絵本としおり -Side:E&K

落花亭

第二話(エリカ編)(脚本)

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〇明るいリビング
  ──大学を卒業し
  本命の企業に入社した私は
  自分の能力を認められたくて
  恋愛は二の次、三の次だった
  たまの休日は
  友人と買い物に行ったり
  温泉に行ったり
  あえてシオリを誘わなかったのは
  恋人がいるからという理由だった
  今思うと面白くなかったんだと思う
  5年、6年と時が過ぎ
  友人の結婚ラッシュに焦った私は
  マッチングアプリで婚活を始めた
  お互いに一目惚れだった
  とんとん拍子で事が進み、寿退社
  望んでいた結婚生活が始まった
  待望の第一子も産まれ
  私は馬鹿みたいに浮かれていた
  この幸福感を誰かに伝えたかった
エリカ「そうだ! 久しぶりに シオリにでも電話してみるかな!」
エリカ「シオリ、久しぶり〜! 実は私、仕事辞めて結婚したの!」
  この時、シオリが仕事のことで
  悩んでいるなんて知らなかった
エリカ「一人目も産まれてさあ 旦那と二人目作ろうかって──」
  この時、シオリが恋人とのことで
  悩んでいるなんて知らなかった
  いや、知ろうともしなかった
エリカ「──うん、オーケー! 近々、ランチに行こう! 子どもの面倒は親に頼んでみる♪」
エリカ「はあ、久々すぎて楽しかった! 持つべき者は親友だよねえ」

〇墓石
エリカ「我ながら「何が親友だ」って思います 人の気持ちも考えられないくせに」
アユム「・・・俺、男だから女特有の事情? って分からないんですけど」
アユム「それでもやっぱり姉ちゃんにも 悪いところはあるよな、って思います」
アユム「堂々と自分を出しゃあよかったのに」
アユム「母さんが挨拶で「優しい子だった」 って言ってたけど俺はそうは思わない」
アユム「本当に優しかったら こんなに人を悲しませたり、しない」
カケル「・・・こんなこと俺が言う資格はないけど シオリは優しい子だったと思うよ」
エリカ「うん。私たちがその優しさに甘えて 我慢させちゃったのかもしれない」
エリカ「・・・いくら後悔したところで シオリが戻ってくる訳じゃないし シオリに許してもらえる訳でもない」
エリカ「私に出来ることは 同じ過ちを繰り返さない──それだけ」
カケル「・・・同じく」
アユム「・・・はぁ」

〇空
エリカ「晴れましたね。空」
エリカ「二人ともびちゃびちゃ 早く着替えないと風邪ひきますよ」
アユム「──くしゅ! もうひいてるかも」
アユム「今日はすいませんでした お先に失礼します」
カケル「・・・俺も帰るかな」
エリカ「カケルさん」
カケル「はい?」
エリカ「シオリのこと、まだ好きですか?」
カケル「・・・大学生の頃 告白したのは俺からなんです 簡単に嫌いになるはずがないですよ」
エリカ「──そうですか」
カケル「じゃあお先に」

〇墓石
エリカ「──シオリ」
エリカ「今までシオリの気持ちに 気付いてあげられなくてごめんね」
エリカ「・・・ありがとう」
エリカ「こんなことを言ったら また怒られるかもしれないけど」
エリカ「もし、次の子が女の子だったら シオリの〈オリ〉を貰っていいかな?」

〇空
  エリカの〈カ〉と
  シオリの〈オリ〉で・・・
  〈カオリ〉

次のエピソード:第一話(エリカ+カケル編)

コメント

  • エリカさんの想いがダイレクトに伝わってきますね。
    人間、使える時間もエネルギーも有限なので、注力すべきところとそれ以外を区別しなければならない場面もありますよね、特に社会人となったら。シオリさんの優しさに甘えていたというのは本心からの後悔でしょうね。様々な後悔や自責の念を受け止めながら前を向こうとするエリカさんに美しさを感じます!

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