
フレル「願い事キャンセルとかさぁ」
フレル「殺すぞ?」
コン「は!?」
フレル「気付かないと思った?僕を化かそうだなんて、許さないよ?」
コン「ぐッ」
フレル「明朝また来る。お供え、期待してるよ」
〇神社の本殿
コン「すまん、ニエ。お前と結婚できなくなった」
ニエちゃん「え?」
コン「他所に呼ばれてな。今宵発ち、もう戻らん」
コン「だが、お前は必ず幸せにする!明日日照雨は降るし、新しい家族も見つかる!」
ニエちゃん「──嘘」
ニエちゃん「なんでッ嘘つくんですか?」
コン「・・・」
〇神社の本殿
フレル「雨雨フレフレ♪フラレた君にフレー!フレ!」
コン「明日の約束じゃろう!?」
フレル「だって君、自分を犠牲にその子を逃がすつもりだったろ?」
コン「騙れ!これは我が蒔いた種、我がけじめを付ける!」
ニエちゃん「そういうこと──」
ニエちゃん「ちゃんと話してくださいよ!人生を分かつための伴侶でしょう?」
コン「我はただ、ニエに幸せになってもらいたくて──」
ニエちゃん「八つ裂きにされ、血の雨となろうとも!コン様と添い遂げられるなら本望ですよ!」
「雨神様、この身を捧げます お怒りをお静めください」
フレル「いい度胸じゃないか お望み通り降らせてやるさ」
フレル「『狐の嫁入り』をな!」
コン「は?」
フレル「ご利益狙いのペテン師なら雑巾絞りの刑だったが──」
フレル「良い相手を見つけたね、コン!皆も喜ぶぞ!」
フレル「日取りはいつがいい?皆暇してるから二人の都合で決めてくれ!」
コン「皆には黙っててくれ!」
コン「今まで育ててもらって、失望させとうない」
フレル「独りよがりが過ぎるぞ、コン!彼女にも皆にも失礼すぎる!」
フレル「確かに僕ら古代神からしたらあり得ないさ、人間と対等な関係なんて」
フレル「でも、それが君の生き方だろ?それを否定するほど凝り固まっちゃいないぜ?」
フレル「人生の伴侶はちゃんと紹介しておくれよ」
〇神社の本殿
コン「迷惑をかけた」
フレル「君は優しすぎるんだよ、昔から」
フレル「覚えてるかい?これ」
コン「てるてる坊主?いつも付けとるな」
フレル「君がくれたんだよ」
フレル「2世紀程前かな──」
〇農村
フレル「またやってしまった 村が・・・」
コン「フレル殿、こちらを──」
フレル「こんなもので、降らせてしまった雨がどうなる!?」
コン「村の雨は、不運と思うしか──」
コン「でもせめて、フレル殿の心の雨が早く止めばと──」
〇神社の本殿
フレル「かわいかったな~子狐おコン 雨を僕の涙と勘違いしちゃってさ!」
コン「いつの話じゃ!いつまでも子供扱いしおって!」
フレル「そりゃあね」
フレル(君はまだまだ大きくなる)
フレル「幸せにおなり」
〇神社の本殿
大安吉日
テフ子「ぷぅっ!」
テフ子「ココドコヤッケ?」
〇神社の本殿
テフ子「オテンキアメヤ!」
テフ子「エエヤン」
テフ子「オメデトサン!」
フレル「さて宴もたけなわですが この辺で一丁締めとさせてもらいます!」
フレル「いよ~」
まず、儀式や柱など実に神話に忠実なお話だと感じました。百合と言えばごく現代風に聞こえますが、このあたりも神様が出てくるお話になると性別があまり関係ないことがよくあります。私も神話が好きなので、楽しく読ませていただきました。テフ子は最高です。
『狐の嫁入り』とは!😳少しのギャグをスパイスに、コンの優しさと純粋さにやられてしまいました😍そして“嫁入り”……と、最後までとても楽しくタップさせていただきました!
しかしテフ子生きてた良かった〜と思ってたら😱結局不憫かいっ!手を叩くときにはちょっと間を開けようと思います🤣🤣🤣
まさかの百合、それも真正面からの…!種族も身分も性別も関係なく当然のように寄り添う二人の関係が尊いですね🙏
ちゃんと友人として扱ってくれるんだけどナチュラルに格の違いを感じさせてくる雨神様とか、神話的な世界観も素晴らしかったです✨古代神こえ~😅
そして穢れからの笑擊のスチル…これは伝説級😂安定のオチ要員も含め、妖精使いが素晴らしい 笑
全部引っくるめて他にないピアさんワールド最高でした!😆