21話 見えない敵(脚本)
〇闇の闘技場
アマデウス「行け!」
宿利ユウ「え・・・?」
ヴィオ「何をしておる。貴様も早く行かぬか」
宿利ユウ「いや、でも、転移陣の使い方なんてわからないし」
リーナ「陣から陣に飛ぶのはそれほど難しくない。 今のユウならできるはずよ」
リーナ「私は先に行くね」
宿利ユウ「あ・・・」
トゥルカナ「みんなもう行っちゃったよ。 キミは戦いが始まる前に敗退かな?」
宿利ユウ「そんなことないっ」
スキルは自然に使えたけど、魔法の使い方なんてわからない。
魔族たちはどうやってたんだ?
・・・この世界に来る時のあれも、転移魔法か?
〇魔法陣2
世界の壁を越えてしまったあのとき──
僕は、教室ではないどこかに行きたかった。
〇闇の闘技場
宿利ユウ「あっ」
ヴィオ「やれやれ、やっと行ったか」
トゥルカナ「先が思いやられるね」
〇雪山
宿利ユウ「ここは・・・」
寒・・・くない。
ゴーストの体で助かった。
転移魔法、成功したんだ。
これって、どれくらいMPを使うんだろう。
宿利ユウ「え・・・?」
MPが、空っぽ!?
転移魔法って、こんなに大変だったのか!
恐角族・緑「んん? 貴様は、場違いな異世界人か」
宿利ユウ「あなたは?」
恐角族・緑「俺と同じ場所を選ぶとは、愚かな奴め」
恐角族・緑「目障りだ。消えろ」
しまった。反応が遅れて──
宿利ユウ「うっ」
恐角族・緑「フン。これでひとり、候補が減った」
〇霧の中
下の雪が柔らかかったおかげで、助かった・・・
まさか、ライバルとはいえ味方に攻撃されるなんて。
少し休まないと動けそうにない。
でも、悠長なことをしていたら、あいつに先を越されてしまう。
別の場所に転移し直すMPなんてないのに・・・
宿利ユウ「ん?」
宿利ユウ「うわ!」
逃げて行った。あれは、魔族か?
宿利ユウ「待ってください!」
〇雪山
宿利ユウ「あの、僕は魔王軍の宿利ユウというんですけど・・・」
雪男「魔王軍・・・?」
雪男「ああ、魔王軍の方でしたか!」
雪男「それはよかった。 サピエンスかと思って驚きましたよ」
宿利ユウ「ゴースト族なんです」
雪男「なるほど。魔王軍の方が、こんな雪山に何のご用で?」
宿利ユウ「魔石の魔獣を探しに来ました」
宿利ユウ「この辺にいるといいんですけど・・・」
雪男「ああ、あれのことでしょうか」
雪男「近頃、急に暴れ出して、困っていたのです」
雪男「退治していただけるとありがたいのですが・・・」
宿利ユウ「その魔獣って、どこにいるんですか!?」
〇空
雪男「いつも、空高く舞い上がっていますよ」
雪男「ゴースト族の方なら、空を飛んで追いかけられるでしょう?」
ユウ「・・・」
ユウ「・・・僕、飛べません」
〇雪洞
宿利ユウ「すみません、お世話になってしまって」
魔石を取り込んで強くなったつもりでいたけど、できないことばかりだな・・・
魔王軍四天王──
作りたいとは言ったけど、やっぱり僕がなれるとは思えない。
雪男「そう難しい顔をなさらないで。これでも召し上がって、元気を出してください」
宿利ユウ「・・・ありがとうございます」
雪男「長老、こちらの方は?」
雪男「魔王軍のユウさんです」
雪男「おお、魔王軍の!」
宿利ユウ「魔王軍って、この辺でも有名なんですか?」
雪男「ええ。この山では、昔からときどき魔石が出ることがありまして」
〇雪山
雪男「しかし、この辺の獣人族は戦いに向かず、だれにも魔石狩りなどできなかったのです」
そこに突如として舞い降りたのが──
アマデウス「お前たち、怪我はないか?」
〇雪洞
宿利ユウ「アマデウスさんが・・・」
雪男「あれから魔王様はこの雪山に転移陣を築き、我らを守ってくださっています」
雪男「今回もこうして使者を送ってくださるとは、ありがたい限りです」
うう、プレッシャーを感じる・・・
フローラ島もそうだったけど、魔王軍って色々なところを守ってるんだな。
僕も、アマデウスさんみたいに──
宿利ユウ「え・・・?」
恐角族・緑「うぐ・・・」
宿利ユウ「お前は!」
恐角族・緑「生きていたか、ゴースト」
恐角族・緑「すぐに魔王様を呼べ! あの魔獣は手に負えん!」
宿利ユウ「何だって!?」
雪男「あのー」
雪男「うわあああ!」
宿利ユウ「大丈夫ですか!?」
『対象を確認できません』
今、何に襲われたんだ!?
宿利ユウ「みんな、洞窟の中に入って!」
宿利ユウ「怪我人も頼む!」
恐角族・緑「す、すまない・・・」
雪男「早く、こっちだ!」
〇雪洞
宿利ユウ「くっ・・・」
どこにいるんだ!?
宿利ユウ「僕を狙って来い!」
まさか、反撃の効果を読まれた!?
雪男「ぎゃあああ!!」
ダメだ・・・
――僕の力では、アマデウスさんみたいにみんなを守れない!
宿利ユウ「誰か、転移陣を使える人は?」
恐角族・緑「もうMPがないんだ」
雪男「俺たちのMPじゃ、そもそも転移陣を使えない」
そうか。せめて、『これ』があってよかった・・・
しまった! 電話が・・・!
雪男「長老!?」
雪男「うう・・・」
助けられない。
僕は助けてもらったのに・・・
このままじゃ、全員死なせてしまう!
宿利ユウ「そんなの、絶対に嫌だ!」
〇モヤモヤ
〇雪洞
『反撃のスキルレベルが上がりました』
宿利ユウ「・・・」
宿利ユウ「おい、お前は何に襲われたんだ!?」
恐角族・緑「わからない・・・が、目にもとまらぬ速さで動くものだ!」
見えないのは、姿を隠しているからじゃないのか。
宿利ユウ「電話は?」
恐角族・緑「谷底に落とした」
宿利ユウ「動けるなら、今すぐ拾いに行ってくれ!」
恐角族・緑「・・・」
『スキルレベルの上昇効果は、攻撃誘発です』
宿利ユウ「・・・来い」
あれが、高速で動くものの正体・・・!
宿利ユウ「あの魔獣は僕が引き受ける! 早く行って!」
恐角族・緑「――わかった」
宿利ユウ「お前の相手は僕だ!」
やっぱり、目で追えない──
スキルで攻撃を誘発しても、避けられたら意味がない。
〇黒
〇雪洞
宿利ユウ「うわっ!」
どこから・・・!?
雪男「ユウさん!」
宿利ユウ「今のうちに、隠れてください!」
雪男「しかし、魔王軍のあなたを犠牲にして助かるなど──」
宿利ユウ「犠牲・・・?」
この人は、僕が死ぬと思ってるのか。
宿利ユウ「そんなこと、考えてもいませんでした」
宿利ユウ「必ず生き残ると、約束しましたから」
宿利ユウ「離れて!」
『対象を確認できません』
これでは体力を削られていく一方だ。
せめて、どの方向から攻撃してくるかわかれば・・・
〇雪山
開けた場所でやり合っても勝てない。
走れ。雪男たちの住処から離れて、別の雪洞を見つけるんだ。
足を、やられた。
もう逃げ回ることはできない。
こんな、広い場所で・・・
〇雪洞
雪男「魔獣は・・・?」
雪男「ユウさんが引きつけてくださいました」
雪男「勝てそうには見えなかったが・・・」
「・・・」
雪男「そうですぞ!」
雪男「みんなの力を貸してください。 ユウさんを応援するのです!」
〇宇宙空間
見えない時とのバトル、設定通りのスピードを感じられる演出と相まって、迫力満載でした!
今回ライバル役の魔族は、案の定な展開。こういう王道展開は好きです。笑
レベル上げという概念は、現実でもほしいですよね^^創作活動はレベルアップしたかの判断がつかない…