場末ノZ

山本律磨

Paraiso(Ⅳ)(脚本)

場末ノZ

山本律磨

今すぐ読む

場末ノZ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇山並み
  『本日は御光山ケーブルカーをご利用頂きまことにありがとうございます』
  『市内と湾岸を一望できる御光山は標高333メートル。東京タワーと同じ高さです。夏は新緑、秋は紅葉が楽しめ・・・』

〇山の展望台(鍵無し)
マリア「思い出した思い出した。こんなとこだった」
マリア「子供の頃来て以来だなー」
武藤「どうぞ」
マリア「ありがと。うわー懐かしい」
マリア「知ってる?この町のソウルドリンクなの。バナナミルクセーキ」
武藤「はい。よく母に買ってもらってたんで」
マリア「え、お母さんって?」
武藤「自分、もともとこの町の人間なんで」
マリア「え?東京の人じゃなかったの?」
武藤「はい」
マリア「何で黙ってたのよ」
武藤「聞かれなかったから」
マリア「・・・」
マリア「あっそ」
「・・・」
武藤「あ、本当だ。懐かしい」
マリア「前から思ってたんだけど。君、無痛症っていうか、無感情なんじゃない?」
武藤「分かります?年々無気力になっていってて困ってるんです」
マリア「全然困ってるように見えないけど・・・」
マリア「後天性痛覚ナントカ症って言ってたよね。いつから痛みがなくなったの?」
武藤「それがよく覚えてないんです。ただ、完全に痛くなくなったのは二年くらい前かな」
マリア「ちょっと触れちゃいけないかなって思ってスルーしてたけど・・・」
マリア「その右手の指の縫い傷も関係あるとか」
武藤「はい。五本とも一回バッサリちょん切れました」
マリア「サラッと言うところがリアルね」

〇古い倉庫の中
  『日雇い工場で働いてたんですけど、裁断機の作業中にちょっとボーっとしてて』
工員「ひ、ひゃあっ!」
武藤「はい?」
工員「お、お前!ゆ、ゆ、指!」
武藤「・・・あ」
工員「止めろ!機械止めろ!」

〇山の展望台(鍵無し)
マリア「・・・」
武藤「凄いですね最近の医療って。ちゃんとくっついて動くようになるんだから」
マリア「アンタほど凄くないわよ」
武藤「まあそれはさておき。海側に回りましょう」
武藤「そろそろなんで」
マリア「そろそろ?」

〇朝日
マリア「・・・」
マリア「はははっ」
武藤「・・・?」
マリア「ねえ、これってどこのデートマニュアルで勉強したの?」
マリア「本当の神様はあの夕日だよ」
マリア「的な~?」
武藤「・・・」
マリア「まあ付き合ってあげましょう。オクテ君」
マリア「てか、逆光!」
マリア「景色キレイだけど目に悪いわよ。こういうところ、地味にマイナスポイントだからね」
武藤「すみません・・・」
「・・・」
マリア「武藤君さ。やっぱ私のファンでしょ」
武藤「・・・」
マリア「いいぜー。告っても」
マリア「ま、とりあえず現状維持だけど」
マリア「あ。コラコラ」
マリア「手すりから落ちるよ」
武藤「あそこにいるって」
マリア「・・・?」
武藤「お父さんはあそこにいるって」
武藤「子供の頃自分が泣いたら、母さんはここに連れてきてくれて、神様の国を見せてくれたんです」
マリア「神様の国?」
武藤「見えませんか?海の向こうに連なってる島」
武藤「逆光に照らされて映る島影が」
マリア「・・・」
マリア「いいお母さんじゃん」
武藤「はい。だから『魔女』じゃないです」
マリア「え?」
マリア「君のお母さんって、まさか・・・」
武藤「・・・」
マリア「そう来たか」
マリア「ズルいな。どうせネットで拾ったちょっといい話みたいなヤツでしょ」
マリア「あははは。そういうのいいから、スパッと告ってきなよ。あははは」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:Purgatorium(Ⅰ)

成分キーワード

ページTOPへ