とある世界の物語

ビスマス工房

Story#0000:平凡な異世界人の僕は、最強の魔法少女の君と(脚本)

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〇教室
  それは、秋風の吹く日だった。
神田流花「ねえ玲君、異世界って興味ない?」
  ひょんなことから知り合った神田春輝は、保健室登校の生徒だった。
森玲「無い。一人で行きたいの?それとも付いてきてって言ってるの?」
神田流花「鈍いね玲君、付いてきてって言ってるの」
  奴は異世界に非常に興味があるらしく、時々異世界に行く方法を探し出しては僕を誘った。
神田流花「これなら行けそうでしょ?簡単そうだし」
森玲「そうかな?危なくない?」
神田流花「大丈夫だよ。行こう?」
  奴が何を望んでいたのかは分からない。でも、こんな世界だったのだろうか。

〇病室
  僕が目を覚ましたのは、ベッドとトイレと戸棚だけの殺風景な部屋だった。
アキラ・ロビンソン「あれ、ここは・・・・・・」
シーナ・ディラン「目は覚めたかな?」
アキラ・ロビンソン「えっと、あなたは?」
シーナ・ディラン「私は死神のシーナだ。君を見守りに来た」
アキラ・ロビンソン「死神って、人を守ったりもするんですか?」
シーナ・ディラン「先ずは名を名乗れ。それが礼儀だ」
  不思議な人だ。そう思いながら名を名乗る。
アキラ・ロビンソン「僕はアキラです」
シーナ・ディラン「姓は?」
  そう言われて気付く。僕は自分の名字を覚えていない。シーナと名乗った女性の顔をしばらく見ていると、彼女は唐突に笑い出した。
シーナ・ディラン「君に姓は無い。この世界に紛れ込んだのだからな」
  底意地の悪い人だ。僕は顔をしかめた。
  その時、扉をノックする音が響いた。

〇病室
  ドアをノックする音が、病室内に響く。
アキラ・ロビンソン「まずい!シーナさん、隠れて!」
  僕は何故かシーナさんの姿を人に見られてはいけないと思った。だが、シーナさんは平然としている。
シーナ・ディラン「心配するな。この世界の者は皆、気にせんよ」
  扉は静かに開く。
  重たげに扉を開いたのは、真面目そうな女の人だった。
ナタリア・ラピス「初めまして、アキラくん。私は、エージェント梨と言います」
アキラ・ロビンソン「初めまして。えーと、この人は」
ナタリア・ラピス「分かっているわ。彼女は死神」
  その言葉に、僕は開いた口が塞がらなかった。
アキラ・ロビンソン「見えて、いるんですか?」
ナタリア・ラピス「ええ。この世界では皆、彼女のような存在には慣れているわ」
  不思議の国にでも来てしまったのだろうか。その後、エージェント梨さんからはいくつか質問されたが、何と答えたのか覚えていない

〇豪華なリビングダイニング
  中庭に植えられた桜の木には、人間のような存在がいる。
  しかし、その背中には蝶の羽が生えていて、人間ではないのは明らかだ。
  僕はデイルームのソファーに座り込み、この世界のことを考えていた。
シーナ・ディラン「どうした?何か深刻な顔をしているが」
アキラ・ロビンソン「この世界って、何なんですか?」
  そう尋ねると、シーナさんは少し難しい顔をして、答えた。
シーナ・ディラン「その質問に答えるのは、難しい。地球や宇宙が何故、どのように出来たのかを話さねばならない」
アキラ・ロビンソン「知りたいです。教えてくれますか?」
  そう尋ねると、シーナさんは静かに、一人の少女を指差した。
シーナ・ディラン「彼女に聞くと良い。何でも知っている」
  そう言って、シーナさんは姿を消した。この子に聞けば良いのかな。そう思い、僕は彼女に話し掛けた。
アキラ・ロビンソン「ねえ、君」
  話し掛けると彼女はにこりと微笑んだ。
エマ・レイ「この世界のこと?知るのは楽しいよ」
  花のようなその笑顔に、いつの間にか僕は引き込まれていた。

〇病室
  いつの間にか夕食の時間になっていた。
アキラ・ロビンソン「良い子だったな、エマちゃん」
シーナ・ディラン「お帰り、アキラ君。友は良いものだろう?」
  部屋に入って真っ先に、ベッドに横たわるシーナさんの笑顔が目に入る。
アキラ・ロビンソン「シーナさん。もしかして引き合わせたの?」
シーナ・ディラン「当たり前だ。面白いからな」
シーナ・ディラン「もうじき夕食だろう?手を洗ってきたまえ」
  やはりよく分からない人だ。

〇病室
  夕食後。
アキラ・ロビンソン「あれ?何か入ってる」
  着ていた服の胸ポケットに、小さな鍵が入っていた。
シーナ・ディラン「ベールマリーの鍵だな。何処にでも行くことが出来る」
アキラ・ロビンソン「何処にでも、って何処に?」
シーナ・ディラン「望む場所さ。心の中で思い描いた場所」
  よく分からないが、持っていた方が良さそうだ。

〇病室
  夕方の日が沈む頃は、いつも憂鬱。頭の中を掻き回すようなノイズに侵食されていく。
エマ・レイ「う、うああああ」
  無数の声に、心を飲み込まれる。ざわざわと世界が騒ぎ出すのが分かった。
エマ・レイ「大丈夫、大丈夫、大丈夫」
  本当は、大丈夫なんかじゃない。世界も自分も。
エマ・レイ「助けて、誰か、誰か」
  その声に反応はなかった。
  だが、壁に扉が現れ、昼間会った人が部屋に入ってきた。
アキラ・ロビンソン「大丈夫?心配して、見に来ちゃった」
  世界のざわめきが遠退いていく。
エマ・レイ「え、あ、はい。大丈夫です」
アキラ・ロビンソン「良かった」
アキラ・ロビンソン「じゃあ、帰るね」
  そう言って、彼は姿を消した。しんと静まり返った部屋の中は、不思議と落ち着く空間になっていた。

〇豪華なリビングダイニング
シーナ・ディラン「おはよう。よく眠れたかな」
  いつものシーナさんの笑顔だ。僕は昨日の夢の話をする。
アキラ・ロビンソン「今日は不思議な夢を見たよ。世界があの子を取り囲んでざわめいてたから、近寄ってみたらざわめきが収まったんだ」
  元いた世界の夢は見なかった。
シーナ・ディラン「夢の世界の構造は、精神構造体が関わっている。意思、自我、存在の三つだ」
  いつものシーナさんだ。変わっていない。
エマ・レイ「おはようございます」
シーナ・ディラン「本人ご登場だな」
  僕はシーナさんを小突いた。
ナタリア・ラピス「おはよう二人とも。ちょうど話したいことがあったから、良かったわ」
  話したいことがある、とはどういう事だろう。
ナタリア・ラピス「あなたたちは、お互いの事はどう思ってる?」
エマ・レイ「一緒にいて、とても安心する人です」
アキラ・ロビンソン「僕も。この子と話してると楽しい」
ナタリア・ラピス「そう。じゃあ話すわね」
ナタリア・ラピス「アキラ君。あなたはレイ家の婿養子になるわ。エマちゃんとは夫婦になる」
  いきなり、何を言い出すかと思えば。でも、悪い気はしなかった。
  二人の首筋に錠前のようなものが付いていることに気付いたが、
  二人にはそれを、伝えなかった。

〇魔法陣2
ナタリア・ラピス「アキラ君。エマちゃんはね、魔法使いなの。人類最後のね」
ナタリア・ラピス「でも、彼女の力は強すぎて、あらゆるものと心を通わせてしまう」
ナタリア・ラピス「昔は、発作的に能力暴走させて、沢山の人を傷付けてきたわ」
ナタリア・ラピス「昨日も、能力暴走しそうになったの。それを、あなたは止めることが出来た」
アキラ・ロビンソン「何か頼みたいことがあるみたいですね」
ナタリア・ラピス「ええ。今日から、彼女のお目付け役になってちょうだい」
ナタリア・ラピス「あなたは異世界から来ただけで、暴走するような能力も持たない」
ナタリア・ラピス「だから、あなたはこの条件を飲んでもらう。その代わり、あなたは自由の身になるわ」
  ここから出られる。僕は答えた。
アキラ・ロビンソン「はい」

〇立派な洋館
  家に帰る日がきた。僕の名字はレイ家の人たちがくれた。おずおずと車から降りるエマを、手を差し出してエスコートする。
三田ことね「初めまして、アキラ・ロビンソン・レイ。私は家政婦の三田です」
  三田さんという名前のその人は、色々なことを教えてくれた。
三田ことね「今はマレウスさまだけなのですが、お会いになりますか?」
  エマの両親はあまり家に帰ってこないのだという。
三田ことね「賑やかになりますね!」
  こうして僕はレイ家の一員になった。

次のエピソード:Story#0001:新しき門出に幸いあれ

コメント

  • 目が覚めて全く違う世界にいたら戸惑うだろう。
    混乱しても納得する。なのにアキラくんは帰りたいともいわず受け止めた。新しい環境で幸せに

  • 展開がみるみるうちに様変わりして、展開に追いつくのに必死でした笑
    死神のイメージって命を貰っていきそうなイメージですが、守ってくれる、世話を焼いてくれるというイメージがなかったので真新しい気持ちで読むことができました!

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