片耳うさぎ

カジキ

エピソード1 「片側」(脚本)

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〇田舎の病院の病室
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「今日も来てやったぞ」
リリナ「あっ! 玲司さん、こんにちは」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「リリナちゃん、あいさつできてえらいねえ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「さすが、できる女の子だね」
リリナ「あっ、ありがとうございます」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「そんなリリナちゃんに....」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「はい、青森県産のリンゴ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「形良し、甘み良し、色艶すらも完璧な高級 リンゴだ」
リリナ「なんだかとても美味しそうですね」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「岩手、長野、山形などのリンゴは食べてきたんだが、」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「何故か、”青森の”リンゴだけは食べてこなかった」
リリナ「──青森に恨みでもあるんですか」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「だから食べたら感想、聞かせてくれないか?」
リリナ「でも、私上手く感想言えるかどうか・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「いいよ、いいよ別に」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「おいしいなら、また買ってこようってだけだから」
リリナ「そうですか、では・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ちょっと待ってくれ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「食べやすいように切ってやるよ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「もちろん「うさぎ」でね」
  そう、「うさぎのリンゴ」・・・
  あれは・・・

〇和室
  あれは、俺が8歳ぐらいの頃・・・
母ちゃん「さあ、リンゴ切れたわよ❤️」
荒川 玲司(8歳)「やったー、リンゴ、リンゴ」
荒川 玲司(8歳)「母ちゃん、リンゴ、うさぎにして、うさぎ」
母ちゃん「いいわよ、はい。うさぎさん❤️」
荒川 玲司(8歳)「おぉ〜、うさぎだ、うさぎ」
荒川 玲司(8歳)「おれも、うさぎ作ってもいい?」
母ちゃん「いいわよ、気を付けて切ってね」
荒川 玲司(8歳)「こんなの、簡単 簡単、目をつぶりながらだって >ザグッ」
荒川 玲司(8歳)「痛ったー、指切ったー」
母ちゃん「もう、何やってんだい」
母ちゃん「包丁使うの危ないし、使わせないから」
荒川 玲司(8歳)「そんな〜」
  俺はこの時、すごく悔しかった
  包丁を扱えなかったこと
  うさぎを作れなかったこと
  だから、母ちゃんを見返してやろうと思った
  そして、時が流れて13年後・・・

〇川沿いの公園
司会者「「第361回 街中クッキング大会」 勝者〜  『レイジ』選手〜」
母ちゃん「よくやったわね─ 、玲司」
母ちゃん「ごめんね、子供のころ包丁使わせてあげられなくて・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「はっはっはっ、気にするなよMY mother」
母ちゃん「玲司・・・❤️」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「母ちゃん・・・」

〇田舎の病院の病室
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「そして、俺は超スーパーデラックス料理人に成ったわけ・・・」
リリナ「玲司さん、フリーターでしたよね」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「違う、違う、フリーターは世を忍ぶ仮の姿、俺は超スーパ 痛ッた─ 指がザックリ 逝った───!!」
リリナ「玲司さん、包丁を扱っている時によそ見は、怪我の元ですよ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「切った後に説教は、心に来るから勘弁してくれ・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「それは、そうと切れたから食べてくれ」
リリナ「うさぎの片耳切れてませんか?」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「あぁ・・・最近のうさぎは、片耳が主流なんだよ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「耳が無くても強く、たくましく有れという 意味込められてるんだ」
リリナ「そうなんですね、ありがとうございます」
  ──シャクッ
リリナ「・・・ちょっと、血の味がします」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ゴメンって・・・」

〇田舎の病院の病室
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「そういえば、ちょっと聞いてもいいか・・・」
リリナ「なんですか?」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「看護師の茶髪のお姉さんについてなんだが・・・」

〇黒

〇田舎の病院の病室
リリナ「あ、佐藤さんの事ですか!」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「そうそう、佐藤さん、佐藤さん」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「いや〜、良いよな 佐藤さん」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「もし、あんな美人さんに献血してって、頼まれたら毎日通える自信しかないね」
リリナ「そうですね」
リリナ「でも私、佐藤さんについてよく知らないんですよね」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「そっかそっか・・・なら仕方がないね」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「スリーサイズについてとか知りたかったのに」
リリナ「それ、女性に言ったらセクハラで捕まりますよ」
リリナ「それに女性同士でもそんな情報知ってるわけないじゃないですか」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「大丈夫、大丈夫 ただ他の女性と比較するだけだから」
リリナ「一番、女性がやって欲しくないことじゃないですか」
リリナ「いいですか、女性も比較されたりするのも嫌なんですよ」
リリナ「玲司さんだって、誰かと身長比較されて、 小さいと言われたら嫌な気持ちになりませんか?」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「確かに・・・ちょっと嫌だね」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ちぇっ、なんか知ってたら妄想がはかどっていたのに・・・」

〇病院の診察室
佐藤さん 「玲司さ〜ん、注射しますよ」
佐藤さん 「こら、あばれちゃダメよ」
佐藤さん 「終わったら、ヨシヨシ・・してあげますから」
佐藤さん 「ハイ・・終わったよ・・・」
佐藤さん 「頑張ったね・・・  よしよし」

〇田舎の病院の病室
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「そうやって、俺は くぅ〜〜〜っっ!!」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「リリナちゃんって・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「エッチだね」
リリナ「誰がですか、誰が!!」

〇田舎の病院の病室
リリナ「そういえば、初めて会った時の事、覚えていますか?」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「あぁ・・・覚えているよ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「確か、俺が友達の見舞いに来た時に間違えてリリナちゃんの病室に入っちゃって」
リリナ「はい、それでリンゴをひとつ貰ったんですよね」
リリナ「普通に考えたら、変な人から貰ったものは受け取るべきではないんだと思います」
リリナ「でも・・・すごく嬉しかったんです」
リリナ「私は、今までに誰かから物を貰うという事がなかったんです」
リリナ「だから、あの時は本当に嬉しかったんです」
リリナ「物を貰える事がこんなに嬉しい気分にさせてくれることを知りました」
リリナ「だから、私も誰かにあげる事のできる人になりたいと思えたんです」
リリナ「なので・・・玲司さんにこれをあげます」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「なにこれ?」
リリナ「私の宝ものです」
リリナ「小さい頃にずっと読んでいた童話です」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「いや〜、さすがに受け取れなくね・・・」
リリナ「いいんです、何度も読んでだいたい覚えていますし」
リリナ「それに、こんないい本を独り占めにするのはもったいない気がしてしまって・・・」
リリナ「だから、玲司さんにも読んで欲しいんです」
リリナ「読み終わったら感想でも聞かせていただければ・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「わかった・・・ありがとな、こんな大事な物を貰っちゃって」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「大事に読ましてもらうよ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「いい時間だし、そろそろ行くよ」
リリナ「はい、また明日」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「おう、また明日も来るわ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ついでに新しい本も持ってきてやるよ」
リリナ「ありがとうございます」

〇大きい病院の廊下
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「・・・行くか」

〇病院の廊下
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「・・・」
  コンコン
  荒川 玲司
  「荒川 玲司です」
  ???
  どうぞ

〇病室のベッド
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「入って・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「失礼します」
佐藤さん 「──ウッ!!」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「傷が日に日に広がっているの・・・」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「・・・正直、痛ましくて見てれないわよ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「・・・状態を確認してもかまいませんか?」
  俺が何をしているのかって、混乱する奴もいるかもしれないが・・・
  俺は、「霊媒師」だ

〇黒
  霊媒師と言っても、幽霊を祓ってるわけではなく、「生き霊」専門を祓う霊媒師だ
  生き霊というのは、生きている人の強い念で生まれた霊の存在のことだ
  そして・・・
  リリナは佐藤さんの「生き霊」だ
  生き霊の発生原因は、強いストレスによる物がほとんどだ
  しかし、だいたいの生き霊は本人の悩みがなくなったり、忘れしまうことによって
  自然消滅することがある
  でも、二人は少し違う・・・
  リリナは、佐藤さんの昔の自分・・・
  つまり、佐藤さん、そのものなんだ
  おそらく、佐藤さん子供のころに強いストレスを抱えており・・・
  「リリナ」を創った
  創るだけなら問題はないんだが、心の急激な変化によって生き霊との意識が分裂してしまう事がある
  分裂した後、「リリナ」は病院から離れられなくなってしまい
  そして佐藤さんがここで看護師として働くようになり、リリナとの距離が近づき過ぎてしまった・・・
  分裂してしまった生き霊に近づき過ぎてしまうと様々な症状を起こす事がある
  身体・精神の衰弱、怪我の悪化とうの症状があるが佐藤さんは後者に該当する・・・
  身体・精神の衰弱も危険に変わりないのだが、個人的に後者の方が厄介だと思っている
  理由は、霊による怪我の悪化は薬で治療できないからだ
  生き霊は、無意識のうちに本体と繋がろうとしてしまう・・・
  中途半端に意識が繋がると免疫が生き霊の
  指示のもと動くようになってしまい
  結果的に免疫が機能しなくなり、死ぬことだってある・・・
  でも助ける手段はある
  それはリリナを殺す事だ

次のエピソード:エピソード2 「片思い」

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