〇町の電気屋
戸村龍也「久保ちゃん、久保ちゃん」
久保田光「・・・・・・」
　　光は黙って店の看板を片付けると、店内に戻っていく。
戸村龍也「うぉい、久保ちゃん、久保ちゃん！」
戸村龍也「大丈夫だったんか？ チャットも電話も出ねぇし、心配したってーの」
久保田光「・・・・・・」
戸村龍也「えー、どうしたの、どしたの」
　　龍也が光の肩を掴む。
　　しかし光はその手をふりほどく。
久保田光「関係ないだろ、ほっといてよ」
戸村龍也「おーい、前にもこんなやりとりしたぞい。 デジャブーですわ、デジャブー」
久保田光「・・・僕なんてどうでもいいだろ」
戸村龍也「・・・俺が見捨てたって思ってんの？」
久保田光「・・・見捨てたろ」
戸村龍也「久保ちゃん、あれは——」
久保田光「とにかく、もう終わったから！ 僕たち、もう赤の他人だから」
戸村龍也「そうじゃねぇのに、はぁ・・・」

〇ダイニング（食事なし）
久保田郁美「な、ん、な、のこれは」
　　『超強力、電磁石グローブ』
久保田徳二「ちがっ、これは売り物じゃなくて、俺の趣味で・・・」
久保田郁美「だから、なんなの」
久保田徳二「このグローブをはめて、拳を握ると、強力な磁力が発生してだな」
久保田徳二「敵のナイフとかをこう、ババっと奪うことができて、滅茶苦茶スタイリッシュ・・・」
久保田郁美「よしわかった、顔の前でナイフ構えろ。 アンタの頭の後ろで拳握る」
久保田徳二「郁ちゃん、僕死んじゃうよ、それ」
　　次のニュースです。
　　新たな犠牲者が出てしまいました
　　昨日、東京都武蔵野市でウエディングドレスを着せられた女性が刃物で刺され──
　　テレビを消す光。
久保田光「・・・ごちそうさま」

〇教室
「で、そしたら親父ブチ切れちゃってさあ」
「それあんた悪いじゃん」
久保田光「・・・・・・」
長瀬美鈴「はい、席ついてー」
「あれ、横ちゃんは？」
長瀬美鈴「こら、先生のことをちゃん付けで呼ばないの」
長瀬美鈴「横井先生は今日はお休み。 代わりに私がホームルームをやります」
「え、なんで？」
長瀬美鈴「何でも。ほら、早く席ついて」
久保田光「・・・・・・」
　　上の空で窓の外を見ている光。

〇町の電気屋
久保田光「・・・・・・」
戸村龍也「久保ちゃん」
久保田光「・・・帰ってよ」
戸村龍也「待って、これ見て」
　　光の腕を掴む龍也。
久保田光「痛いよ、放せって！」
　　龍也が店頭のテレビを指差す。

〇通学路
横井元気「犯人を、殺してやりたい」
横井元気「ただ、そうとしか思えません」

〇町の電気屋
久保田光「横井・・・」