オーナメント~聖夜に響く愛の歌~(脚本)
〇黒
目が覚めると、
今年も彼が
微笑んでいた。
〇クリスマス仕様のリビング
シュテルン「やあ、久しぶり」
プッぺ「久しぶり」
プッぺ「う────んっ、」
プッぺ「もうクリスマスの時期かぁ」
シュテルン「うん。 だから今年も会いに来たよ」
彼はシュテルン。
クリスマスの時期にだけ会える。
なぜこの時期だけかというと・・・
わたしはそれ以外、寝てるから。
プッぺ「・・・あれ?」
シュテルン「どうしたの?」
プッぺ「今年のツリー、飾りつけのセンス悪くない?」
シュテルン「ぶはっ、やっぱり?」
シュテルン「今年はパパがやったんだよ」
プッぺ「ちょっとー。なんでママじゃないの?」
シュテルン「ママは、入院」
プッぺ「えっ?」
シュテルン「でも大丈夫、深刻な理由ではないから」
プッぺ「本当に?心配ない?」
シュテルン「うん、クリスマスには帰ってくる予定だよ」
プッぺ「そう、良かった」
シュテルン「ねえプッぺ、遊ぼうよ。 パパも仕事でいないし」
プッぺ「いいけどぉ~、 ちゃんとレディには優しくするのよ?」
シュテルン「レディ?」
プッぺ「レディでしょ?」
シュテルン「・・・」
プッぺ「返事しろや」
シュテルン「ハイ」
プッぺ「何して遊ぶ?」
シュテルン「歌でゲームしない?」
シュテルン「クリスマスソングの好きなところまで交互に歌って、続きをスムーズに歌えなかったら負け!」
プッぺ「よーし、じゃあ、最初はJingle Bellsね!」
プッぺ「Dashing through the snow (雪の中を駆けて行く)」
プッぺ「In a one-horse open sleigh, (一頭の馬が引いているソリ)」
プッぺ「ハイ!」
シュテルン「Over the fields we go, (広がる雪原を行き)」
シュテルン「ハイ!」
プッぺ「あ、えっと」
シュテルン「僕の勝ち!」
プッぺ「むぅー、もう一回!」
〇クリスマス仕様のリビング
プッぺ「今日もやるよ!」
シュテルン「よーし!」
〇クリスマス仕様のリビング
プッぺ「ハイ!」
シュテルン「えっ」
シュテルン「プッぺ、わざと眠くなるように歌ったでしょ」
プッぺ「作戦、作戦♪」
シュテルン「くそー、僕も何か考えてやる!」
プッぺ「ほほ、受けて立つぞよ」
〇クリスマス仕様のリビング
プッぺ「Silent night Holy night (静かな夜 聖なる夜)」
シュテルン「あ、その歌好き」
「All is calm, all is bright (全てが穏やかで、全てが輝く)」
プッぺ「まだわたしの番だよ」
シュテルン「一緒に歌おうよ」
プッぺ「別にいいけど・・・」
「Round yon virgin mother and child (純潔なる母と子を包む)」
わたしの声に応えてくれる
君は友達
〇黒
今は君がわたしのすべて
〇クリスマス仕様のリビング
シュテルン「今日はクリスマスだね」
プッぺ「うん、クリスマスだね」
シュテルン「ねえ、プッぺ」
シュテルン「僕、今年で終わりにしようと思うんだ」
プッぺ「えっ」
シュテルン「来年はもう、ここでツリーを見ない」
プッぺ「どうして?」
シュテルン「ママはもう、僕がいなくても大丈夫だから」
シュテルン「お帰り、パパ、ママ!」
パパ「ただいま!」
ママ「真帆ちゃん、ここがおうちですよ~」
ああ・・・
そういうことか
〇白
〇クリスマス仕様のリビング
ママ「・・・あ」
ママ「血が、止まらないの、どうしよう」
〇クリスマス仕様のリビング
ママ「・・・男の子だったみたい」
ママ「クリスマス、一緒に祝いたかった・・・!」
〇クリスマス仕様のリビング
シュテルン「・・・」
プッぺ「泣いてるの?」
シュテルン「ママが泣いてるから」
シュテルン「君には僕が見えるんだね」
プッぺ「あなたにはわたしの声が聞こえるのね」
プッぺ「・・・」
プッぺ「Silent night Holy night・・・」
シュテルン「歌、好きなの?」
プッぺ「うん」
シュテルン「僕にも教えて」
〇クリスマス仕様のリビング
シュテルン「Holy infant, so tender and mild, (聖なる幼子は優しく穏やかに)」
シュテルン「Sleep in heavenly peace (天国のような平穏の中で眠る)」
シュテルン「Sleep in heavenly peace・・・」
〇白
〇クリスマス仕様のリビング
シュテルン「・・・真帆ちゃんか」
シュテルン「無事に生まれてくれてありがとう」
シュテルン「もう、心配ないよね。ママ」
シュテルン「クリスマスにも笑えるね!」
パパ「ちょっと荷物を置いてくる」
ママ「はーい」
ママ「ほら真帆ちゃん、見て。クリスマスツリーよ」
ママ「・・・って、パパ、飾りつけセンスない!」
ママ「まぁいいか」
ママ「あのね、真帆ちゃん。 クリスマスは特別なのよ」
ママ「真帆ちゃんにはね、お兄ちゃんがいたの」
ママ「生まれる前、クリスマスにいなくなったけど」
ママ「お兄ちゃんの分まで、たくさん笑ってね」
真帆「ホエアァ、ホエアァ」
ママ「うんうん、もちろん、泣いてもいいのよ」
シュテルン「・・・」
シュテルン「ママ、大好き」
シュテルン「僕のことは忘れていいよ」
シュテルン「僕の可愛い妹」
シュテルン「ママをたくさん、幸せにしてあげて」
ママ「あ、笑っ・・・」
ママ「新生児微笑か」
ママ「でも、可愛い」
ママ「天使のプレゼントみたい・・・」
シュテルン「・・・」
シュテルン「プッぺ」
プッぺ「何?」
シュテルン「この子と友達になってあげてね」
プッぺ「大事にしてくれるならね」
シュテルン「君のことを噛んでなめても、嫌いにならないで」
プッぺ「壊されたら、あんたに文句言いに行くわ」
シュテルン「いいよ。待ってる」
〇黒
バイバイ、シュテルン
〇イルミネーションのある通り
友達「あっ、真帆」
真帆「何?」
友達「真帆が鞄につけてるお人形、可愛いね」
友達「ほんとだ、アンティークぽい」
友達「ケースまでつけて、 よっぽどお気に入りなんだね」
真帆「えへへ」
真帆「元はクリスマスツリーのオーナメントだったの」
真帆「でも、可愛いから気に入っちゃって」
〇幻想
ごめんね、シュテルン。
わたし大事にされちゃってるの。
当分あんたのところに行けそうにないわ。
でもたくさんお土産話ができそうよ
その時まではわたし、
歌の続きを誰にも渡さないから
〇幻想空間
また、遊ぼう。
〇イルミネーションのある通り
プッぺ「Silent night Holy night (静かな夜 聖なる夜)」
プッぺ「All is calm, all is bright (全てが穏やかで、全てが輝く)」
〇クリスマス仕様のリビング
Round yon virgin mother and child
(純潔なる母と子を包む)
Holy infant, so tender and mild,
(聖なる幼子は優しく穏やかに)
〇幻想空間
Sleep in heavenly peace
(天国のような平穏の中で眠る)
〇イルミネーションのある通り
プッぺ「Sleep in heavenly peace (安らかに眠る)」
Merry Christmas!
天は三物を与えるのですね!
絵と執筆の才能以外に歌もお上手とは!! 美しい歌声でした。
最初がサイレントでラストに歌声など、演出力も凄い(四物か)。
シュテルンの名前からして、名を授かる前に天に召されたと思うと
美しく悲しい名前ですね…泣けます😭
創作への真摯な姿勢を見習って行きたいと思いました。
とても良いお話でした。泣きました。
読めてよかったです、ありがとうございます。
うおー!!!!!!!(´;ω;`)(´;ω;`)(´;ω;`)💦これは泣けます!!!泣いてますー!!!(´;ω;`)
凄く心に響くお話でした・・・最初の楽しげなサイレントナイトからの、最後のサイレントナイトがもう・・・っ!!!!!!!(´;ω;`)💦
そして、最後のコメントも読んでもうますます涙が止まりませんっ!!😭
もう本当に、きっとこうやって見守ってくれてたと思います・・・