第17話 容疑(脚本)
〇ホテルの部屋
アメタ「・・・・・・という訳だ」
ムルア「どういう訳なんだよ・・・・・・」
ムルア「もしかして、あんまり進展してない?」
ムルア「ウェスタの改革派なんて、どうやって探すんだ?」
アメタ「・・・・・・」
ムルア「笑顔で誤魔化すな」
アメタ「いや実際難しいなんてもんじゃない」
アメタ「そもそも人口が百億もいるんだ」
アメタ「その上秘密結社だ」
アメタ「おまけに何の手がかりもない」
アメタ「手詰まりだよ」
ムルア「でも、こうしている間にも・・・・・・」
アメタ「・・・・・・わかってる」
〇綺麗な病室
ウカの幼児化の症状が進んでいた。
どうやら精神的な面だけでなく、肉体的にも影響が出るらしい。
報告によれば、筋力や免疫機能の低下、それに伴う合併症なども確認されていた。
快復したとしても、何らかの後遺症が残ると考えられている。
〇ホテルの部屋
アメタ「一旦、日本に戻ろうかとも考えている」
アメタ「それでどうにかなるとは思えないけど・・・・・・」
アメタ「済まない。あっちこっち連れ回して」
ムルア「別に私は構わない」
ウリコ「ご飯ですよ〜」
ムルア「お! 今日はパスタかぁ」
アメタ「・・・・・・」
ムルア「食えよ。腹が減ってたら良い考えも浮かばないぞ」
ウリコ「そうだよ。おじさん」
ウリコ「元気出ないよ?」
アメタ「・・・・・・」
そうかも知れない。
思い込みで幼児化するなら、弱気は厳禁だ。
アメタ「じゃ、頂こうかな・・・・・・」
ウリコ「はい。めしあがれ」
アメタ「何だよ。タイミング悪いな」
アメタ「はい?」
???「アメタ・オオゲツさんですね?」
???「少々お話をお聞かせ願いますか?」
アメタ「何の話です?」
???「アラムスタンでの一件に関して、不明な点があります」
アメタ(拙いな・・・・・・)
派手な戦闘をしたのがバレたのか。
それとも食材の不正入手か。
もしくは武器の密輸か。
証拠は残していない筈だが、身に覚えがあり過ぎる。
アメタ(誤魔化すしかない)
アメタ「どうぞ・・・・・・」
????「アメタ・オオゲツ!」
????「ハイヌヴェレ博士殺害の容疑で逮捕する!」
アメタ「なっ!?」
アメタ「どういう事だ!」
????「それは、これから詳しく聞かせてもらう」
駄目だ。ウリコのいる前で暴れる訳にはいかない。
ウリコ「おじさん・・・・・・」
アメタ「済まないムルア、ウリコを頼む・・・・・・」
ムルア「あ、ああ・・・・・・」
〇取調室
アメタ「だから僕はやってない」
アメタ「何かの間違いだ」
警察官「罪を犯した奴はみんなそう言うんだよ」
アメタ(まったく、どうなってるんだ・・・・・・)
僕に掛けたれた容疑は以下の通り。
先ずアラムスタンの一件に至るまでに、各国から武器、弾薬、薬品などの横領、及び横流し。
それらを食糧監察官の立場を利用し、第三者から食糧を不正に入手していた事。
更に確固たる証拠もなくPMSCsに対し、強引な捜査を行った事。
ARFと共に戦闘を行った事。
アメタ(事実だもんなぁ・・・・・・)
アメタ「証拠はあるのか?」
警察官「タレ込みがあってね。物的な証拠はないんだ」
アメタ「なら拘束する権利なんてないじゃないか」
アメタ「任意になる筈だ」
警察官「ハイヌヴェレ博士殺害の件を忘れてもらっては困る」
警察官「アラムスタンでの戦闘も含めて、我々は君を危険な凶悪人物だと判断している」
警察官「よって緊急逮捕した」
アメタ(不正取引や戦闘は認めるが・・・・・・)
アメタ「ハイヌヴェレ博士が殺害されたというのは何時だ?」
警察官「それはお前が良く知っているだろう?」
アメタ「司法解剖の結果は? 死因は?」
警察官「教える必要はない」
アメタ(駄目だ。話にならない)
アメタ(始めから僕を犯人だと決めつけている)
アメタ「タレ込みっていうのは?」
警察官「或る筋からの情報だ」
アメタ「信用に足るっていうのか?」
警察官「だからこうして拘束している」
アメタ(タレ込み・・・・・・ 或る筋からの情報・・・・・・)
アメタ(僕の行動を把握していている人物・・・・・・)
アメタ(あいつの仕業か?)
アメタ「ケレス代表は何と言っている?」
警察官「伝言を預かっている」
警察官「『アメタ壱級監察官。今回の件はFAOとしても個人としても非常に遺憾である』」
警察官「『権限の剥奪は免れないが、君の実力とこれまでの功績を鑑みて、懲戒免職までには至らないと判断する』」
警察官「『検察にも証拠不十分で不起訴とし、代わりに食育を経て態度を改めた後、現場への早期復帰を切に願う』」
警察官「何だと!? 不起訴?」
警察官「手柄を横取りするつもりか?」
アメタ(そんな事はどうでもいい・・・・・・)
アメタ(食育? だって・・・・・・)
食育。
具体的な内容までは知らないが、そのセラピーを受けた者は食糧に対して過剰なまでの感情を抱くという。
食餌を摂取しても胃が受け付けなくなり、すべてを吐き出す様になる。
いってみれば強制的に飢渇至上主義者を産み出す様なものだ。
アメタ「待ってくれ! 司法取引だ!」
アメタ「罪を認めるから、食育だけは勘弁してくれ!」
食育だけは何としてでも避けたい。
やっと母さんから開放されたっていうのに、また食への恨みを募させなきゃいけないなんて。
アメタ「あんた達だって実績は欲しいだろう?」
アメタ「裁判所に掛け合って、起訴状を取るべきだ!」
食育。
それは人生最大の楽しみとの決別だ。
死と限りなく同義。
僕は快楽主義者だ。
食事が好きだ。
美味い物を食べる為に産まれてきた。
警察官「我々としてもそうしたい」
警察官「だが国際機関からの意見ともなると聞かない訳にもいかない」
警察官「それに前科なんてついたら悲しむ人だっているだろう?」
アメタ「くっ・・・・・・」
警察官「ここは上司の温情に甘えて、大人しくセラピーを受けた方が良いんじゃないか?」
裁判になれば身柄は拘束される。その間、幼児退行の調査なんて出来ないだろう。
実刑判決でも出れば刑務所で数年過ごす羽目になる。
対しての食育なら長くても一週間程度で済む。
だからといって進んでセラピーを受けようとは思わない。
アメタ(くそっ・・・・・・)
アメタ(ウカ・・・・・・)
謎に包まれた「食育」…!!気になります😆
食育だけは…食育だけは勘弁したって!
アメタから食を奪わないで!
ハイヌはん、ほんまに死んだんかいな…
スサノオに殺されたか?(別の神話)
えっ、ハイヌヴェレ博士……殺されたの?😱
ウカも危機的状況で……不穏しかないんですけど😭
せめてパスタ食べてから来て欲しかった!このまま食育突入なの~!?