死神候補生のインターン

サトJun(サトウ純子)

田舎はイヤだ!(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
  本当は、キラキラした都会で

〇ケーキ屋
  美味しいかき氷屋さんに行って
  人間界を満喫するはずだった

〇田舎町の通り
死神候補生デス「なのに・・・」
死神候補生デス「なんで今回はこんな田舎なのよ!」
死神候補生デス「夏じゃないし、かき氷も売ってないじゃない」
死神候補生デス「コンビニもないし、街は日が沈むと共に真っ暗になるし・・・」
死神候補生デス「おまけに、対象者はじいさん!」
死神候補生デス「・・・」
死神候補生デス「さっさと終わらせて帰ろう」

〇昔ながらの一軒家
死神候補生デス「・・・えっと。ここね」
一郎「こんにちは。今日も良いお天気ですね」
近所の人A「ホントにねぇ。 たえ子さんの調子はどお?」
一郎「おかげさまで、のんびりやってます」
近所の人A「何か困った事があったら、声かけてくださいね!」
一郎「はい。ありがとうございます」
  【一郎】
  11月11日。18時12分。
  買い物帰りに転倒。
  頭を強打。入院。
  
  ◆23時03分に病院にて魂回収◆
死神候補生デス「・・・なるほど、この人か」

〇実家の居間
一郎「たえ子さん。 外に綺麗な花が咲いていたよ」
たえ子「・・・あら、そうなんですね」
たえ子「・・・」
たえ子「・・・どなか存じ上げませんが」
たえ子「わざわざ私の面倒を見てくださって、ありがとうございます」
一郎「たえ子さん。私ですよ。 一郎です」
たえ子「一郎・・・さん?」
一郎「あなたの夫の一郎ですよ。 ずっと一緒に暮らしていましたし、いつも一緒にいますよ」
たえ子「あら、本当だ。一郎さんだわ」
たえ子「・・・」
たえ子「一郎さん。もしかして私、今、変な事言いました?」
一郎「いいえ。外に咲いている花の話をしていただけですよ」
たえ子「ならよかった」
死神候補生デス「・・・なるほど。 このばあさんは認知症が入っているのか」
死神候補生デス「ばあさんが先の方が良さそうなのに・・・」
一郎「いやいや!それは困ります。 私が辛くて生きていけません!」
死神候補生デス「じ、じいさん、私が見えるのか!?」
一郎「さきほど、家の前にいましたよね? 死神さんですか?」
死神候補生デス「死神・・・ではなく、死神候補生だ!」
死神候補生デス「・・・じゃなくて」
死神候補生デス「わ、私が怖くないのか?」
一郎「こんなに可愛らしいのに、怖いわけないじゃないですか」
死神候補生デス「か・・・可愛らしい?」
死神候補生デス「・・・じゃなくて!」
死神候補生デス「私がいる事は内緒にしておいてくれ」
一郎「はいはい。わかってますよ。 ささ。お茶、どうぞ」
死神候補生デス「私はかき氷の方が良いのだが・・・」
死神候補生デス「う、うんまぁーい!」
一郎「気に入って貰えてよかった!」
死神候補生デス「はっ!しまった!死神の威厳が!」
死神候補生デス「なんかやりにくいなー」
「馳走になった!」
一郎「・・・」
一郎「そうか、私が・・・」

〇ボロい家の玄関
一郎「突然、悪いねぇ」
さゆり「取り急ぎ 私が先に来れるようにしておいたから」
一郎「無理してないかい?」
さゆり「やだ、お父さん。 すぐ近くに住んでいるんだから 全く問題無いわよ!」
一郎「なら、良かった」
一郎「後の事は頼んだよ」
さゆり「・・・」
死神候補生デス「を?こっちを見てる?」
さゆり「・・・ホントだ。いる」
死神候補生デス「こやつも見えているのか?」
さゆり「私には黒い人影にしか見えないけど」
死神候補生デス「見えてないんか!」
さゆり「死神さん。 無理を承知でお願いします。もう少し父を生かしていただけないでしょうか」
死神候補生デス「変更は無理だわ。 ちなみに『死神候補生』な!」
さゆり「・・・聞こえるわけないか」
死神候補生デス「聞こえてないのか・・・」
さゆり「ったく。 生い先短い年寄りなんだから、もう少し放っておいてくれたらいいのに」
死神候補生デス「仕方がないでしょ! こっちもそれが仕事なんだから」
さゆり「でも・・・」
さゆり「死神さんのおかげで、こうして慌てずに準備ができたのも事実」
さゆり「死神さん。ありがとう」
死神候補生デス「・・・」

〇実家の居間
  11月11日
たえ子「一郎さん。 なんだか急にアイスクリームが食べたくなりました」
一郎「アイスクリーム! 久しぶりに良いですね。 ちょっと買いに行ってきます」

〇郊外の道路
一郎「やれやれ。 たえ子さんの好きなアイスを探していたら、遅くなってしまった」
一郎「でも、見つかって良かった。 今日は大事な日だから」
一郎「たえ子さんの喜ぶ顔が目に浮かぶ」
一郎「よし!急いで帰ろう」

〇実家の居間
  人間なんて
  本当につまんない事で
  死んでいく──
死神候補生デス「・・・」
  11月11日
死神候補生デス「なぁ、じいさん。 今日はなんか特別な日なんかい?」
一郎「そうなんですよ。 『箸の日』なんです!」
死神候補生デス「箸って、あの飯を食う時使うヤツか?」
一郎「そうです。 そして。私たちの結婚記念日でもあります」
死神候補生デス「そっちの方が大事だろ!」
一郎「『箸の日』も大事なんですよ」
一郎「私たちは、二人でないと何者でもない 何もできない夫婦でした」
一郎「箸と一緒なんです」
死神候補生デス「なるほど」
死神候補生デス「二本ないと意味がない、か」
死神候補生デス「・・・」
たえ子「一郎さん。 なんだか急にアイスクリームが食べたくなりました」
一郎「アイスクリーム! 久しぶりに良いですね。 ちょっと買いに行ってきます」
死神候補生デス「じいさん! 行っちゃダ・・・」
死神候補生デス「・・・」
「あら、お父さん。どこ行くの?」
「買い物に行って来ようかと。 たえ子さんがアイスクリームを食べたいって言うから」
「あら、それなら私が買って来てあげる」
「なんだか昨夜、嫌な夢見てね」
「ちょうど結婚記念日だし、何か欲しいものがないか聞きに来たところ!」

〇昔ながらの一軒家
死神候補生デス「じゃ、そろそろ帰るわ」
一郎「帰る? 私の命をとりに来たんじゃないのですか?」
死神候補生デス「そ、そのはずだったんだが・・・」
死神候補生デス「・・・」
死神候補生デス「急遽あっちの人数が増えたらしく、受け入れが間に合わないらしくて」
一郎「そんなこともあるのですね?」
一郎「まぁ、長くはないのでしょうから、残された時間を、たえ子さんと大事に過ごします」
死神候補生デス「じゃ!また、私が来るからな!」
一郎「美味しいお茶、準備しておきますから」
  次来る時は
  立派な『死神』になって
  二人一緒に『一膳』で
  連れて行くからな!

〇魔王城の部屋
死神候補生デス「ふぅ。なんか良い気分だ」
「デスー! おまえ、またやりおったな!」
死神候補生デス「指示書にお茶をこぼしちゃって日にちがわからんくなって・・・」
「バツとして、一週間のトイレ掃除!」
死神候補生デス「マジか・・・」
「・・・」
「・・・ま、いっか」

コメント

  • 素敵なお話でした✨
    デスのキャラが可愛くて人間味溢れてていいですね!
    温かいお茶が飲みたくなりました😊

  • うわー。出てくるキャラみんな愛おしい。とくにデス!情にもろい死神候補生という設定がとても好き。表情にあわせて手が動くの、とても良いですね。サトJUNさんもタップノベルもどんどん進化してる!

  • 心が震えました!
    可愛いだけじゃないデスちゃんとのハートフルな物語、最高です!死と生、都会と田舎、かき氷と温かなお茶、こういった対比も好きです!

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