最終ステージ・出典紹介(イ)(脚本)
〇仮想空間
タケウチ「お次は(イ)の紹介役、僕の最終スピーチです」
(イ)
「そうだね、ホシノちゃん」
タケウチ「このフレーズの出典、見当ついた人、います?」
〇海辺
タケウチ「村上春樹、『海辺のカフカ』!」
シマウマ「あー、そうだそうだ! ホシノちゃん!」
タケウチ「僕が今回、「そうだね、ホシノちゃん」ってセリフを選んだのは、マックス・リュティや小澤俊夫先生の理論の「一次元性」なんです」
タケウチ「昔ばなしの場合は、動物や彼岸者と普通に会話できる「一次元性」ってのは、話の最初から一貫して一次元ですよね?」
タケウチ「でも他にも、面白い表現効果ってあると思うんです。それまで一次元でなかったのが、あることをきっかけに一次元になる、みたいな」
タケウチ「この「ホシノちゃん」ってのは、今時のトラック運転手の青年です。いーかげんなとこのもある男ですが、彼が旅の老人を助けます」
タケウチ「あ・・・今気付いた。 それって、「親切の美徳」と「老人の援助者」だね。 昔話の特徴に合致してます!」
タケウチ「で、星野青年は猫と話せる老人を乗せたんですけど、一緒に旅をすることによって、ホシノちゃんにも猫と話せる能力が備わるんです」
タケウチ「ある朝マンションのベランダに出て、たまたま見かけた猫に声掛けるんですよ。そうやって人から猫に話しかけること、あるでしょ?」
タケウチ「猫に向かって「よう、猫くん。今日はいい天気だな」なんて、ふざけて言うんだけど、そしたらその猫が、返事してくれるんです!」
「そうだね、ホシノちゃん」
タケウチ「僕は──『海辺のカフカ』って、上下巻ある長い物語を読んでて、下巻の最後の方でそのシーンが出た瞬間、すごく感動したんです」
タケウチ「その頃は、リュティの昔話理論なんて全く知らなかったけど、物語を経て登場人物に一次元が訪れることが、すごく面白かった」
タケウチ「猫と言葉が通じた瞬間、すごく感動して──昔ばなし大学でリュティ理論を勉強してて、その時のことを何度も思い出しました」
タケウチ「『海辺のカフカ』、読んでない方もいると思いますが、リュティ理論・小澤理論を踏まえて読むととっても面白いのでおすすめです!」
スナネズミ「そういう見方ができるのかー!」
タケウチ「はい。何か、質問はありますか?」
シマウマ「たしかに、村上春樹さんって、小さい時からすごく昔話を読み込んでる感じがしますよね」
タケウチ「そう、他にもいろんなとこで昔話理論と重なります。 孤立性とか、極端性とか、彼岸と此岸とか、旅に出る主人公とか・・・」
タケウチ「僕は講義を受けながら、よく村上春樹を連想してたんですよ。 で、なぜ自分が村上作品や昔話理論に惹かれたのか分かった気がした」
タケウチ「で、その後で再読するのも楽しかったから、これから初読って人は、普通の読者よりも、より味わい深いはずですよ」
タケウチ「僕が一番好きな春樹作品が、この『海辺のカフカ』なんで──皆さん、これから読んだらぜひ僕にメールくださいな」
スナネズミ「次は『海辺のカフカ』でフラグフレーズかな?」
タケウチ「あー、やってもいいっすよ。 ていうか、みんなが読んでからね♪」
タケウチ「あ、フラグフレーズのルールでは読まなくてもいいんだっけ・・・ってことで、次の紹介役にバトンタッチしましょうか!」