みらいはワタシのものだから

ヤミヲミルメ

晴れた朝の通学路(脚本)

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〇通学路
おしゃれな おねえさん「もしもし、ダーリン? 今、家を出たところよ」
おしゃれな おねえさん「昼の会議ならバッチリよ」
おしゃれな おねえさん「今夜のデート、楽しみだわ」
おしゃれな おねえさん「歩きスマホはやめろって? だーいじょーぶ・・・」
おしゃれな おねえさん「きゃ!」
おしゃれな おねえさん「やだ! 大丈夫? ケガしてな・・・」
  大型トラックが猛スピードで
  目の前を通り過ぎた
おしゃれな おねえさん「あっぶなー!」
おしゃれな おねえさん「もうちょっとで二人とも 轢かれるところだった・・・」
おしゃれな おねえさん「え・・・? なんで・・・?」
おしゃれな おねえさん「だって この子の位置がここで トラックが こう通って・・・」
おしゃれな おねえさん「何で この子は轢かれてるの! ?」
女の子「アタシは そういうサダメなの」
女の子「でもね・・・」
女の子「そのサダメを変えるために アナタをここに呼び出したの」
おしゃれな おねえさん「な・・・何を言っているの! ?」
おしゃれな おねえさん「私がここにいるのは 会社に行くためで!」
おしゃれな おねえさん「夜はデートで・・・!」
女の子「それ、夢だよ」
女の子「全部、アタシの夢」
女の子「おねえさん、アタシね」
女の子「おねえさんみたいになりたいの」
女の子「おしゃれな服を着て おしゃれな靴を履いて」
女の子「おしゃれな会社で働きたいの」
女の子「だから・・・助けて! !」

〇黒
おしゃれな おねえさん「消えた! ?」
おしゃれな おねえさん「女の子だけじゃなく 何もかもが消えた・・・」
おしゃれな おねえさん「空も町並みも街路樹も」
おしゃれな おねえさん「スマホの通話相手も・・・」
おしゃれな おねえさん「暗い」
おしゃれな おねえさん「こわい」
おしゃれな おねえさん「こんなところにいたくない」
おしゃれな おねえさん「今日は大事な会議があって 注目されて拍手を浴びて・・・」
おしゃれな おねえさん「仕事のあとはデートで 夜景を見ながらワインを飲んで・・・」
おしゃれな おねえさん「会議・・・ 何のだっけ・・・」
おしゃれな おねえさん「デート・・・ 誰とだろう・・・」

〇通学路
おしゃれな おねえさん「昨日と変わらないわね」
女の子「ほとんどね」
女の子「でも、見てもわかんないくらいだけど」
女の子「昨日より少しだけ ケガが軽くなってるんだよ」
女の子「1ミリぐらい」
おしゃれな おねえさん「それをくり返すの?」
女の子「うん! ケガが全部なくなるまでね!」
おしゃれな おねえさん「ケガは全身」
おしゃれな おねえさん「全部なくすには 何百回も かかるわ」
女の子「それでも がんばる!」
女の子「アタシ、生き返りたいんだもん!」

〇黒
おしゃれな おねえさん「ムゴイことするわね」
???「彼女自身の願いだよ」
おしゃれな おねえさん「あなたは誰なの? 死神?」
???「天使さ」
天使「彼女は天国に行くべき清らかな少女だ」
天使「だけど彼女は 迎えに来たボクの手を引っぱたいた」
天使「だから別の道を拓いてあげたんだ」
おしゃれな おねえさん「険しい道ね」
天使「イバラの道だね」
天使「でも、サダメを変えるには これくらい必要なんだ」
おしゃれな おねえさん「それで? 私は何者なの?」
天使「キミは彼女が・・・」

〇教室
天使「図工の授業で描いた絵だよ」
天使「『未来の自分』ってテーマでね」

〇大企業のオフィスビル
天使「おしゃれなスーツと おしゃれなヒールで」
天使「見知らぬ・・・ でもきっとおしゃれな会社へ通う」
天使「あこがれの大人になった彼女の姿」
天使「それがキミさ」

〇黒
天使「彼女はキミになりたいんだ」
天使「自分で描いたステキな大人に」
おしゃれな おねえさん「なれるとは限らないわ」
おしゃれな おねえさん「生き返ったからって」
おしゃれな おねえさん「いい会社に入れるほど 勉強できないかもしれないし」
おしゃれな おねえさん「太ってしまってブランドのスーツが 似合わなくなるかもしれない」
天使「そうだね。 でもそれは」
天使「あくまで彼女の問題だ」
おしゃれな おねえさん「そうね」
おしゃれな おねえさん「夢も恋も あの子のもの」
おしゃれな おねえさん「あの子は ああして 死の瞬間を何度もくり返して」
おしゃれな おねえさん「少しずつ生の時間へと戻っていくのね」
天使「そのときは、いずれ来る」
天使「闇の中の点のような光へ 彼女は少しずつ少しずつ近づいている」
おしゃれな おねえさん「そして そのときが来れば私は」
おしゃれな おねえさん「ただの一枚の絵に戻る」
天使「キミは彼女を導く光だ」
おしゃれな おねえさん「そう。だから・・・」
おしゃれな おねえさん「私がするべきことは、一つだけ」

〇通学路
おしゃれな おねえさん「もうすぐ、ね・・・」
おしゃれな おねえさん「いよいよ今日だわ」
おしゃれな おねえさん「今日、トラックに轢かれなければ」
おしゃれな おねえさん「女の子のケガは完全に消え」
おしゃれな おねえさん「事故は起きなかったことになり」
おしゃれな おねえさん「女の子は死ななかったことになる」
おしゃれな おねえさん「くり返された痛みが ついに報われて」
おしゃれな おねえさん「私はただの絵に戻る」
天使「おい! どういうことだ! ?」
天使「どうして彼女が轢かれてる! ?」
天使「どうしてキミは彼女を避けたんだ! ?」
おしゃれな おねえさん「だって私・・・」
おしゃれな おねえさん「私だって夢を見たいし、恋をしたい」
おしゃれな おねえさん「ただの絵になんか戻りたくないの」

コメント

  • 1話とは思えない程深く濃密なストーリーで、とても楽しかったです!
    最後がかなり衝撃的でした。
    創作物も意思が芽生えれば、元に戻りたくなくなってしまいますよね……。

  • 心を持った創作物が自分が、創作物だと気づかされふシーンがめっちゃ好きですね。「だけど、彼女は僕の手をひっぱたいた」この表現もステキです。ホラーということを忘れて読み入ってしまいましたが、ラストで思い出しました…

  • 落ちがそう来たか!となって面白かったです☺
    あとコメントBotへの返しが秀逸でそっちにも反応しちゃいました😅

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