古雪義琉事務所(依頼1ー1)(脚本)
〇川沿いの公園
20○○年、季節は冬__
住民街(セーフティ・タウン)にて
女子高生が何者かに切り付けられる
通り魔事件が発生した。
何故か誰も居ない静まり返った街路を彼女は1人走る。
静かな理由は危険な路地から出ずに住民は家に籠っているからである。
未空日向「・・・はッ、はぁ・・・!! ッ、くッ、はぁ・・・!!」
未空日向「ゴメン、朱里・・・ ゴメン、ゴメン・・・!! 後で必ずまた行くから・・・!!」
通り魔に襲われたのは
未空日向(みそらひなた)の友人である
安達朱里。
親友との休日の帰り道に
突然起きた悲劇だった_
目の前で襲われた友人を助けようと
通り魔を捕まえようとしたが、
彼女は軽くあしらわれ、
通り魔には逃げられてしまう。
彼女はその通り魔を追いかける前に
友人に救急車を呼び、
警察も呼んで事情を話し、
捜索をしてもらっていた。
が、彼女は警察だけでは捕まえられないと
心のどこかで確信していた。
__アレは、《異能持ち(イレギュラー)》なのだと_
未空日向((私は昔、あの目を見た事がある_) (あの普通の人とは違う目を・・・))
過去の堪えがたい悲劇が脳裏をよぎる・・・
が、今は感傷に浸っている訳にはいかない。
行動しなければ、今すぐに。
古雪義琉事務所
(・連絡はこちらまで!!)
○○○○ー○○○ー○○○
未空日向「・・・お母さん・・・ 本当に・・・この人は私を助けてくれるの?」
未空日向((私は携帯に番号を入れ、掛け始める。) (あの通り魔に対して無力な私は誰かに助けを求めることしか出来ない。))
未空日向((昔味わったあの悲しみと後悔にまた合わないために。) (もう泣いているだけの自分に戻らないために。))
未空日向「お願い・・・!! もう後悔したくないの・・・ 私の友達を助けて!!」
そして、彼女は電話を、掛けた。
小さくも大きくもないコール音が、
静かな街路に鳴り渡る。
そして、
電話は繋がった。
〇おしゃれな居間
「・・・・・・・・・」
《彼》が目覚める前に
この住民街に度々出没する
《異能持ち(イレギュラー)》について
紹介しておこう。
《異能持ち》とは数十年前から
突如として人々に発言した能力である。
それは宙に浮く者があれば
体が発火する能力もある。
が、勿論そんな能力が発現すれば悪用する者も
当然現れる。
政府がしっかりとした対策をする前に
世の中が荒れ始めていた。
古雪義琉「・・・」
その中でも、確かにその荒くれ者達を
止めようと能力を使うものも当然居た。
《彼》もその中の一人である。
《彼》は昔から有名な
《初代異能持ち(ファースト・イレギュラー)》と
呼ばれる実力者であり、
その実績は泊付きである。
そんな《彼》に関しては
様々な憶測が飛び交っている。
年配の男性だとか、実は居ないとか、
何かの組織の名前とか。
様々な憶測が飛び交う中、
ネットで少なからず有力な意見がある。
周りの説よりも目に付くのは、訳がある。
それは___
古雪義琉「Zzzzz・・・Zzzzz・・・」
《何の取り柄もなさそうなただの青年》。
(ピリリリリリ、と携帯の音が鳴り渡る。)
古雪義琉「・・・・・・」
古雪義琉「・・・・・・ 何でこんな休日の夕方から 仕事の依頼をしてくるんだよ」
彼は鬱陶しそうに携帯を取りながらも
ベッドに座って電話し始める。
古雪義琉「はーい、こちら《古雪義琉事務所》。 電話からのご依頼ですか? それとも別件?」
古雪義琉「・・・」
古雪義琉「・・・仕事の依頼、ですか。 ・・・はぁ、分かりました。 場所は・・・あまり遠くないですね 10分ほどで向かいます」
(ピッ、と電話を切ってから溜息を1つ。)
古雪義琉「・・・休日ぐらいのんびりゆっくり 寝させて欲しいモンだ。 全く・・・ 頼まれたから仕事を やるのは俺なんだけどさ?」
《彼》は服を着替え始める。
自分の服装にこだわる男では無いのだが
しかしこの服だけは
絶対に着ておかなくてはならない。
古雪義琉「えぇと、仕事服仕事服・・・ よし、あったあった」
(服を着る動作は仕事前だからか少し素早い。)
(身なりを整えると彼は玄関へ向かう。)
古雪義琉「・・・さぁてと。 眠いし気怠いしやる気は 全くもって無かったけど・・・」
古雪義琉「なんか可愛い女の子の声だったし ちょっとだけやる気出して頑張りますか!!」
《彼》の名前は、古雪義琉。
この住民街を中心に活動する
《対異能専門家》とも呼ばれる男である。
「そうだそうだ!! ついでに仕事終わったら帰り道に ファミレスでも寄って帰ろう、 そうしよう!」
〇川沿いの公園
未空日向「・・・」
未空日向(電話から、10分が経った・・・ 時間的にはそろそろ来るはず・・・ ・・・だけど・・・)
未空日向(・・・本当に、来るのかな・・・)
未空日向(よくよく考えたら通り魔捜しに お母さんが昔教えてくれたメモ頼りとか 色々とおかしいよ・・・! 何してるんだろ私・・・)
未空日向(いくらなんでも落ち着いて考えれば 私らしくない・・・ 慌て過ぎちゃってるよね・・・!?)
当たり前である。
普通の女子高生はそんなものに頼らず
警察に頼っておくのが正解だろう。
未空日向(いや、でも電話に出た人 ここに呼んじゃったし・・・ ・・・ううん、お母さんを信じよう! このメモもきっとなにか意味が__)
古雪義琉「・・・あの、すみません。 さっきから何で1人で ずっと百面相してるんですか?」
未空日向「っえ!? あ、す、すみません!! 何でもないんです!! 何でも・・・」
古雪義琉「こんな事、俺が言うのもなんですけど 中々見ていて愉快でしたよ。 表情豊かでしたね?」
未空日向「ち、ちょっとそれ フォローしてくれてるんですよね!? 言い方酷くないですか!?」
古雪義琉「いやフォローするというか 素直に面白いなぁ、と感想言ったというか・・・」
古雪義琉「おっと、失礼。こんな事言ってる場合じゃない。 早めに仕事終わらせなきゃいけないんだった、そうだった」
未空日向(・・・え、えぇ!? も、もしかして この人が・・・この人がお母さんのメモにもあった・・・《古雪義琉》!?)
古雪義琉「さて、 俺に頼みたい事。 改めて聞きましょうか、未空日向さん?」
さて、色々と前置きはこれにて終了。
兎にも角にも《彼》の仕事は
これからようやく始まる。
《異能持ち》が《異能持ち》を止めるために
表舞台へ躍り出る。
そしてこれは、《古雪義琉》の名を広める事件でもあった。
めっちゃ続きが気になります…。
まず設定や世界観がとてもそそります!
今回は登場人物の紹介であったりがメインかもしれませんが、この先繰り広げられる展開に期待してます!