11.嘘から出た真(脚本)
〇駅前ロータリー(駅名無し)
〇改札口前
粟島研究員「東能大駅からはタクシーを使うんだ コレ、持ってきなさい!」
長岡茉莉「すみません、お借りします!」
粟島研究員「・・・・・・・・・」
粟島研究員「今の音は・・・特急の最終便か 茉莉さん、乗れたみたいだな」
粟島研究員「ハナビちゃん、無事だといいけど・・」
粟島研究員「──仕事に戻ろう 3日以内に結果を出さなきゃ」
粟島研究員「解析の続きだ!」
〇大きい研究所
〇研究施設の廊下(曲がり角)
粟島研究員「おや?」
〇研究開発室
粟島研究員「明かりがついてる? 誰か帰って・・」
「はっはっは!」
糸魚川教授「こんばんは粟島くぅん! 遅くまで頑張ってるねぇ!!」
粟島研究員「糸魚川先生! なぜここにっ!?」
粟島研究員「もうテッペン超えてますよ 夜分遅くになぜ・・」
糸魚川教授「よくやってくれた!!!!」
粟島研究員「は、はい?」
糸魚川教授「例の隕石だよ! 手に入ったじゃないか!!」
粟島研究員「ああ、いや 一時的に借りて・・」
糸魚川教授「約束通り、解析はキミが担当だ! 存分に調べ尽くしたまえ!」
糸魚川教授「ただーしっ!! ウチではないぞ!」
粟島研究員「は?」
粟島研究員「コレはっ──!?」
粟島研究員「世界の知の集積地! 地球惑星科学の雄!!」
粟島研究員「米アゾナ大学への紹介状ッ──!?」
糸魚川教授「私も3年ほど武者修行した かつての古巣だ」
糸魚川教授「今でこそ宮仕えだが、かの大先生 Prof.ウィラメットもいらっしゃる」
糸魚川教授「隕石とともに行きたまえ キャリアとしてこれ以上はあるまい?」
粟島研究員「糸魚川先生ッ!」
粟島研究員「マジかよ・・・最高だ!」
粟島研究員「人、機材、金! 全部揃った理想郷!」
粟島研究員「ありがとうございます! 近いうちに是非・・・」
糸魚川教授「何を勘違いしとる?」
粟島研究員「えっ?」
粟島研究員「糸魚川先生!? まだ解析の途中で──」
糸魚川教授「続きはアゾナ大でするんだ 今、すぐにな」
糸魚川教授「飛行機は予約済みだ キミ、パスポートを用意しなさい」
粟島研究員「いや、先生すみません 借り物なので勝手には・・」
粟島研究員「うおっ、誰だっ!?」
糸魚川教授「おお、迎えの方も来たようだ」
ピークスキル「イヨッ、イトイガワ! コンチワッショイ!」
ピークスキル「オトトイキヤガレ! マイド、オーキニ!」
糸魚川教授「激しく挨拶を間違えているが キミの付き添いだよ」
糸魚川教授「さ、行きなさい くれぐれもよろしく伝えるように」
粟島研究員「・・・準備が良すぎる 僕以外も誰か動かしたな?」
粟島研究員「となると、ハナビちゃんの 危篤電話も仕込みか ・・・安心した」
粟島研究員「なら、僕は────」
粟島研究員「ありがとうございます」
粟島研究員「不肖、粟島・・ 北米にて鍛えて参ります!」
第11話
嘘から出た真
〇大きい研究所
翌朝
10月28日
あんの粟島ぁぁあ!!!!
隕石盗みやがったっ!!!!
取り返す?取り戻せる!?
海の向こうまでっ!!!?
ムリ、北米アゾナまで
片道20時間かかる!!
対して期限は残り4・・いや3日!
編成会議に間に合わない!!
どうする、どうする、どうする!?
もう隕石の証明とか以前の問題だ!!
警察に相談する?でも国外・・
取り返せるかは厳しい!!
なら、研究所を訴えようか?
慰謝料をふんだくって・・
ダメだ、もし訴訟が長引けば
ハナビの体がもたない!
なら騙されたと告発して
同情を、寄付を・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
長岡茉莉「ふー・・・・・・」
長岡茉莉「いや、待て 落ち着こう」
長岡茉莉「隕石は盗られた でも、まだだ」
〇劇場の舞台
計画を思い出せ
初めからオークションのみで
3億稼げるとは思ってない
私の動機は例の記事で
世間に知れ渡った・・ハズ
オークション番組さえ開ければ
注目度は十分
目標額『未達成』で同情を誘い
瞬間、募金を呼びかける
大事なのはソコ
結果さえ、今さえカネが集まれば──
隕石がホンモノかどうかは
別にどうでもいい
〇大きい研究所
長岡茉莉「────やるしかない」
長岡茉莉「クレーターはホンモノ 隕石落下もホンモノ」
長岡茉莉「本命は募金 千載一遇のチャンス」
長岡茉莉「なら一個くらいニセモノが混じっても」
長岡茉莉「オークションさえ開催できれば 私は────!!」
〇テーブル席
「いや・・・」
佐渡トキ子「通るわけないでしょうっ!!」
佐渡トキ子「な・ん・で、こうなったんですか!!?」
佐渡トキ子「本物証明のため鑑定するハズが・・」
佐渡トキ子「盗まれて、あまつさえ 代わりにニセモノを出すぅ!?」
佐渡トキ子「本末転倒ですよマツリちゃん!!!」
長岡茉莉「うぅ・・ 返す言葉もないです・・・」
佐渡トキ子「それにっ! ニセモノで押し通るなら!」
佐渡トキ子「この佐渡トキ子すら騙し切るほど 最初から徹底しないと・・・」
佐渡トキ子「・・・・・・いや」
佐渡トキ子「裏切られた直後でしたね」
佐渡トキ子「誰も信用できないのではなく 誰かを信用したかったのか」
佐渡トキ子「いま、この子には相談できる オトナがいない・・・」
佐渡トキ子「ふぅ・・・」
佐渡トキ子「告発しましょう オークションどころじゃない」
佐渡トキ子「番組企画も練り直します 隕石を法的に取り戻すんです」
佐渡トキ子「3億・・とまでは言いませんが 裁判になれば何かしらお金も・・」
長岡茉莉「それじゃ間に合いません!」
長岡茉莉「ハナビに残された時間は もうないのだからっ!!」
佐渡トキ子「でも精巧なニセモノで 騙すだなんて・・・」
長岡茉莉「その場しのぎでいいんです!」
長岡茉莉「ひとまず番組を成立させるため 代役を立てましょう!」
長岡茉莉「ホンモノは取り返した後に お渡しする約束で!」
長岡茉莉「とにかく今だけは・・・!」
佐渡トキ子「むむむむ・・」
佐渡トキ子「無計画で無鉄砲・・ オマケに浅知恵です」
佐渡トキ子「私の大事な出世街道を こ〜んな泥舟には預けられません」
佐渡トキ子「到底賭けるに値しない話・・・」
〇源泉
しかし
オークション番組の発案者は
私なのだから
分が悪くなったとはいえ
投げ出すのは違いましたね
この佐渡トキ子、己が将来より
守るべきスジがあります
〇テーブル席
佐渡トキ子「なにより、ここで立たなきゃ 女が・・・・・・いいえ、」
佐渡トキ子「ここでやらなきゃトキ子がすたる!」
佐渡トキ子「────マツリちゃん」
佐渡トキ子「今の話は聞かなかったことにします」
長岡茉莉「そんな!トキ子さ・・・」
佐渡トキ子「ところでっ!!」
佐渡トキ子「こちら、ご存知ですか? 以前に取材したことがありまして」
佐渡トキ子「知る人ぞ知る石大工・・ 業界では名匠と謳われています」
長岡茉莉「トキ子さん?」
佐渡トキ子「あと・・・おや?」
佐渡トキ子「あら不思議、こんな所に 隕石の映像データが!」
佐渡トキ子「毛穴も見透かす4K画質 隕石の模造ひ・・いえ、」
佐渡トキ子「──何かを作る参考にできますね」
長岡茉莉「トキ子さんッ!」
佐渡トキ子「更にこんな方も」
佐渡トキ子「元パスポート偽造のプロ 証明書等もお手のもの」
佐渡トキ子「それらしい鑑別書を 作ってくれそうです!」
長岡茉莉「トキ子さん・・」
長岡茉莉(なぜそんな知り合いが?)
佐渡トキ子「さて、役割は分かりましたね?」
佐渡トキ子「私こと佐渡トキ子は番組の下準備を」
佐渡トキ子「マツリちゃんは隕石の代役と証明書 つまり・・」
「『イモ引き連中をオトす材料』」
長岡茉莉「・・・でしたね!」
佐渡トキ子「ええ、そうです!」
佐渡トキ子「・・」
佐渡トキ子「この先は詐欺の片棒と言っても 過言ではありませんが・・」
佐渡トキ子「いっちょ腹を括りますか!」
〇黒背景
──所かわって
〇諜報機関
北米治安維持局
North American
Public Order adm.
圏外調査部
Exo-Atomosphere
Research Division
ウィラメット「はぁ」
ウィラメット「お役所仕事は肩が凝りますね」
ウィラメット「久しく大学へ戻っていません アゾナの空気が恋しいです」
ウィラメット「おや、メールが・・」
ウィラメット「・・・ふむ、隕石は確保と Mr.妙高、良い仕事です」
ウィラメット「ん、付属品も少々・・ 研究員アワシマ?」
ウィラメット「糸魚川さんの部下ですか 「使うも捨てるもご自由に」」
ウィラメット「なるほど、スケープゴートですね」
長官「例の『Uー1の破片』か?」
ウィラメット「これは長官、夜分に珍しい」
ウィラメット「浮気でもバレましたか? さぞかし帰り難いでしょう」
長官「生憎だが、妻とは既に別居している」
長官「残業だよ セキュリティ連中から申請があった」
長官「アクセスログを丸洗いしたいそうだ」
ウィラメット「クラッキングでも受けましたか?」
長官「分からん 可能性がある、という話だ」
長官「どうせ相手は決まってるがな 忌々しい・・」
ウィラメット「苛立っていますね 矛先が向く前に退散しましょう」
〇大きい研究施設
ウィラメット「Uー1のカケラ、来訪者の落とし子」
ウィラメット「懐も痛まず、敵にも気取られず 手に入りそうで何より・・」
ウィラメット「・・」
ウィラメット「イヤに胸騒ぎがしますね 無事届くのでしょうか?」
〇大きい研究施設
〇大きい研究施設
〇諜報機関
ウィラメット「ダメですね、注意散漫です」
ウィラメット「こんなに待ち遠しいとは・・ 年甲斐もなく高揚しているのか」
ウィラメット「いったいどんな・・」
???「Knock knock !!︎」
ウィラメット「トントンギャグ? もしや──」
ウィラメット「どなたでしょう?」
???「Yeah」
ウィラメット「イエァって誰です?」
ピークスキル「I’m home? No‥‥」
ピークスキル「I’m Yeah(家) !!!」
ピークスキル「HAHAHA!! 日本語との合わせ技だゼ!」
ピークスキル「『ただいま(l’m home)』だと フツー過ぎてツマンネーだろォ?」
ピークスキル「日本語の家(イエ)に変えて Yeahと掛けたって訳ダ!」
ウィラメット「・・・・・・なるほど」
ピークスキル「Heyボス!!元気してたかィ!?」
ウィラメット「元気だったのですがね 今の会話で気が抜けました」
ピークスキル「Oh!?そいつぁ良くねぇ!」
ピークスキル「もういっちょやるカ! Knock-Knock!!︎」
ウィラメット「・・どなたでしょう?」
ピークスキル「Meat-eater」
ウィラメット「ミートイーター(肉食動物)? 誰でしたっけ?」
ピークスキル「I’m meat-eater, and・・」
ピークスキル「It’s what you want, Sir. (あなたが望むモノですよ、先生)」
ピークスキル「Meteor (隕石です)」
ウィラメット「ハッハー! 待ってました!!」
ウィラメット「Meat-eaterとMeteorには ため息でしたが・・」
ウィラメット「些末なコトでしたね さてご対面──」
ウィラメット「──────────」
ウィラメット「──────────・・」
ウィラメット「ピークスキルさん、ひとつ 私もやりましょうか」
ウィラメット「Knock-knock・・」
ピークスキル「ノックノックジョーク! ボスもノリノリだゼ!」
ピークスキル「どちら様ですカ?」
ウィラメット「Humpty Dumpty (ハンプティダンプティ)」
ピークスキル「ハンプティダンプティ? 誰でしたっけ?」
ウィラメット「Empty,Dammit. (エンプティ ダミィット)」
ウィラメット「開けてみなさい」
ピークスキル「─────────── ──────────Oh」
ウィラメット「ハコの中は・・」
ウィラメット「Empty!! Dammit!!!! (空っぽだ!! クソがッ!!!!)」
〇研究開発室
+1-XXX-XXX-XXXX
糸魚川教授「国際電話?」
糸魚川教授「はい、糸魚川・・」
糸魚川教授「おぉ!ウィラメット先生! ご無沙汰を──」
糸魚川教授「────は? 隕石がない?空っぽ?」
糸魚川教授「そんなハズは! 私は確かに入れて・・」
糸魚川教授「粟島研究員? いえ、粟島は居ません」
糸魚川教授「迎えに来た方と共に そちらへ向かったハズ・・」
糸魚川教授「──は?空港で別れた?」
糸魚川教授「・・わかりました! 私の方からも探します!」
糸魚川教授「決して、決して裏切った ワケではありませんから!!」
糸魚川教授「バカな、何を考えている! この糸魚川の顔を潰しよって!!」
糸魚川教授「しかしなぜだ!? キャリアをドブに捨てる気か!!?」
糸魚川教授「どこだ・・・」
〇大きい研究所
「どこへ消えよった!! アワシマァァァッ!!!」
〇黒
粟島、隕石を持って失踪
少し時間を遡り──
〇空港の外観
10月28日、午前6時
日本・成金国際空港
〇空港のロビー
完全に行く流れだったろうに。
粟島くん、良心が勝ったか。まだ気になる謎は色々残っていますが…。
ジョークのレベル高いなぁ!
粟島くん、やってくれる😆
信じてたでー粟島!
偽物ではなくエンプティーをつかまされるのはあまりにも迂闊すぎる笑
にせものを作るまでもなく本物が戻る…
とは…
いかなそう…