secret(脚本)
〇黒
きっかけは、ココアだった──
コーヒーを売りにしているこの店で、
たまにと思って頼んだこの店の
美味しさに感動して働き始めたけど...
注文されるのはいつも看板メニューの
コーヒー
サブのココアを頼む人は少なかった──
そんなある日、彼女が店にやってきた
〇テーブル席
朝比奈 きよ子「...ココアを1つ」
その日依頼、彼女はいつも
ココアを注文してくれたんだ
〇黒
席に着くと、本を読んでいたり、勉強したり
僕以外にココアを頼む人が、珍しくて
どんな気持ちでいるのかが気になった
でも、君は学生だから・・・
〇テーブル席
店長「それ本当?」
山崎 一「本当です」
店長「はあ~お客さんが減っちゃうじゃないか」
店長「それで育休取りたいと?」
山崎 一「はい、忙しいのは分かってるんですが」
店長「いいよいいよ、イクメンなんてまた モテちゃうね~」
店長「でも理由も無しに休まれちゃ、お客さんを 心配させるのもあれだから」
店長「ザキちゃんからお客さんに伝えてね」
山崎 一「・・・」
〇公園のベンチ
店長に自分からお客さんに伝えるように
言われたけれど
彼女にだけは言いづらくて、言えずに僕は
育休に入ってしまった
〇黒
この選択が、間違いだったなんて・・・
彼女は"嬉し泣き"と言うけれど、それでも
泣かせてしまった・・・
もう、嫌われたよね・・・?
〇テーブル席
1年後──
仕事に復帰した日、彼女は変わらず
この店のココアを頼んでくれていた
山崎 一(ありがとう──)
朝比奈 きよ子「...あの、ザキちゃん?」
山崎 一「あ、すみません、ぼーっとしてて」
山崎 一「ご注文ですか?」
朝比奈 きよ子「いえ」
朝比奈 きよ子「今日は、伝えたいことがあってきました」
山崎 一「ん?」
朝比奈 きよ子「わたし、卒業するんです」
朝比奈 きよ子「もう、高校生じゃなくなります」
山崎 一「・・・っ」
山崎 一「そうですか...卒業おめでとうございます」
山崎 一(もう、店に来てくれないってことかな)
朝比奈 きよ子「でも!このお店の近くで進路先が決まって」
朝比奈 きよ子「だから、その...またこのお店に来ても いいですか?」
山崎 一「っ!」
山崎 一「はい、もちろんです」
山崎 一「この店のココア、最高ですもんね!」
朝比奈 きよ子「はい!ココアが大好きなので ここへ来ることが、とっても 楽しみなんです」
山崎 一(本当に、ありがとう)
山崎 一(僕も大好きなココアを、 好きだといってくれて)
山崎 一(そんな君のことを、僕は...)
山崎 一(いや、この感情は言いたくても言えない)
山崎 一(だって、君は"お客様"だから)
山崎 一(失いたくない)
山崎 一(もし、君が僕のことを好きじゃなくても)
山崎 一(...せめて、"ここ"にいる今だけは)
山崎 一(好きでいてもいいですか?)