特異地蔵譚

わらやま

マクスウェルの悪魔地蔵 オムニバス(脚本)

特異地蔵譚

わらやま

今すぐ読む

特異地蔵譚
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇教室
久須間 ウエル「・・・」
要川 大表「なぁなぁ、昨日の俺のZikZokの動画良かったっしょ?」
日野元 光「あー、あれ!! チョー笑った!!さすが要川だよね!!」
要川 大表「ありがとな!!」
要川 大表「そろそろこのクラスともお別れなのさみしーよなぁ」
久須間 ウエル「・・・」
久須間 ウエル(ちっ)
久須間 ウエル(陽キャどもが・・・騒ぎやがって)
久須間 ウエル(ゆっくりTapNovel作りたいのによ・・・)
久須間 ウエル(もう少しでこのクラスともおさらばだと思うとせいせいするぜ)
久須間 ウエル(でも・・・またアイツらと同じクラスになる可能性あると思うと憂鬱だな・・・)
久須間 ウエル「ダメ元でじいさんに言ってみるか」

〇散らかった職員室
久須間 ウエル「なぁ、じいさん、頼むよ」
おじいさん「ダメに決まっとるじゃろ・・・」
おじいさん「クラス替えで生徒の希望なんぞ聞けんわい」
久須間 ウエル「そう言わず頼むよ 俺じいさんの眠たい物理の授業もちゃんと聞いてんじゃん」
おじいさん(そんな風に思っとったんか・・・)
おじいさん「そもそもなんじゃその・・・ 陽キャ?陰キャ?とかいう区分は・・・」
おじいさん「同級生なんじゃから、そんなの気にせず話しかけてみれば良いじゃろ」
久須間 ウエル「わかってねぇな・・・じいさん」
久須間 ウエル「あいつらは俺とかとは別の人種なの」
久須間 ウエル「決して混ざり合うことはないんだよ」
久須間 ウエル「だから、そもそも同じクラスになんか入れて欲しくないわけ」
久須間 ウエル「ほら、この前授業で言ってた『マクスウェルの悪魔』みたいな感じでさ」
久須間 ウエル「クラスを似た者同士で分けようぜ」
おじいさん「久須間・・・ そんな考えではいかんぞ・・・」
久須間 ウエル(・・・やっぱわかってもらえねぇか)
久須間 ウエル(帰るか・・・)
おじいさん「それにマクスウェルの悪魔はな」
おじいさん「個別の分子が・・・」
おじいさん「ってもうおらん・・・」

〇開けた交差点
久須間 ウエル「はぁ・・・クラス替え憂鬱だぜ」
久須間 ウエル「ん!?」
久須間 ウエル「地蔵・・・?」
久須間 ウエル「こんなところに地蔵なんかあったか?」
久須間 ウエル「・・・柄じゃねぇけど地蔵にでも縋るか」
久須間 ウエル(次のクラス替え・・・ 俺と気が合う陰キャだけのクラスにしてくれ)
久須間 ウエル「な、なんだぁ!!」

〇黒
久須間 ウエル「うわぁぁぁぁぁ」

〇大きな木のある校舎
久須間 ウエル「んっ・・・」
久須間 ウエル「何がどうなったんだ!?」
久須間 ウエル「ここは・・・学校!?」
要川 大表「光!!俺たちまた一緒のクラスだぜ!!」
日野元 光「ホントじゃん!!やったぁ!! てか、1組、仲良い子ばっかなんだけど!?」
久須間 ウエル「クラス替えの発表・・・!?」
久須間 ウエル「どういうこと!?」
久須間 ウエル「よくわかんねぇけど、俺は・・・」
久須間 ウエル「4組・・・!! あの陽キャ達とは別のクラス!?」
久須間 ウエル「つか・・・クラスのメンバー・・・」
久須間 ウエル「暗田、印伽・・・」
久須間 ウエル「陰キャばっかじゃねぇか!?」

〇教室
「・・・」
久須間 ウエル(すげぇ・・・ マジで陰キャしかいねぇじゃん)
久須間 ウエル「こりゃこの一年穏やかにすごせるぜ」

〇教室
おじいさん「では、これから一年よろしく頼むぞい」
おじいさん「ワシと君たちとの摩擦はないものとして接してくれてよいからのう!!」
おじいさん「な・・・なんてのう・・・」
久須間 ウエル「陽キャの奴らがいたら 『物理のテストじゃないんだから』とかつっこんでたんだろうなw」
おじいさん「じ・・・じゃあ早速じゃがクラス委員長を決めるぞい」
おじいさん「誰か立候補者はおるかの?」
久須間 ウエル(いるわけねぇってw 普通はやりたくねぇもんw)
おじいさん「仕方ないのぅ、では誰か推薦を・・・」
暗田 帳「久須間君がいいと思います」
久須間 ウエル「はっ!?」
おじいさん「お、そうか・・・ では久須間君が委員長に異議のあるものはおるかな?」
おじいさん「では、久須間君、委員長よろしくのう」
久須間 ウエル(おいおい、待ってくれよ!! 嫌に決まってんじゃん!!)

〇学校の廊下
「おい!!」
久須間 ウエル「暗田!! お前さっきなんで俺を委員長なんかに推薦したんだよ!?」
暗田 帳「なんでって・・・」
暗田 帳「自分がやりたくないからだけど」
久須間 ウエル「ああ!?」
暗田 帳「それにあのまま長引いてたら帰るの遅くなってゲーム出来る時間減っちゃうし」
暗田 帳「内申もプラスになるからいいんじゃない?」
久須間 ウエル「んな理由でお前・・・」
暗田 帳「もういい?早く帰らないと・・・」
久須間 ウエル「・・・ふざけんなよ」

〇教室
おじいさん「では、体育祭の実行委員なんじゃが・・・」
久須間 ウエル「暗田君がいいと思います」
暗田 帳「・・・え!?」
おじいさん「う、うむぅ・・・ まだ立候補者を確認しておらんのだが・・・」
おじいさん「誰ぞおるか!?」
おじいさん「で、では決まりじゃ・・・」
暗田 帳「そんな・・・」
久須間 ウエル(ざまぁみやがれw)

〇教室
おじいさん「文化祭の実行委員・・・」
暗田 帳「印伽君を推薦します」
印伽 夏木「は!?」
おじいさん「・・・異議のあるものは」
おじいさん「・・・では印伽君で決定じゃ」
久須間 ウエル「なんだかなぁ」

〇教室
久須間 ウエル(クラスの雰囲気・・・マジで悪いな)
久須間 ウエル(陰キャばっかで上手くいくと思ってたんだが)
久須間 ウエル(行事とか面倒事への押し付け合いがひでぇ)
久須間 ウエル(それにみんな結構好きなモンもバラバラだから)
久須間 ウエル(あんまり話しても盛り上がらねぇし・・・)
印伽 夏木「おい、暗田・・・」
印伽 夏木「お前マジでふざけんなよ」
暗田 帳「・・・うるさっ」
暗田 帳「こっちもやりたくもない体育祭実行委員やってんだから」
暗田 帳「少しは我慢しろよ・・・」
印伽 夏木「んだと」
印伽 夏木「ぶっ・・・ぶっ・・・ぶっぶっ・・・ ぶっ殺すぞ!!」
久須間 ウエル(おいおいおい)
久須間 ウエル(印伽のやつキレやがった)
久須間 ウエル(誰か止めろよな)
久須間 ウエル(誰も止めねぇ・・・)
  なんだよ・・・
  面倒くせぇなぁ・・・
  委員長が止めればいいよね
久須間 ウエル(そうだよ・・・委員長が止めろよ・・・ って・・・)
久須間 ウエル「俺じゃん・・・」
  委員長早く止めてよ
久須間 ウエル「おいおい、押すな!!押すなよ!!」
印伽 夏木「だぁぁああ!!」
久須間 ウエル「ぐううっっっ」
「ひっ、僕は僕は関係ないから!!」
「こいつが勝手に来ただけだ!!俺は悪くねぇ!!」
久須間 ウエル「なんなんだよ・・・」

〇黒
久須間 ウエル「みんな・・・仲良くやろうぜ」
久須間 ウエル「せっかく同じ陰キャなのによ・・・」
久須間 ウエル「・・・」
久須間 ウエル「同じと思ってたのは俺だけだったのかもな」

〇病室のベッド
おじいさん「おい!!」
おじいさん「おい!!久須間!!大丈夫か!!」
久須間 ウエル「はっ!?」
久須間 ウエル「こ、ここは・・・!?」
おじいさん「おお!!気がついたか!?」
久須間 ウエル「あれ・・・俺教室で刺されて・・・!?」
おじいさん「まだ寝ぼけておるのか・・・」
おじいさん「お前さんは帰り道の途中で気を失って倒れていたんじゃよ」
おじいさん「地蔵の前でな」
久須間 ウエル「えっ・・・」
久須間 ウエル「じゃああの陰キャ達のクラスは・・・!?」
久須間 ウエル(夢・・・だったのか!?)
おじいさん「まぁだそんな事を言っておるのか・・・」
おじいさん「まあよい・・・ なんともないのなら帰るぞ」

〇車内
久須間 ウエル「なぁじいさ・・・先生」
おじいさん「ん!?」
久須間 ウエル「俺、先生の言ってた事がわかった気がするよ」
久須間 ウエル「似た者同士のクラス作ってもさ」
久須間 ウエル「あんま上手くいかねぇんだろうなって」
おじいさん「なんじゃなんじゃ、急に悟ったような事を言いおって」
おじいさん「そもそもな・・・ あんまり生徒に言う事ではないんじゃが」
おじいさん「クラス決めはめちゃくちゃ大変なんじゃよ」

〇散らかった職員室
  成績、男女比率、性格、交友関係、部活
  そのほかにも色んな事を考えて
  ベストだと思うバランスを作りあげておるんじゃ・・・

〇車内
久須間 ウエル「そんな大変なんだな・・・」
おじいさん「エネルギー不要で分子を近い性質のもの同士振り分けることが出来るとされるマクスウェルの悪魔の」
おじいさん「全く逆の事をワシらはやっとるわけじゃよ」
久須間 ウエル「・・・」
おじいさん「それにな、人間はマクスウェルの悪魔の思考実験のように単純ではないぞ」
おじいさん「暗い、明るいといった二元論以外に」
おじいさん「好き嫌い、得意不得意、意外な一面・・・」
おじいさん「たくさんの要素を持っているもんじゃ」
おじいさん「お前さんも変に自分や他人を区別せずに勇気を持って話しかけてみるんじゃな」
久須間 ウエル「・・・そっすね」
おじいさん「まぁ、最初は勇気がいるわい でもな、それでも・・・」
久須間 ウエル「摩擦はないものとして接する・・・だろ?」
おじいさん「・・・う、うむ」
おじいさん(なんでワシが次年度の一発目の挨拶でやろうとしているネタを知って・・・)

〇教室
久須間 ウエル「・・・」
久須間 ウエル(先生には昨日話しかけてみろって言われたけどよ・・・)
久須間 ウエル(やっぱ・・・難しいぜ)
日野元 光「てか、昨日の動画もめちゃ面白かったね」
日野元 光「なんだっけ?TapNovelだっけ?」
要川 大表「おう!! でも、まだエフェクトとか効果音の使い方が慣れてなくてさぁ・・・」
久須間 ウエル「えっ!?」
要川 大表「ん!?どした!?久須間?」
久須間 ウエル「えっ、あっ、いや・・・」
久須間 ウエル(・・・)
久須間 ウエル「お、俺も、TapNovelやってんだよね」
要川 大表「えっ・・・」
要川 大表「まじかよ!!嬉しいぜこんな近くに仲間がいたなんて!!」
要川 大表「えっ、えっ、なんて名前でやってんの!?」
久須間 ウエル「ん、あ、ウェルキンソンって名前で・・・」
要川 大表「マジかよ!!俺読んでるぜ!!」
久須間 ウエル「えっ、嘘っ!?」
要川 大表「色々教えてくれよ!!俺まだ始めたばっかりだからさぁ」
久須間 ウエル「う、うん、いいよ」
日野元 光「なんか2人楽しそう!! 私も始めてみようかな!!」
久須間 ウエル「・・・」
久須間 ウエル(マクスウェルの悪魔なんてものが本当にいるかは俺はわかんねぇけど)
久須間 ウエル(混ざり合うってのも)
久須間 ウエル(悪くないもんだな・・・)

次のエピソード:募集 メタ地蔵 対策課

コメント

  • 「マクスウェルの悪魔」からこんなほっこりエンドになるとは😂
    人間を二極化して語ろうとすることの浅はかさ、勿体なさを教えてくれる素敵な回でした☺️
    めずらしい(?)ハッピーエンドで良かったです!

  • 途中から読んでもOKという言葉に惹かれ、特異地蔵を初体験させてもらいました!
    私は大学時代は理系の学科で、世間でいう陰キャだらけだったのですが(もちろん、私もw)、いざ話してみると、みんなそれぞれ違ってとても面白かったです。大事なのは分離でなく、コミュニケーションによる相互理解。この作品を通して改めて感じました^^
    他地蔵、タイトルからは想像できないものも多く、また楽しませてもらいます!

  • 主人公も前向きになれたし、おじいさんの扱いがすごく良かったし、うーんいいお話ですね。
    でも、光とか闇とかいわれると心がざらざらする!!これが闇か😭!

成分キーワード

ページTOPへ