〇学校の部室
アユム「すいません、４年生なんですけど 入部できますか？」
　　そう言って、
　　漫研の部室に入ってきたのが
　　アユムさんだった。

〇大学の広場

〇学校の部室
アユム「俺さ、ゲイなんだよね」
　　部室で二人きりになったある日、
　　アユムさんは
　　突然カミングアウトしてきた。
かなめ「そうなんすね」
アユム「リアクション薄いな！」
かなめ「いや、例えば 『左利きなんだよ』って言われても 『へぇ』ってなるじゃないですか」
アユム「俺のカミングアウト、 『左利き』と同レベル？」
かなめ「まぁ、私にとっては」
かなめ「違う反応が良かったですか？」
アユム「いや、かなめちゃんはそれでいい」
　　アユムさんは笑っていた。

〇大学の広場

〇学校の部室
かなめ「こう？　う～ん、違うな・・・」
アユム「何してんの？」
かなめ「四つん這いになったキャラ 描いてるんですけど、」
かなめ「いまいち 肩の位置とか手足のバランスが・・・」
かなめ「あー、全部消して描き直そう」
アユム「俺、いいの持ってるよ。 待って、今カバンから出す」
かなめ「マジですか。ポーズ集とか？」
アユム「はい、これ」
アユム「前にゲイ仲間と一緒に撮ったやつ」
　　差し出されたのは、
　　四つん這いで笑うアユムさんの
　　全裸写真（無修正）だった。
かなめ「ぎゃああああああ!!」
アユム「うわ、投げんなよ！」
かなめ「いきなり何を見せるんですか!!」
アユム「いや、ポーズ的に似てたし。 ちょうどいいかな、って」
アユム「え？　何？　 ひょっとして恥ずかしい？」
かなめ「うるせぇ！ 次やったら、引っこ抜くからな！」
アユム「どこを!? てかなんでそんなにキレてんの？」
かなめ「顔見知りの全裸写真とか、 普通はビビるんだよ！」
アユム「え～、かなめちゃんなら 理解してくれると思ったんだけどなー」
かなめ「やかましい、二度と見せんな！」
アユム「はいはい」
アユム「ちぇ～、すごくきれいに 撮ってもらえたのにな～」
　　アユムさんの感覚には、
　　時々ついていけなかった。

〇大学の広場

〇学校の部室
アユム「かなめちゃんって、なんで女なの？」
かなめ「・・・女に生まれたからですが」
アユム「え～、勿体ない！ 男に生まれてたらよかったのに！」
かなめ「なんなんですか、 無茶言わないでくださいよ」
アユム「男に生まれてたら、 絶対ゲイにモテたよ？」
かなめ「マジすか」
アユム「男に生まれてたら、 俺も付き合いたいのに」
かなめ「・・・・・・」
かなめ「私のこと好きなんですか？」
アユム「うん。性格とかめっちゃ好み」
かなめ「アユムさん男で、私が女ですよね？」
かなめ「男女カプだし、私がわざわざ 男になる必要なくないすか？」
アユム「あー、わかってない！ わかってないなぁ、かなめちゃんは」
アユム「もしかしてゲイのこと、 中身で好きになった相手が たまたま男だった、とか思ってない？」
かなめ「違うんすか？」
アユム「違う。それはBL。 ゲイは男じゃなきゃ無理なの」
かなめ「へー・・・」
アユム「あ、わかってない顔してる」
アユム「例えばかなめちゃんに、 めちゃくちゃ仲のいい、 性格も良くて美人な女友達がいて、」
アユム「その子がかなめちゃんを 性的に好きって言って来たらどう？」
かなめ「あー・・・」
かなめ「確かに無理でしたね」
アユム「そう」
アユム「・・・って『無理でした』？ 『でした』!?」
アユム「ひょっとして 女の子に告られたことが、もう？」
かなめ「まぁ、はい。 でも、私はヘテロなんで」
かなめ「すごく美人で性格も良かったけど、 キスとかも無理でした」
アユム「お、おぅ」
アユム「まぁ、うん、その感覚。 無理でしょ？ 女相手に恋愛するの」
かなめ「ですね」
アユム「俺もそうなんだよ」
アユム「いくら中身が好きでも、 女の体持った相手を そういうふうには考えられないんだ」
アユム「だから、かなめちゃんが いくら好みのタイプでも 女である限り受け入れられないんだよね」
かなめ「そっすか」
かなめ「いや、あの・・・、なんか 私が振られたみたいになってますけど」
かなめ「言ってきたのそっちですよ？」
かなめ「あと私、彼氏いますからね？」
アユム「知ってる」

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