鬼面人の唐紙

キリ

-前編-(脚本)

鬼面人の唐紙

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〇山間の集落
  紀元前━━
  人知れぬ村の片隅で、鬼が争いあっていた

〇森の中
ヒトツキ鬼「ヒャハハハハッッ!」
「ハアッッ」
「ッフッッ!」
ヒトツキ鬼「グアアアアァアァァァ!」
ヒトツキ鬼「...ググヌ」
ヒトツキ鬼「マサカ 小鬼ニマケル...トハ...」
「ッハハハ」
「てめーが弱いだけじゃろぉよぉ」
「雑魚鬼が」
  勝利の鬼は、息が絶えそうなヒトツキ鬼に
  歩みより、大きく口を開いた瞬間、
  咀嚼することなく鬼の身体を
  丸飲みしたのだ
「はああ~...」
「...まっず」
  勝利の鬼は、争いの場から立ち去った
  大雨が地面を叩きつけている
  身を潜めていても決して
  気づかれることはない
  勝利した鬼は、茂みに身を潜めていた少女と視線があうことはなかった

〇桜並木
  それから半年間、鬼の姿を
  目撃されることがなかった
  そう、鬼は絶滅し、村に平和が訪れたのだ
  時は過ぎ、5年後の春を迎えた──
環(桜...)
環(今が見頃のようだな)
環(綺麗...)
環「っ!」
環「誰だっ」
環(・・・)
環(この声、人ではないな...それに相当近い)
環(・・・っ)
環「そこかっ!」
環「タアッッッ!」
  環はいびきの素を捉え、
  腰に携える刀の鞘を抜き
  迷うこと無く、一本の桜の枝を切り捨てた
「いったあぁあああああああっっ!」
環「っ!」
唐紙「お尻いたぁ~ぃ~~!」
唐紙「あ!骨は折れてないかのぉ」
唐紙「・・・・・・」
唐紙「はあ~よかったぁ」
唐紙「動くってことは折れてねえな、ホッ...」
  木から落下したのは、こちらに背を向けて
  一人で慌てていたが、すぐに肩を撫で下ろした人物だった
環(...ヒトか)
環「すまない、ものすごく声がして...」
唐紙「ひどいよぉ~~それ、オイラいびきだよぉ」
環「ハッ...!」
  相手は、環のいる方へ振り向いた
  相手の顔には、奇妙な一文字が
  記された白い紙が貼ってあり
  頭には二本の赤黒く染まった
  角が生えていた
  顔以外の手足や身体の骨格は、
  人間の姿をしている
環(なんだ、こやつは...)
環(っ!まさか)
環「...某(それがし)、」
環「その白い紙はなんだ、顔を見せろ」
唐紙「ああああっ!やめておくれ~!」
唐紙「これは...」
唐紙「そ、その...」
唐紙「おおおオイラの身体の一部なんじゃぁ!」
唐紙「だから剥がさないどくれぇえ!」
環「そ、そうなのか...」
環(深く追及されたくないようだな...)
環「で、ではその角はなんだ?」
唐紙「え、これは...」
唐紙「えと...んー」
唐紙「あ!」
唐紙「実は流行りものでしてぇ」
環「はあ?」
環「とぼけるな!」
唐紙「ほほほっほんとだよぉ!」
「きゃあああっ!」
「っ!」
唐紙「いいいまのって、悲鳴? ?」
環(くっ...こやつを野放しにしておけないっ)
環(だがしかしっ...悲鳴が聞こえたのに 見過ごすわけにはっ...!)
唐紙「・・・」
唐紙「行こう!」
環「え?」
唐紙「急ぎましょうよ!ほら!」
環「おい待て!」
環(っ...あやつが難なく人の居る方へ?)
環(あやつがもし...)
環("鬼"だったら...)
環「っっ!」

〇寂れた村
村人「おとなしくしろっ!」
町娘A「いやああぁあ! ! お助けを! ! ! !」
村人「言うとおり付いてくるんだ!さもなくば...」
環「某!」
環「そこで何をしている」
環「その手を放せ!」
村人「なんだ小娘、いま取り込み中だ! 邪魔するな! ! !」
村人「おいおぉい、なに手こずってんだよお」
村人「ひっく...」
村人「小娘一人連れてこいってんのにっひっく」
村人「もたもたしてんじゃあ ねっ! !」
村人「うぐあっ!」
環「っ...!」
村人「ひっく...」
村人「おおい、小娘ぇ~」
村人「おれに酒をっひっ、 ついでぐれねぇが?ええぇ?」
環「十分呑んでいるだろ」
環「注がぬ」
村人「キッ」
村人「おれに逆らいやがってぇ!」
村人「このぉっっっ! ! !」
環「っ...」
  酔っ払いの村人が、環の頭上に
  拳を振りかざした
  拳が振り落とされた先には
唐紙「うっ!」
環「っ!」
  酔っ払いの強い拳を受け止めてしまい、
  不気味な人間は建物の一角に叩き付けられ
  地に身体が叩きつけられた
環(よ、よわ.......い)
環「おい!しっかりしろ!」
村人「今度は糞ガキかよ、ったくぅ うじゃうじゃと出てきやがって」
村人「次はどいつがやってくるんだ?ああ?」
環「っ...」
環「多大なる暴行の罪で、貴様をこの手で処す」
村人「ああ?」
環「フッ」
村人「うおっっっ!」
  鞘を抜いた刀は、村人の顔
  ギリギリの所で寸止めした
  村人は真っ二つに裂かれる恐怖で
  思わず目を瞑った
環「ハアッッ」
村人「ああ~~っ...」
  刃先が尖っているが、相手の頭にぶつけた場所は持ち手の部分だった
  てっきり剣先を向けられたと思った村人は
  のびてしまった
町娘A「あの、その刀はもしや、"お侍様"ですか?」
環「まあな、」
環「ケガは無いか?」
町娘A「ははっはいっ!大変助かりました! ありがとうございますっ!」
環「あ、髪が少し乱れている」
環「...これで良し」
環「無事で何よりだ」
町娘A「ああありがとうございます♥️」
唐紙「・・・っ、おさむらい...さま?」
環「あっ」
環「お主、大丈夫か?」
環「大事に至るか? ?」
唐紙「・・・」
唐紙「ううん、平気だよ」
環「そうか」
環「かっこよかったぞ」
唐紙「えっへへ...」

次のエピソード:-後編-

コメント

  • かっこよさが際立つ展開。謎の人物は何者なのか?謎が多い分解明されていくのが楽しみです。
    わくわくしながら次回作を待ってます。

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