最期のアネモネ

夕菜

アネモネ(脚本)

最期のアネモネ

夕菜

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〇大樹の下
ココット「ふんふ〜ん♪」
ミミ「お、お嬢様!」
ココット「痛いのだわ!」
ミミ「お怪我はございませんか? お嬢様」
ココット「ええ、平気よ」
ミミ「もう・・・ですから走っては危ないといつも申し上げているではないですか」
ココット「今のは私が悪いわけじゃないわ。 何か大きい物に躓いたんだもの」
ミミ「え?」
リアン「うーん・・・」
ミミ「・・・て、人間じゃないですか! どうしてここに・・・」
ココット「ねぇあなた、大丈夫?」
リアン「うーん・・・ あれ、俺、寝てた・・・?」
ココット「こんなところで寝ていると風邪をひきますわよ」
リアン「はは、なんだよその馬鹿丁寧な言葉は。 お嬢様かよ」
ミミ「んな・・・! お嬢様に対してなんて失礼な! これだから平民は!」
ココット「おやめなさいミミ」
ミミ「ですが、お嬢様・・・!」
リアン「え、本当にお嬢様?」
ミミ「その通りですわ。 あなたのような平民は聞いた事ないでしょうけど」
ミミ「この方はペルシャリアン公爵家のご令嬢、ココット=ペルシャリアン様です!」
リアン「ココットって・・・ええ!? ココたん!?」
「ココたん!?」
ミミ「な・・・なななななんて無礼な! 平民の分際でココット様を勝手に愛称で呼ぶなんて・・・!」
リアン「なんだよ平民平民て。 お前だって使用人って事は平民なんじゃないのか?」
ミミ「な・・・! 私はベンガル男爵家の三女です。 これでも一応貴族ですわ!」
リアン「自分で一応とか言っちゃってるし・・・」
ココット「上級貴族の侍女は懇意にしている下級貴族の娘が務めるものなのですわ」
リアン「ふーん」
リアン「なあ、ココた・・・ココット様の使用人て俺にも出来る?」
ミミ「出来るわけないでございましょう!」
ココット「ミミ、落ち着いて」
ミミ「ですが、お嬢様・・・」
ココット「お父様も平民だからと差別したり見下したりしてはいけないと言っていたわ」
ミミ「お嬢様も旦那様もお優し過ぎます。 いつか詐欺師に騙されてしまうのではないかとミミは心配です」
ココット「ミミも優しいわね。 大丈夫よ。 お父様は人を見る目をお持ちだもの」
ココット「それであなた、どうしてウチで働きたいの?」
リアン「ココたんが将来断罪される未来を回避するためだ」
「はい?」
リアン「ココたんはこの後皇太子殿下の婚約者になり、王妃教育を受けるが10年後にヒロインである光の乙女が現れ──」
「?????」

〇魔法陣のある研究室
菊池「様子はどうだね」
新井「あ、局長、今無事に『悪役令嬢』であるココットと接触した所です」
菊池「そうか。 この後ココットの家で働く事になった彼は様々な問題を解決し、やがてココットと恋仲になるんだったな」
新井「はい。 ついでに『リアン』の祖父が実は隣国の廃嫡した元王子だという事も『断罪イベント』の直前に明らかになる予定です」
菊池「全く・・・ 毎度毎度設定過多だな」
新井「良いじゃないですか。 どんな無茶苦茶な夢も叶えてくれる夢のマシーン【アネモネ】なんですから」
菊池「正確には夢を叶えているのではなく、夢を見せているだけだがな」
新井「同じですよ。 【アネモネ】に没入する時に、このマシーンに関する記憶を消し、事故で死んだという疑似記憶を植え付ける」
新井「患者は“自分はこの世界に生まれ変わったんだ”と認識します。 患者にとっては“前世”で願った夢が叶ったような物ですよ」
菊池「生まれ変わり・・・か 知っとるか? この安楽死マシーン【アネモネ】が出来てから自殺者数が大幅に減少したそうだ」
新井「へぇ・・・ なんででしょうね? 望めば誰でも【アネモネ】を使えるわけじゃないのに」
菊池「1、末期の病気を患っている事 2、90歳以上である事 3、植物状態で回復の見込みがない事」
菊池「このいずれかを満たして初めて予約が可能となる。 それでも望んだ夢を見ながら死ねるのならと自殺を思いとどまるんじゃないかね」
新井「半年先まで予約でいっぱいですけどね。 基本的に末期患者が優先されるから予約したまま寿命を迎える人も多いし」
菊池「ああ、だから数年後には夫婦で使用可能な【スズラン】が出る予定だ。 私と妻が90歳を超えたらいつでも使える手筈になっている」
新井「うわー 院長の身内特権だー」
菊池「なんとでも言いたまえ」

〇大樹の下
  ココット(80歳)
  「あなた・・・あなたと過ごした人生、わたくし幸せでしたよ」
  リアン(80歳)
  「僕もだよ。君と出会ったこの場所で、孫たちにか囲まれて旅立てるなんて、なんて僕は幸せ者なんだろう」
  ココット(80歳)
  「リアン、愛しています」

〇魔法陣のある研究室
真神 徹「僕も・・・愛して──」
新井「19時23分 ご臨終です」
菊池「では次の患者に連絡を入れよう。 次のシナリオは・・・」
菊池「また悪役令嬢か」
新井「人気なんですよ」
菊池「しかもループ物か。 こりゃ時間かかるぞ」
新井「といってもこちらでの1日が【アネモネ】の中では100年ですし、それ程かからないのでは?」
菊池「過去にドラゴンへの生まれ変わりを選んで約1月【アネモネ】の中に居た者も居るがな」
新井「1月!? よく精神が持ちましたねぇ・・・ 【アネモネ】での死以外で死なせないように栄養補給はしているとはいえ」
菊池「ま、例外中の例外だがね。 将来的には寿命の制限もかけられるだろう」
新井「そうですか? 僕は【アネモネ】がもっと普及して、逆にもっと自由なシナリオ選びが出来るようになるとおもいますけど」
菊池「ほう・・・ では賭けるかね?」
新井「良いですよ」

コメント

  • アネモネには「はかない恋」とか「見放された、見捨てられた」という花言葉があるから、意味深だなあ、と思いながら読みました。安楽死には理想の世界を。死刑囚の死刑執行にはそれ相応の世界を。と、利用者に応じていろんな最期のアレンジが可能ですね。

  • どんでん返しに驚きを隠せませんでした。
    すごく切なくて、でもアネモネの中にいた男の方が幸せでよかったです。ココットさんとミミちゃんが可愛らしかったです!

  • 表紙やあらすじからは何も教えてくれない中での裏切り、超急転直下…

    僕もリアン君の様に幸せにして貰いたいです😌

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