bench(脚本)
〇テーブル席
朝比奈 きよ子(借りた傘を返しに来たのだけれど...)
店長「わざわざありがとうございます」
店長「あいにくザキちゃん休みでして...」
朝比奈 きよ子「いえ、すみませんが代わりに渡してください」
店長「優しい男でしょう~」
店長「そんなあの子が結婚するなんて まったく驚かないよ」
朝比奈 きよ子「え」
店長「ええ!まさかお客様、ご存じなかった?」
店長「わたしの口から言うもんじゃ無いのに、 てっきりつたえているのかと...」
〇公園のベンチ
朝比奈 きよ子「結婚かぁ」
朝比奈 きよ子「いい人だもん」
朝比奈 きよ子「そりゃあいい人見つかるよ...」
朝比奈 きよ子「それでも、」
朝比奈 きよ子「わたしが隣に居たかったな...」
朝比奈 きよ子「・・・」
朝比奈 きよ子「・・・うっ・・・ううっ・・・っ」
朝比奈 きよ子「・・・なんてっ、つりあわないことっ」
「どうされたんですか?」
朝比奈 きよ子「ああいえ、なんでもありません...」
朝比奈 きよ子(泣いてるとこ、知らないひとに 見られたくないっ...)
「・・・っ」
「・・・・・・僕でよければ」
「話、聞きますよ?」
きよ子が申し訳なさそうに、
うつむいた顔を上げた
目の前にいて、優しい声を
投げ掛けてくれたのは
ザキちゃんだった
朝比奈 きよ子「・・・っ」
朝比奈 きよ子「・・・ザキちゃん」
〇公園のベンチ
山崎 一「落ち着きましたか?」
朝比奈 きよ子「はい...あ、店長さんから聞きました」
朝比奈 きよ子「ご結婚、おめでとうございます」
山崎 一「いえそんな、お客様に祝ってもらうことじゃ」
朝比奈 きよ子「わたし、ザキちゃんが幸せになってくれて ほんっとうに嬉しい!」
朝比奈 きよ子「そのっだからさっきのは...嬉し泣き... してました」
山崎 一「・・・」
山崎 一「・・・そうだったんですか」
山崎 一「やっぱりあなたは、素敵な方ですね」
山崎 一「結婚すること、ほかのお客様にも伝えたら 泣き出す方もいて...」
山崎 一「お店をしばらく休まなくちゃいけないので」
山崎 一「そのことを伝えるべく、話したのですが」
山崎 一「悲しむならと、お客様(きよ子)にも 言わないほうがいいかなと、黙ってました」
山崎 一「素直に喜んでくれたのは、お客様のなかで あなただけです」
〇黒
朝比奈 きよ子(本当は泣きたい...!)
朝比奈 きよ子(心臓が苦しいよ...)
朝比奈 きよ子(けど、圧し殺さなきゃっ)
朝比奈 きよ子(我慢しなくちゃ...この気持ちは ザキちゃんには伝えられない)
わたしの片想いは、静かに終わった──