ぼくらの就職活動日記

大杉たま

エピソード17(脚本)

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〇コンビニの店内
店員「あれ、いつもよりずいぶん多いっすね。 多いってか、お菓子」
真田紅音「旅先でどう考えてもいらないお土産買ったりするでしょう、その感じです」
店員「は?」
若山柿之介「紅音さ、紅音さ、この『ポテトチップス 関西風うどん味』は、中にうどんが入ってるだか、気になるべ!」
店員「ああ、なるほどー」
真田紅音「無限に買われるので、早くお会計してください」
店員「でも、友達いたんすね」
真田紅音「は?」
店員「いや、サーセン、なんでもないっす」
  紅音、柿之介を見る。
  柿之介、さらにお菓子をいくつも手にしている。
真田紅音「今日会ったばかりなんだけどね」
店員「お会計、5690円っす」
真田紅音「え」
店員「す」
  じっと見合う紅音と店員。

〇白いバスルーム
  湯船につかっている柿之介。
「ああー、ううー、おおー」

〇一階の廊下
真田紅音「着替え、僕の置いといたからー」
「んあー、おおー」
真田紅音「おっさんかよ。てか、動物か」
真田正志「おもしろいやつだな」
真田紅音「・・・・・・」
真田正志「仲いいのか」
真田紅音「今日知り合った」
真田正志「それで家に泊めるのか。すごいな。なんでだ」
真田紅音「さあ、きまぐれだよ。・・・ただ」
  風呂場からは、柿之介の気持ちよさそうな声が聞こえる。
真田紅音「嘘のない人間といるのは楽だ」
真田正志「俺たち本物の家族は嘘ばっかしってわけか」
  部屋に戻ろうとする紅音。
真田正志「エリートピア受けてるんだな」
真田紅音「・・・・・・」
真田紅音「聞いてたとは思わなかった」
真田正志「いま、何次選考だ」
真田紅音「今日、一次があった。通ったよ」
真田正志「そうか。相変わらず変な選考なんだろうな」
真田紅音「兄貴はどこまで進んだんだっけ」
真田正志「俺が果し状選考で落ちて、太一は最終までいったんだったかな」
真田正志「太一はどうせ弁護士になるから、腕試しぐらいだったけどな。 俺もすぐにスペインの在外公館に受かったから」
真田紅音「じゃあ僕がエリートピア通ったら、僕が一番すごい人間だね」
真田正志「・・・お前、それでエリートピア受けてるのか?」
真田紅音「・・・・・・」
真田正志「やめとけよ、そんなんで受けても、なんにもなんないぞ」
真田紅音「落ちこぼれてから言えよ」
真田正志「・・・・・・」
真田紅音「落ちこぼれ扱いされて、家族の祝い事の度に飯抜きにされてからいえよ、そういうことは」
真田正志「紅音・・・」
真田紅音「あんたたちは間違えてる、間違ってたって思わせなきゃダメなんだよ」
真田紅音「そのためには、エリートピアに受かるしかないんだよ」
真田正志「もし受かんなかったら?」
「・・・・・・」
「ふううおおおー」
  風呂場から柿之介の声が上がる。
真田紅音「・・・兄貴、明日国家公務員試験の結果発表だっけ?」
真田正志「・・・ああ」
真田紅音「人の心配より自分の心配しなよ」
真田正志「・・・そうだな」
真田紅音「どうせ受かるから、兄貴にはそんな心配不要か」
真田正志「紅音・・・」
  困ったように、ポリポリと頭を掻く正志。

〇本棚のある部屋
若山柿之介「はー、東京の空も、案外星が見えるもんだべな」
  紅音が枕元にあるスイッチに手を伸ばす。
若山柿之介「なんだべ、天井が透けるんだべか!」
真田紅音「ホームスターだよ、偽物の空」
若山柿之介「おもっしょいのー、偽物でもきれーだべ」
真田紅音「・・・偽物はやだよ、本物がいい」
  ベッドに横になる紅音。
  柿之介は床の寝袋に入る。
真田紅音「長い一日だった」
若山柿之介「色々あって楽しかったべ」
真田紅音「これから、なんだよな、選考は」
若山柿之介「大丈夫だ、瑚白さも、一茶さも一緒だから、なんにも心配いらねーべ」
真田紅音「・・・瑚白と一茶」

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