終活魔王のエンディングノート

大河内 りさ

P21・告白(脚本)

終活魔王のエンディングノート

大河内 りさ

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〇謁見の間
ルカード「──と、いうわけです」
キオル「早く言えよ!!」
ミア「どうして黙ってたの!!」
ルカード「敵を欺くにはまず味方から、的な・・・?」
「ルカード!!」
ミア「報奨金詐欺じゃない・・・」
ルカード「魔界の復興に充ててもらおうかと思って」
ヴィエリゼ「貰う謂われがないわ」
ヴィエリゼ「私も、人間界に侵撃したし・・・」
ルカード「きみは魔界に不正な働きかけをした奴らを 懲らしめただけだろ?」
ヴィエリゼ「でも・・・」
ルカード「互いに遺恨がないわけではないと思う」
ルカード「だけど」
ルカード「正式に友好条約を結んで、 交流を深めたり物流を広げていけば」
ルカード「誤解や偏見をなくしていけると思うんだ」
ヴィエリゼ「ルカード・・・」
ルカード「すぐには難しいと思う。 でもこれは──」
ヴィエリゼ「・・・未来への『約束』だね」
ルカード「うん、そうだね」
ヴィエリゼ「お聞きの通りです、お父様」
ヴィエリゼ「お父様の望む形ではないかもしれません」
ヴィエリゼ「ですが、双界の平和と発展のため、 条約を締結するのは悪いことでは──」
ガルディアス「はぁ・・・」
ガルディアス「譲位の際、四天王には新たな王を正しく 導くよう言い渡しておいたはずだが──」
ガルディアス「どういうことだ、ゲンティム」
ゲンティム「ハッ」
ゲンティム「嬢ちゃ── ヴィエリゼ様は」
ゲンティム「王たる者に必要な資質と能力を充分に 備えておいでかとお見受けし」
ゲンティム「故に、差し出がましい進言は いたしておりません」
ガルディアス「お前も丸くなったものだ」
ガルディアス「いや、腑抜けたと言うべきか」
ガルディアス「ヴィエリゼ」
ヴィエリゼ「はい」
ガルディアス「お前を使節団の一人として 人間界へ派遣する」
ヴィエリゼ「それって・・・」
ガルディアス「親善政策遂行のため、 人間界の視察と調査をしてきなさい」
ヴィエリゼ「はいっ!」
ローレット「あたしも! あたしも行きますっ!」
ダーリナ「私も随行させていただきたく存じます」
ガルディアス「却下」
「えぇ〜っ!?」
ガルディアス「同行する四天王は一人で充分」
ローレット「あたしが行くっ!」
ダーリナ「いいえ、私が行きます!」
ガルディアス「あっ、こらケンカしない」
フェゴール「ほっほ 私も興味がありますねぇ」
ゲンティム「じゃあ俺も〜」
ローレット「なら腕相撲で勝負よ!!」
「無理」
ダーリナ「でしたら魔法勝負にしましょう」
ガルディアス「じゃんけんにしなさい」
ミア「ふふっ」
ミア「魔界ってなかなかアットホームなのねぇ」
ローレット「キオル!」
キオル「じゃんけん終わったのか?」
ローレット「後でプレゼンバトルすることになった」
キオル「あっそ」
キオル「それで、なんだよ?」
ローレット「えっと・・・」
ローレット「父様が、あんたに会いたいって 言ってるんだけど・・・」
キオル「そうだ、あいつ!!」
ローレット「あいつぅ!?」
キオル「お前の親父には借りがあるんだ」
ローレット「ああ、なんか湖で手を貸したって?」
キオル「いや・・・」
キオル「それよりもっと、 ずっとずっと前の借りだ」
キオル「お前の親父、 ちゃんと魔法も使えるんだな」
ローレット「それって────」
ガルディアス「ヴィエリゼ」
ヴィエリゼ「はい」
ガルディアス「お前はもう魔王ではない」
ガルディアス「今日からは、ヴィエリゼ・レイヤール・ウァラウムを名乗りなさい」
ヴィエリゼ「ウァラウム・・・」
ガルディアス「私の隠居領だ」
ガルディアス「お前の亡き母が育った地でもある」
ヴィエリゼ「お母様の・・・」
ガルディアス「使節団の仕事が終わったら、ウァラウム領をお前に預ける。発展に尽くしなさい」
ヴィエリゼ「承知いたしました」
ヴィエリゼ「謹んで拝受いたします」

〇黒

〇貴族の部屋
ヴィエリゼ「まさか、お父様があんなにすんなり友好条約を受け入れてくださるなんて・・・」
ヴィエリゼ「ルカードの人徳かしら」
ヴィエリゼ「・・・・・・・・・」
ヴィエリゼ「まだ、全てが終わったわけじゃない」
ヴィエリゼ「これから、ここから始まるんだわ」
ヴィエリゼ「がんばらなくちゃ・・・」
グエル「まだ着替えておられなかったんですか!?」
ヴィエリゼ「あ、グエル」
グエル「まったく・・・ 自分でできると仰ったのはどなたです!」
ヴィエリゼ「ごめ~ん」
ヴィエリゼ「ちゃんと着替えるから、グエルは休んでて!」
グエル「いいえ、お手伝いいたします!」
ヴィエリゼ「でも・・・」
グエル「私の怪我はフェゴール様の魔法でほとんど 回復しておりますから大丈夫です」
ヴィエリゼ「でも、ガスタインは まだ寝込んでるじゃない」
グエル「あれはただのギックリ腰です。 魔法じゃ治りません」
ヴィエリゼ「そうなの・・・?」
グエル「さ、早く脱いでください」
ヴィエリゼ「は~い」
グエル「こちらのドレスでいかがです?」
ヴィエリゼ「誰かしら」
ルカード「エリゼ、いる?」
ヴィエリゼ「ルカード!?」
ルカード「この後の晩餐会で、人間界の料理を作らせてもらえないかと思って相談に──」
ルカード「・・・開けてもいい?」
ヴィエリゼ「今はダメ──」
ルカード「前に、俺の手料理が食べたいって 言ってたから・・・」
ルカード「・・・って」
ヴィエリゼ「・・・ッ」
ルカード「えっ!? わっ!?」
ルカード「ごめっ──」
ヴィエリゼ「今回ばかりは・・・」
ヴィエリゼ「さすがに許さんっ!!」
ルカード「うわっ!?」
ルカード「ちょっ、待っ──」
ルカード「話を・・・熱ッ!?」
ルカード「うわぁぁあああーっ!?」
ヴィエリゼ「もうっ」
グエル「派手に吹っ飛んでいきましたねぇ」
グエル「はい、これで準備完了です」
グエル「お綺麗ですわ」
ヴィエリゼ「えへへ、ありがと」
グエル「アクセサリーはこちらでよろしいですか?」
ヴィエリゼ「その台詞、すごい不安になるんだけど」
ヴィエリゼ「わ、可愛い。 どうしたの、これ?」
グエル「うふふ」
グエル「勇者様からの贈り物です」
ヴィエリゼ「ルカードから?」
グエル「直接お渡しになった方が・・・ と言ったのですけど」
グエル「恥ずかしいから、と 私にお預けになったのです」
グエル「高価な物でなくて申し訳ないけれど、よかったら受け取って欲しい、と仰せでした」
ヴィエリゼ「どうせ部屋に来るのなら、 直接渡してくれればいいのにね」
ヴィエリゼ「でも・・・」
ヴィエリゼ「とっても嬉しい!」
ヴィエリゼ「ね、早くつけて」
グエル「はいはい、すぐに」

〇城の会議室

〇古い洋館

〇黒

〇屋敷の書斎
ヴィエリゼ「ふぅ・・・」
ヴィエリゼ「楽しかったな」
ヴィエリゼ「これからもこうした時間が過ごせるように」
ヴィエリゼ「友好条約を確固たるものにして、魔界と人間界の友好協力関係の基礎を築く・・・」
ヴィエリゼ「それが、私の使命だわ」
ヴィエリゼ「それが終わるまでは死ねないから──」
ヴィエリゼ「あなたの出番は、まだ先になりそう」
ヴィエリゼ「『死ぬまでにしたい100のこと』も ほとんど達成しちゃったしね」
ヴィエリゼ「さっきの晩餐会で、ルカードが人間界の料理を振る舞ってくれたから・・・」
ヴィエリゼ「『勇者の手料理が食べたい』もクリア」
ヴィエリゼ「それに、シチュエーションが 微妙だったけど──」
ヴィエリゼ「『勇者にお姫様だっこされたい』と 『勇者と手合わせがしてみたい』も ある意味クリアしてるし・・・」
ヴィエリゼ「『倒されるならルカードの手に掛かりたい』もクリアしてると言えなくもない」
ヴィエリゼ「そうすると、残ってるのは──」
ヴィエリゼ「ふふっ」
ヴィエリゼ「これをクリアするのは なかなか難しそうね」
ヴィエリゼ「いくら話しても物足りないもの」
ヴィエリゼ「・・・そういえば」
ヴィエリゼ「バタバタしててすっかり忘れてたけど・・・」
ヴィエリゼ「ルカードって、 私のこと好き──なんだよね?」
ヴィエリゼ「子供の頃から惹かれてたって・・・」
ヴィエリゼ「・・・・・・・・・」
ヴィエリゼ「どっ、どうしよう・・・ 今さら恥ずかしくなってきた」
ヴィエリゼ「お、落ち着け私・・・」
ヴィエリゼ「ルカードは今、ゲンティムに捕まってしこたま飲まされてるだろうから、明日まで会うことはないはず・・・」
ヴィエリゼ「──って」
ヴィエリゼ「私、ルカードに自分の気持ち ちゃんと伝えてなくない!?」
ヴィエリゼ「どっ、どうしよう!?」
ヴィエリゼ「早くしたほうがいいよね!? 今から伝える!?」
ヴィエリゼ「でも酔っ払いに言うのもなんか微妙・・・」
ヴィエリゼ「だぁれ?」
ルカード「俺だけど・・・開けても大丈夫?」
ヴィエリゼ「ルカード!?」
ヴィエリゼ「ど、どうぞ・・・」
ルカード「ここにいたんだ」
ヴィエリゼ「どうしたの? ゲンティムたちと飲んでたんじゃ・・・」
ルカード「逃げてきた」
ルカード「エリゼと、ゆっくり話したくて」
ヴィエリゼ「ルカード・・・」
ヴィエリゼ「あのね!」
ヴィエリゼ「私も、話したいことがあって・・・」
ヴィエリゼ「えっと、その・・・」
  言い淀んでうつむいた視線の先に、ルカードの動かない左腕が映る。
  その瞬間、自然と言葉が口をついた。
ヴィエリゼ「私・・・あなたの腕になりたい」
ルカード「えっ・・・」
ヴィエリゼ「あなたが笑う時、泣く時、 怒る時、喜ぶ時・・・」
ヴィエリゼ「あなたの隣で、同じ時間を過ごしたい」
ヴィエリゼ「ずっと、ルカードのそばにいたいの」
ルカード「エリゼ・・・」
ヴィエリゼ(これじゃまるでプロポーズじゃない)
ヴィエリゼ「えっと、今のはその・・・っ」
ヴィエリゼ「──ルカード?」
  ぐいと片腕で引き寄せられて、頭がルカードの胸にぶつかる。
ヴィエリゼ「・・・・・・あの」
ルカード「今日は甲冑をつけてないから、 痛くないだろ?」
ヴィエリゼ「ふふっ・・・そうだね」
ルカード「エリゼ」
ルカード「きみのことが好きだ」
ルカード「ずっとそばにいて欲しい」
ヴィエリゼ「私も──」
ヴィエリゼ「大好きだよ、ルカード!」

次のエピソード:P22・エンディングノート

コメント

  • 「腕になりたい」って素敵ですね。色々なことがあったなあとしみじみしています…!

  • エンディングノートは遥か未来へ…ハッピーエンド☺️
    ってもう1話あるんですね✨

    流行り病の影響が…💦急に寒くなってきたのでどうかご自愛を…!

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