とある青年の世界見聞録

霧ヶ原 悠

運命の席は夢の中を転がる−ケース4.機械人形の場合(脚本)

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〇レストランの個室
  白い皮手袋をはめた無貌の店員が一礼する。
店員「いらっしゃいませ。当店にご来店いただき、誠にありがとうございます。人間の男性一名様ご案内です」
  無貌の店員、濃紺のカードを渡す。
店員「すぐの相席となります。お席をご用意させていただきますので、こちらの伝票を持って少々お待ちください」
  ドリンクバーに最も近い席に案内される。
店員「失礼します。こちらのお席へどうぞ。それではただ今から相席開始となります」
  蒸気を吹き出す機械人形が座っていた。
機械人形「naym meod.」
機械人形「Priyatno s vami poznakomitjsya.」
機械人形「khairo poly.」
機械人形「ハジメマシテ」
機械人形「了承ヲ確認。言語[人間]登録完了。会話ヲ開始シマス」
機械人形「ハジメマシテ。 私ハ蒸気ト浪漫ノ島トモ称サレル「エストアム」ノ「パンク99号」デス」
機械人形「性別[男]。出身地[メトロポリス:春陽ト野花ノ町]登録完了」
機械人形「貴方ハ普段何ヲシテイマスカ」
機械人形「回答データ正常。 職業[旅人]。目的[人探シ]登録完了」
機械人形「誰ヲ探シテイマスカ」
機械人形「質問ヲ受理。 記憶領域ヘアクセス。検索開始」
機械人形「・・・・・・」
機械人形「検索条件不足ニツキ一時停止。他ニ個人ヲ特定デキル情報ハアリマセンカ」
機械人形「追加回答データナシ」
機械人形「検索終了。 過去百年ニワタリ、「エストアム」ノ住人及ビ「エストアム」ヘノ来訪者ニ該当スルデータハアリマセン」
機械人形「質問ヲ受理。 「エストアム」ハ西ノ海ニ浮カブ離レ小島デス」
機械人形「蒸気ノ煙デ空ハ濁リ、歯車ノ軋ム音ガ昼夜絶エ間ナク響キ、強イ油ノ匂イガシテイマス。人間ハ体調ヲ崩ス恐レガアル所デス」
機械人形「『イツカ行ッテミタイ』『イツカ行ッテミタイ』『イツカ行ッテミタイ』『イツカ行ッテミタイ』『イツカ行ッテミタイ』『イツカイ」
機械人形「・・・・・・」
機械人形「特定機密情報ニ抵触スル恐レアリ。エラー回避」
機械人形「貴方ニ家族ハイマスカ?」
機械人形「回答データ正常。両親ト兄夫婦デスネ」
機械人形「質問ヲ受理。 家族ノ話題ハ、私タチガ共有デキル事柄ダカラデス」
機械人形「ココハ様々ナ種族ガ一同ニ会シ、交流スル場所デス」
機械人形「見知ラヌ者同士ハ、共通点ノアル話題カラ会話ヲ繋ゲルノガ最善ノ方法デス」
機械人形「・・・ハイ、ドウゾイッテラッシャイ」
機械人形「人間ニモ飲メソウナオ酒ナラ、「翠ノ薬酒」ガアリマシタヨ」
  無貌の店員、一礼して現れる。
店員「失礼します。まだ相席されていない方もいらっしゃいますので、機械人形のお客様、お席の移動をお願いします」
機械人形「要請ヲ了承。 今日ハ、アリガトウゴザイマシタ」
店員「すぐの相席となりますので、人間のお客様、できるだけお席からお立ちにならずにお待ちください」
  機械人形、無貌の店員に連れられて退席。

次のエピソード:運命の席は夢の中を転がる−ケース5.《黄昏を傷つける獰猛なるもの》の場合

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