幾千の夜のあと、君と出会う。

Alma@Wellクリエイター

君が、会いたいひとに会えますように。(脚本)

幾千の夜のあと、君と出会う。

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〇海

〇大きい病院の廊下
師匠「はは、不摂生が祟って、車椅子生活になっちまった」
師匠「俺の夢もここまでだな」
師匠「運命の景色を見れなかったのは残念だけど、」
師匠「リクと写真を撮る日々は楽しかったよ」
師匠「今まで、ありがとうな」
リク「まだ早いだろ!」
師匠「・・・・・・リク?」
リク「俺が続きをつくるよ」
リク「俺、じゃない」
リク「俺たちの夢の」
リク「俺だって、見てみたい」
リク「前、そう言ったろ」

〇屋上の隅
リク「もう、うんざりだ!」
リク(この高さなら・・・・・・)
リク(思うように動かない身体も、)
リク(俺のことを無視するクラスメートも、)
リク(入院してから一度も見舞いにこない両親も!)
リク「捨ててやる!」
リク「こんな世界、俺から捨ててやる!」

〇屋上の隅
清掃員「なぁ」
リク「!!」
清掃員「まだ早いんじゃねーの」
リク「だ、だ、誰!?」
清掃員「坊主、いいもん見せてやるから」
清掃員「こっちこい」
リク(カメラ・・・・・・?)

〇桜並木

〇森の中

〇睡蓮の花園

〇屋上の隅
リク「すっげー! これ、お兄さんが撮ったの!」
リク「プロのカメラマン?」
清掃員「憧れてはいるけどな」
リク「そうなんだ!」
清掃員「このファインダーを通すと世界は、どこまでもキレイに見える」
清掃員「日々がどうあれ、な」
リク「──」
リク「どうして、写真を撮ってるの?」
清掃員「運命の景色に出会うためさ」
リク「ぷ!」
リク「なに、それ!」
リク「運命ってなんだよ!」

〇宇宙空間

〇屋上の隅
清掃員「自分が今ここにいて良かったと、心の底から思えて、」
清掃員「その瞬間を永遠に残したくなるような景色さ」
リク「なぁ、俺に写真の撮り方を教えてよ!」
リク「俺も、それを見てみたい!」
清掃員「いいね、坊主!」
清掃員「一緒に探すか!」
清掃員「運命の景色!」
リク「うん!」
リク「よろしく!」
リク「ししょー!」

〇大きい病院の廊下
リク「探し出して、」
リク「夢を師匠に届けるよ」

〇海辺

〇断崖絶壁
リリー「・・・・・・私たち、お互いの名前も知らない」
リリー「私、あなたのこと、なにも知らないのに」

〇海辺
リク「俺にできることはある?」

〇断崖絶壁
リリー「私こそ、あなたになにができるの?」
リリー「私を庇って怪我するなんて」
リリー「お願い、目を開けて──」
リク「──ごめん、気を失ってた」
リリー「よかった──」
リク「大丈夫だよ」
リク「俺、カメラマンなんだ」
リク「氷瀑から滑って落ちて、頭を強打したこともあるし」
リク「切り傷、打ち身なんてしょっちゅうだし」
リク「怪我は割と身近なんだ」
リク「当たりどころが悪くて、血がいっぱい出たから、」
リク「心配かけて、ごめん」
リク「オレのせいで、時間ロスして。 迷惑かけた」
リリー「そんなこと、」
リリー「──」
リリー「そんなことない!」
リリー「私、ひとりじゃ諦めてた」

〇海辺
リク「会いたいひとには、絶対に会える」
リク「君を見つけた俺みたいに」
リク「ずっと探してるんだろ」
リク「会いに行こう」
リク「探しに行こう」
リク「ひとりでは難しくても、」
リク「きっと、」
リク「ふたりなら」
リク「なんとかなるよ」

〇断崖絶壁
リリー「あなたの言葉があったから、ここまで来れた」
リク「俺、君に謝らないと」
リク「さっき、君が、海を見ているところをカメラで撮ってしまって」
リク「ごめん」
リク「初めて見たときから、気になってたんだ」

〇綺麗な港町
リク(誰かを待ってる?)

〇綺麗な港町

〇綺麗な港町

〇綺麗な港町

〇綺麗な港町
リク(また、来てる)

〇店の入口

〇美しい草原

〇商店街の飲食店

〇大樹の下

〇大樹の下
リク(見失った・・・・・・)
リク(話しを、してみたい)

〇暖炉のある小屋
バル店主「どーした、カメラマン! 失恋したような顔をして!」
リク「まだ振られてません!」
リク「・・・・・・」
リク「あの、港でひとを待ってる女性知ってます?」
リク「黒髪で、胸に白い花を飾ってる」
リク「彼女、誰を待ってるのかな?」
バル店主「?」
バル店主「誰か知ってるか?」
観光客「んー。 オレは見たことないけど」
島民「私も見たことないわねぇ」
リク(皆が皆、気に留めるわけじゃないよなぁ)
店主の息子「俺、見たことあるよ」

〇池のほとり

〇暖炉のある小屋
店主の息子「海が見える公園にいたよ」

〇池のほとり

〇湖畔の自然公園

〇湖畔の自然公園

〇池のほとり

〇湖畔の自然公園

〇池のほとり
リク「いた!」

〇海辺
  カシャ!

〇海辺

〇断崖絶壁
リク「君が綺麗・・・・・・」
リク「君が見ている景色が綺麗で」
リク(うまく言えないけど、)
リク(俺は、ずっとこの景色を見ていたいって思ったんだ)
リク(君が見ているものと同じ景色が見たいって)
リク(それを、ずっと、とっておきたくて)

〇断崖絶壁
リリー「!!」
リリー「──」

〇断崖絶壁
リク(こんな顔をさせたいわけじゃない)
リク(俺が、君の待ち人になれなら良かったのに)

〇綺麗な港町

〇断崖絶壁
リク(哀しそうな顔をしても、最後は、)
リク(笑顔になって、)
リク(“明日を信じる”姿に惹かれた)
リク(笑ってるところが見たいんだ)

〇断崖絶壁
リリー「わ、私は──」
リリー「病に臥せば、花になりたいと願い、」
リリー「命が尽きると知れば、己の手足で探し、この目で見つけることを願い、」
リリー「──」
リリー「あなたに、そんな風に想ってもらえるような存在では──」

〇海辺
リリー「たとえ、万の砂粒となっても姿を見つけることができる」

〇海辺
リリー「たとえ、風の音になっても、言葉を聞くことができる」

〇断崖絶壁
リク「そう俺に言った」
リク「君を信じたい」
リク「自分の願いを真摯に叶えようとする君の強さを美しいと思ってる」
リク「行こう! 頂上は、すぐだ!」
リク「鐘が鳴るまでがタイムリミットなんだろ!」

〇断崖絶壁
リク「つ、ついた・・・・・・」
リリー「いないわ・・・・・・」
リリー「私の元に帰ってきてくれると信じていたのに」
リリー「もう、時間・・・・・・!」
リク「まだだ、 鐘の音は終わってない!」
リク「ちゃんと信じろ!」
リク「最後まで、信じろ!」
リク「君の、大切なひとなんだろう!」

〇断崖絶壁
リリー「!!」
リリー「・・・・・・」
リリー「!!」
リリー「そうね!」
リリー「信じるわ!」
リリー「──私が花なら、」
リリー「彼は、きっと!」
  彼女は、空を見上げ、手を伸ばす。

〇断崖絶壁

〇断崖絶壁

〇黒背景

〇断崖絶壁
リュー「信じてくれて、」
リュー「ありがとう」

〇断崖絶壁
リク(ああ、ようやく瞳があった)
リク(俺を見てる)
リク(笑ってる)
リク(嬉しい)
リク「いってらっしゃい」
リリー「いってきます」

〇黒背景

〇断崖絶壁

〇断崖絶壁

〇断崖絶壁

〇断崖絶壁

〇暖炉のある小屋
バル店主「よう!」
バル店主「探しびとには、会えたのか?」
リク「ああ」
リク「もう、いないけどな」
バル店主「そうか」
バル店主「まぁ、そう気をおと・・・・・・」
バル店主「!!」
バル店主「ポケットに入ってるの、ハルの花じゃないか!」
リク「?」
バル店主「ハルって樹の花の名前さ」
バル店主「日本にもハルって言葉があるんだろ?」
バル店主「とてもいい季節だと聞いたことがある」
リク「たしかにな」
リク「一番好きな季節だよ」
バル店主「その花は、100年に一度咲いて、」
バル店主「持っているひとに、」
バル店主「幸せを運んできてくれるそうだ」
バル店主「君は、強運だなぁ!」
バル店主「君の幸せは、そばにあるよ!」

〇大樹の下
リク(そうだな)
  君に会えたことが、
  幸せだ。

〇暖炉のある小屋
リク「──そうですね」
リク(ん?)
リク(師匠から、メールだ)
リク(添付ファイル?)
リク「!!」
リク「おわ!」
  選考の結果、あなたの写真が大賞を受賞しましたことをお知らせします。
バル店主「お、いい知らせだな!」
リク「ええ、とびっきり!」

コメント

  • なんとも言えないミステリアスな女性の雰囲気に惹かれましたが、なるほど、白い花の化身でもあるんですね。師匠に救われた命が花と出会って大きな実を結んだラストにジーンとしました。人と人、人と場所が巡り合うことの不思議さ、尊さを感じさせてくれる物語でした。

  • カメラマンという仕事を文章を読みながら、より身近に感じることができました。どんな仕事や趣味でも、その情熱をもつきっかけになる過程や、それから紡いでいく物語は教務深いものですね。

  • すごく憧れる関係性だなぁ。
    それにすごくカッコいい。
    場所の運命だなんて、自分は考えた事もないです。
    ちょっと意識してみようかなって、思いました。

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