場末ノZ

山本律磨

Paraiso(Ⅱ)(脚本)

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〇洋館の廊下
武藤「・・・」
塚越「お・・・」
塚越「今日、マリア休みじゃなかったか?」
武藤「はい」
塚越「何でいるの?」
武藤「従業員なんで」
塚越「真面目だね。ムーちゃん」
塚越「それともゾンビだから、言われたことしか出来ないのかな?」
塚越「・・・」
武藤「あの」
塚越「なに?怒った?」
武藤「いえ。あの壁の写真の人・・・」

〇魔法陣2

〇洋館の廊下
塚越「惚れた?」
塚越「暁ルナ。かつてのナンバーワン」
塚越「俺が店買い取る前だから、20年くらい前だな」
塚越「残念~。もうオバちゃんになってるよ」
武藤「・・・」
塚越「ステージ録画したの残ってて、それマリアに観せたら感動しちゃってさ」
塚越「後にも先にもあそこまで心が動いてる姿を俺に見せたのはあれだけだった」
塚越「それだけルナのステージは、剥き出しって言うか鬼気迫るって言うか」
塚越「今度ムーちゃんにも観せたげよっか?」
武藤「いえ。いいです」
塚越「あっそ」
塚越「・・・」
塚越「こちょこちょこちょこちょ!」
塚越「くすぐったいのは平気なんだ」
武藤「はい」
塚越「なあ。痛みを感じないってどんな気分?」
武藤「痛みを感じないって感じです」
塚越「・・・」
塚越「じゃあ、熱いのは?」
武藤「別に」
塚越「じゃあこういうのはどうかな?」

〇施設の男子トイレ
「ごぼっ!ごぼっ!」
塚越「そっか。苦しいのはアリなんだ」
武藤「ぐはっ!」
塚越「水道水で申し訳ないけど。まあ眠気覚ましに遠慮なく飲んでね」
武藤「うぐっ!うぐっ!」
塚越「いいね~。やっと人間っぽいリアクションしてくれたね~」
塚越「人間は、むき出しで生きないとね~」
塚越「マリアには才能があるんだからもっと自分を曝け出してほしいんだ」
塚越「君はマリアの魅力を引き出すために、そのために雇われてるんだよね」
塚越「ちゃんとやってよ!ちゃんとあの娘の心を動かしてよ!」
塚越「ねえ!ねえ!ねえ!ねえ!」
武藤「ぶはっ!ぐぼっ!ごぼっ!げほっ!」
武藤「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
「苦しい?」
塚越「苦しい?ねえ、苦しい?」
塚越「苦しい?苦しい?どう?どう?どう?」
武藤「げぼおおおおおおおおおおお!」

〇病院の診察室
毒取「熱すぎるかね?」
マリア「ちょっと」
毒取「熱いのをちびちび飲むのが好きなんだ」
毒取「猫舌ゆえにな!」
毒取「まあ若いんだから、腫れくらいすぐ引くだろう」
マリア「ありがとうございます」
毒取「・・・何か話でもあるのかね?」
毒取「なんでそうなったと聞いてほしいかね?」
マリア「別に」
毒取「では聞こう」
毒取「誰かに玩具にされたか?」
マリア「・・・」
マリア「こ、転んだだけです!そ、それにお昼まで寝てたから、その、夜開いてる病院ここだけだし、ちょっと診てもらおうと・・・」
毒取「転んで顔だけが腫れるか」
マリア「・・・」
毒取「ダンスは顔で踊ると、何かのテレビでやっていた。売り物は大事にしろ」
毒取「身体は心ほど鈍感ではない。アンタが思っているよりもはるかに損傷している」
毒取「塚越に妙な借金こさえてるなら、早く警察に行って町を出ろ。それが私の診療だ」
マリア「身体をいとえってんなら、武藤さんに言えばいいじゃないですか」
マリア「あの人こそ、こんな微妙な口コミレビューの診療所よりも、大きな病院で見てもらうべき病状じゃないですか」
毒取「微妙な評判で悪かったな!」
毒取「怖いのだろう。病院が。検査の結果が」
マリア「健康診断じゃあるまいし」
毒取「ハムスターにされるんじゃないかと思っているようだ」
マリア「ハムスターにされる?」

〇総合病院

〇病院の診察室
マリア「・・・なんで?」
毒取「例え生爪剥がされても血圧脈拍異常なし。そんな珍しいデータがあいつの病気なんだ」
毒取「研究者にとっては格好の材料と思わんか?」
マリア「それってモルモットってことですか?」
毒取「・・・!」
毒取「じょ、冗談に決まっておろう。ホスピタルジョークである」

〇飲み屋街
  『無痛症ってのは元来先天的なものだから普通は成人まで感染症や決定的な骨折によって死亡する』
  『ところがあいつは、中学高校から徐々に進行が進んで、成人した後症状が現れた』
  『痛覚統合機構の欠損か、修飾機序の欠損か、或いは前頭葉の情動的なものに欠陥があるか』
  『とにかく未知の病気である事は確かだ。あいつの研究結果に舌なめずりするような教授方もごまんと出てくるだろう』

〇病院の診察室
マリア「そういう先生はどうなんですか?医者として武藤さんの症状に興味はないんですか?」
毒取「私はこうみえてドクター様子見で通っているのだ!面倒な患者は御免被る!」
マリア「胸張って逆切れするようなあだ名ですか」
毒取「ひとつ興味深い事を教えてやろう」
毒取「行人はほとんど睡眠をとらない」
毒取「眠いと自覚できないのだ。何故だかわかるかね?」
マリア「分かるわけないじゃないですか」
毒取「だろうな。一般の方には少し酷な質問だったか・・・」
「・・・」
マリア「え?聞いてほしいんですか?」
毒取「そこまで言うなら教えてやろう!」
マリア(毒取医院。ウデはいいが主治医の正確に難アリ。星0.5)

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