読切(脚本)
〇商店街の飲食店
三田ノエル「クリスマスパーティー?」
男友達A「そうそう。最初は聖志(きよし)とか柊(しゅう)とか」
男友達A「男だけで集まろうとしてたんだけど、」
男友達A「彼女、連れて行きたい〜! ってヤツが出てきてさ」
男友達A「だったら、女の子にも声かけて、パーティーがてらどっか旅行もありかなって話になって」
男友達A「三田(みた)さんはどう? 二宮(にのみや)さんと五条(ごじょう)さんも」
男友達A「参加しても良いって言ってくれたけど・・・・・・」
三田ノエル「そうなんだ・・・・・・楽しそうだね。ちなみに、何日かな? そのパーティー」
男友達A「24日だよ。今のところ、湖の近くのコテージか温泉が候補に上がってて・・・・・・」
三田ノエル「あ・・・・・・24日なんだ・・・・・・」
男友達A「うん。もしかして、先約があったりする?」
三田ノエル「あ、うん」
三田ノエル「ちょっとね・・・・・・」
三田ノエル「悪いけど、今回は行けないかな。また話、聞かせてね」
男友達A「うん。三田さん、来れないって聞いたら皆、残念がると思うけど、」
男友達A「楽しい話、沢山、持って帰るから楽しみにしてて」
三田ノエル「ありがとう。それじゃあ、また」
男友達A「ああ、また!」
男友達A「・・・・・・」
「やっぱり、ノエルはダメだったでしょ?」
男友達A「あ、二宮さんと五条さん。それに、ついでに柊」
男友達B「ついでは酷いんじゃない」
男友達A「はぁ、三田さんってやっぱ、つきあってるヤツとかいるのかな?」
女友達A「うーん、ノエルは特にそういう人はいないけど、毎年、断ってるね。クリスマスの予定は」
男友達A「毎年?」
女友達A「うん。確か、柊くんも去年、誘ってたよね」
男友達A「はぁ〜? お前、なんで言ってくれなかったの?」
男友達B「えー、聞かれなかったし。それに、」
男友達B「ゆっきーも断われたら、ちょっとスッキリするかと思って」
男友達A「スッキリって・・・・・・お前、人の心ないの? 人の心なし男(お)?」
男友達B「まぁ、人の心なんて忘れたからある意味、合ってるけどね。ねぇ、依舞(いぶ)ちゃん」
女友達B「もう可哀想じゃん。柊くん」
男友達B「ははは、依舞ちゃんが言うならこれくらいにしとくよ」
男友達A「お前、夜道には気をつけろよ。刺されるからってそんな心配無用か」
男友達B「そうそう。愛の力は永遠に無敵なのだ!」
女友達B「柊くん・・・・・・」
男友達A「・・・・・・永遠、ね」
女友達A「まぁ、少しだけ同情するよ」
男友達A「少しだけって?」
女友達A「うん、沢山しないってこと。それとも、沢山して欲しかったりする?」
男友達A「いやぁ、良いわ。少しで」
女友達A「そう? じゃあ、私、バイトだから行くわ。じゃあね、雪也(ゆきや)くん」
男友達A「おぉ、じゃあまた」
〇黒
その頃、Bar クラウスではー
〇ジャズバー
女性客A「えー、このお店、クリスマスは閉まるんですか?」
三田クラウス「ああ、そうだよ。クリスマスはね、昔から大事な用事があってね」
女性客A「大事な用事?」
女性客A「あ、もしかして、サンタクロースとしてどっかのパーティーに行くとか?」
三田クラウス「うーん、そうではないかな? サンタクロースはどちらかと言えば、あの子の方だよ」
女性客B「ああ、ノエルちゃんですか?」
女性客B「でも、ノエルちゃんって確か・・・・・・」
三田クラウス「ああ、少し遠くに行ってしまったけど、クリスマスだけは姿を見せてくれてね」
三田クラウス「だから、寂しくない・・・・・・」
三田クラウス「ゴホゴホゴホっ」
「大丈夫ですか?」
三田クラウス「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
三田クラウス「すまないね、大丈夫。まぁ、もう私も良い年だしね」
三田クラウス「いつお迎えが来ても不思議じゃないさ。でも・・・・・・」
三田クラウス「クリスマスまでは何としても生き延びたいけどね」
女性客B「三田さん・・・・・・」
女性客A「そんな・・・・・・」
三田クラウス「って、湿っぽくなってしまったな」
三田クラウス「しかも、別嬪さんにそんな顔をさせてしまったし、今日はいっちょ、出血大サービス!!」
三田クラウス「とっておきの酒とアレを振る舞うよ」
三田クラウス「ミサちゃんは確か、彼氏くんと上手くいくか聞きたかったんだったよね」
女性客A「ええ、って、あれ? 私、クラウスさんに話したっけ?」
三田クラウス「ふふ、まぁ、伊達に年、とってないからね。分かるさ・・・・・・」
三田クラウス「勿論、ちょっと調子が出ない時はあるけど、今日はいけそうな気がする」
三田クラウス「知鈴(ちすず)さんは最近、初めた事業が気になるんだよね」
女性客B「ええ、相変わらず、凄いですね。三田さん」
女性客A「あ、知鈴さんはクラウスさんに見てもらったことがあるんですか?」
女性客B「ええ、以前もどこで2号店を出そうかと考えていたら、」
女性客B「急がない方が良いって教えてくれたの」
女性客B「で、少し待ったら、良い物件が見つかって・・・・・・その節はお世話になりました」
三田クラウス「いやいや、どこでもそれなりに成功してたと思うけど、」
三田クラウス「1番は知鈴さんが頑張ったからと思うよ」
女性客A「えー、良いなぁ良いなぁ。クラウスさん、私も早く見てください!!」
三田クラウス「よし、じゃあ、ちょっと待っててね。飲みもの、先に作っちゃうから」
〇店の入口
女性客B「それじゃあ、三田さん。今日はご馳走様でした」
女性客A「あと、見てくれてありがとうございました」
女性客A「守護霊さんに注意されたこと、気をつけてみますね」
三田クラウス「こちらこそありがとう。ミサちゃんも知鈴さんも良いクリスマスを」
〇店の入口
〇ジャズバー
二宮聖歌「お疲れ様、クラウスさん」
三田クラウス「あぁ、今日は沢山、見たから疲れたかな? まだ君が見えるくらいだし」
二宮聖歌「そうだね。私もバイトと言っても疲れたわ」
三田クラウス「何か、飲むかいって言っても、飲めないんだったっけ・・・・・・」
二宮聖歌「うん、お酒は勿論、この世のものは何1つ、口にできない」
三田クラウス「それはあの子も同じか・・・・・・」
三田クラウス「どうして、私ではなく、あの子や君のような子が先に旅立ってしまったのだろう」
二宮聖歌「・・・・・・。それは生きていたからだよ。生きてたから死んだの」
三田クラウス「・・・・・・そうか、そうだね。生きてたら、いつか亡くなってしまうんだよね」
二宮聖歌「・・・・・・。見えたり聞こえたりするの、辛い?」
三田クラウス「うーん、分からないなぁ。昔から見えるし、聞こえるし」
三田クラウス「あ、でも、見えない時もあるし、聞こえない時もあるからな」
三田クラウス「年をとったのか。それとも、力がなくなってきているのか」
三田クラウス「しかも、身内って見えにくいんだよね。妻も見えたのは数えるくらいしかないし、」
三田クラウス「娘も2、3回。息子も1、2回・・・・・・」
三田クラウス「あの子だけは毎年クリスマスに近くにいれば見えるよ」
二宮聖歌「そう・・・・・・まぁ、あんまり会うとね。向こうに行きたくなっちゃうからね」
二宮聖歌「本来の人生を全うする前にさ」
三田クラウス「・・・・・・一杯だけ飲みたい。君はどうする?」
二宮聖歌「じゃあ、帰るね。良いクリスマスを」
三田クラウス「ああ、君も良いクリスマスを」
〇ジャズバー
〇黒
そして、12月24日ー
〇イルミネーションのある通り
〇店の入口
〇ジャズバー
〇黒
Fin.
登場人物がみんなクリスマスや冬に関連した名前なのが雰囲気があっていいですね。ノエルちゃんは名前の通りクリスマスの日にだけクラウスさんに姿がはっきり見えるというのがなんとも切ない。
クリスマスを祝うヨーロッパでは本来家族でそのハレの日に集うものなので、日本人が商業的なクリスマスを楽しむ面とクラウスさんが娘と厳かなイブを祝うことのコントラストを感じられてよかったです。
クリスマスといえば明るい話が多いかもしれませんが、必ずしも全員が幸せな日とは限りませんしね…。
でもこの物語では世間一般の幸せよりも大切な幸せがあるんだなという風に感じました。