第三話(千年の孤独)(脚本)
〇壁
佐藤 愛「さくらちゃん・・・」
佐藤 愛「どうして、あなたからも」
佐藤 愛「私と同じ匂いが・・・」
夕ちゃん「さくらちゃんにも、千年の孤独が?」
佐藤 愛「表情、声、体温、震え・・・」
佐藤 愛「ひしひしと伝わってくる」
夕ちゃん「苦しいんだね」
佐藤 愛「私しか知らない世界だと思ってた」
佐藤 愛「どうして?」
佐藤 愛「寂しいの?」
佐藤 愛「何があなたを苦しめるの?」
千年の孤独
〇リンドウ
夕ちゃん「最近すっかり忘れてたけど」
夕ちゃん「そもそも私は、愛ちゃんの寂しさから」
夕ちゃん「生まれてきたんだよね」
夕ちゃん「この夕顔日記から・・・」
佐藤 愛「そうだったね、まだ小学校の時かな」
佐藤 愛「宿題で、観察日記があってね」
夕ちゃん「最初は、朝顔のつもりだったのよね」
佐藤 愛「お母さん、間違って夕顔買ってきちゃって」
夕ちゃん「お母さんのお陰で、私は今ここにいるんだ」
佐藤 愛「二人で、なかなか咲かないねーって」
夕ちゃん「縁側でずーっと待ってたんだよね」
佐藤 愛「そうそう、だんだん飽きてきちゃって」
佐藤 愛「あやとりしたり、人生ゲームしたり・・・」
夕ちゃん「おにぎり食べたり、居眠りしたり・・・」
佐藤 愛「暗くなってきたから、花火してたら咲いた」
佐藤 愛「二人で慌てて、観察始めたの」
佐藤 愛「ひょっとしたら、夕顔じゃなくて」
佐藤 愛「ヨルガオだったりして!」
夕ちゃん「えーっ! じゃあ私は「夜ちゃん」?」
佐藤 愛「だったりしてー ♪」
夕ちゃん「ちょっとー、なんで ♪ なのよー」
佐藤 愛「でも、うれしかったなー」
夕ちゃん「えっ?」
佐藤 愛「夕顔の花に初めて会ったとき」
夕ちゃん「そうなんだー」
佐藤 愛「とはいえ、花火とか、ご飯とかと」
佐藤 愛「記憶が混ざっちゃってるけどねー」
〇学校脇の道
佐藤 愛「観察が性分に合ってたんでしょうね」
佐藤 愛「あれから、今までずーっと続いてるから」
佐藤 愛「本とか写真とか見てスケッチして」
佐藤 愛「実を食べたり、かんぴょうにしたり」
佐藤 愛「あの頃も結構遅くまで、起きてたからさー」
佐藤 愛「朝は、たいてい、寝坊しちゃって」
佐藤 愛「一緒に学校行ってた友達も・・・」
佐藤 愛「だんだん減っちゃって」
佐藤 愛「不思議よね、そうするとさ」
佐藤 愛「帰り道も一人」
〇教室
佐藤 愛「教室でも一人」
〇まっすぐの廊下
佐藤 愛「休み時間も一人」
〇学校の下駄箱
佐藤 愛「グループ分けでも一人 先生とペア」
〇大きな木のある校舎
佐藤 愛「一日中、誰とも話をしない日が多くなって」
〇図書館
佐藤 愛「自分の声とか、言葉も、思い出せなくなって」
〇個室のトイレ
佐藤 愛「お昼をトイレで食べるようになった」
〇屋上の入口
佐藤 愛「なんで、そうなったのか」
〇学校の屋上
佐藤 愛「何が悪かったのか、わかんない」
佐藤 愛「自分の身体に、膜のようなものが絡んで」
佐藤 愛「勝手に設定されたキャラに振り回されて」
佐藤 愛「がんじがらめの、一人相撲」
佐藤 愛「周りは空気を察して、私を笑う」
佐藤 愛「何もしない、何も言わない・・・」
佐藤 愛「しずかなること林の如し」
佐藤 愛「木に囲まれた林の中みたいに」
佐藤 愛「たくさんいるのに、誰もいない」
佐藤 愛「夢の中のように、焦っても体が動かない」
佐藤 愛「コツコツと否定され、じわじわと無視される」
佐藤 愛「ひょっとして、これ、いじめ?」
佐藤 愛「そう思うことが、増えてきた」
佐藤 愛「でも、お母さんには、言えなくて」
佐藤 愛「悲しい思いをさせたくなかった」
佐藤 愛「私の子供が、いじめられてる」
佐藤 愛「そう思わせる自分になりたくなかった」
〇体育館の中
佐藤 愛「どうしても、悲しみがこぼれる時は」
佐藤 愛「自分のことを、他の可哀想な子の話として」
佐藤 愛「夕ちゃんに向かって話してた」
夕ちゃん「そう、お母さんは、感じてたみたいで」
夕ちゃん「私へも秘密が出来たみたいだから」
夕ちゃん「話を聞いてあげてね、夕ちゃん」
夕ちゃん「・・・って、頼まれてた」
佐藤 愛「そっかー、お母さん言ってたな」
佐藤 愛「愛ちゃん、この夕顔はね、人の話を」
佐藤 愛「ちゃんと聞いてるのよ・・・って」
佐藤 愛「愛ちゃんの顔をしっかり見て」
佐藤 愛「そうねって、うなづいたり」
佐藤 愛「時には、違うんじゃないかなって」
佐藤 愛「一生懸命、答えてくれるんだよって」
佐藤 愛「学校で一言も、喋らなくったって」
佐藤 愛「ちゃんと、ここで、話せてたんだよねー」
〇保健室
夕ちゃん「そんな、みんなで支え合って」
夕ちゃん「なんとか乗り切ろうとしてた時だった・・・」
佐藤 愛「転校してきたんだ、あの子が・・・」
〇教室の外
佐藤 愛「エリカちゃん」
佐藤 愛「上の名前・・・なんだったっけ」
佐藤 愛「転校してきて、机が隣同士になって」
佐藤 愛「クラスの空気とか、まだわかんないから」
佐藤 愛「私に話しかけ、ウチで遊ぶことになった」
夕ちゃん「急接近!」
佐藤 愛「行動的なタイプなのかな、位に思って」
佐藤 愛「人が久しぶりで、どう話していいか困った」
夕ちゃん「周りの反応は、なかったの?」
佐藤 愛「そうね・・・様子見だったのかな」
夕ちゃん「・・・ナルホド」
佐藤 愛「ウチで何話したかも、覚えてないけど」
佐藤 愛「だんだんと、お母さんの悪口言いだした」
夕ちゃん「なんだか、嫌な感じ・・・」
佐藤 愛「化粧しないとか、服も髪もボロボロとか」
佐藤 愛「ちゃんとしないなんて、信じらんないって」
佐藤 愛「その後も、触ったジュースは飲まないとか」
佐藤 愛「変な匂いがするとか、挨拶しないとか」
佐藤 愛「小出しに、刷り込むように繰り返すの」
夕ちゃん「いくら何でも、やりすぎでしょ!」
佐藤 愛「そう! そうなんだけど・・・」
佐藤 愛「気づいたら、エリカちゃんにつられて」
佐藤 愛「私もお母さんに、ひどいこと言った」
佐藤 愛「少しは外見も気にしたらとか」
佐藤 愛「部屋には来なくていいから、とか」
夕ちゃん「エリカちゃんに離れて欲しくなかったのね」
佐藤 愛「・・・そうみたい」
佐藤 愛「でもエリカちゃん、ウチに来なくなった」
夕ちゃん「・・・最悪」
佐藤 愛「もとの一人ぼっち・・・お母さんごめん」
佐藤 愛「裏切り者・・・一番大切な人を裏切った」
佐藤 愛「自分が許せなかった」
佐藤 愛「叫んで、吐いて、泣いて、また叫んだ」
〇菜の花畑
愛ちゃん
夕ちゃんも
苦しかったね
お母さんは大丈夫
自分だけは、自分の味方で、いてあげて
人は、ひどい目にあい続けると
自分で自分を認められなくなって
危ない所が安全に・・・
安全なところからは、逃げ出したくなる
センサーが壊れちゃうのかな
夕顔の観察日記、写真にしてみたの
お母さんがいない時は、これに話してみてね
〇病院の待合室
佐藤 愛「お母さん・・・」
佐藤 愛「全部分かってて、見守ってくれてた」
夕ちゃん「あの後くらいからよね、具合悪くなったの」
佐藤 愛「記憶障害・・・聞きなれない病気だった」
佐藤 愛「忘れてしまうスピードが早くなる病気」
佐藤 愛「あなたのことがわからなくなるのが嫌」
佐藤 愛「全ての思いを渇れるまで伝えようとした」
佐藤 愛「必死の形相を見てると、お臍が熱くなった」
佐藤 愛「何万の血液や血漿が押し寄せた」
佐藤 愛「お母さんは、最後に涙を流し」
佐藤 愛「そして、涙の意味が思い出せなくなった」
夕ちゃん「・・・大丈夫?」
佐藤 愛「もう二度と、お母さんを悲しませない」
佐藤 愛「千年の孤独なんて、怖くない!」
〇簡素な部屋
夕ちゃん「じゃあ、さくらちゃんが抱える気持ちって」
佐藤 愛「さくらちゃんの、千年の孤独って・・・」
「あ、また、激しい鼓動!」
鈴木さくら「産婦人科の田中先生をお願いします」
「産婦人科ですってー!」
「どういうこと? そういうこと?」
鈴木さくら「あ、鈴木です、さくらです、こんばんは」
鈴木さくら「お電話いただいて、有難うございます」
鈴木さくら「・・・はい・・・はい、分かりました」
鈴木さくら「今週の土曜日に・・・はい、伺います」
鈴木さくら「はい・・・宜しくお願いします」
鈴木さくら「はい、それでは・・・お休みなさい」
「さくらちゃんの千年の孤独って、まさか」
愛ちゃんの過去、つらいですね。たしかに、自分のことを許せなくなると孤独のどつぼに嵌っていく感じがします。小説的な文章が挟まると心情が伝わってきますね。さくらちゃん産婦人科ってことは2人がお臍に寄生したのがそう繋がるのでしょうか?続きが気になります
やはり独特の言い回し、比喩表現が癖になりますなあ。ここでしか味わえない何かがある。てか、おへそに寄生ってそういう!?気分が悪くなったのも、まさか、、