古雪義琉事務所(依頼1ー2) (脚本)
〇繁華な通り
古雪義琉「まぁ、貴女の話をざっくり要約すると 俺への今回の依頼は 『通り魔の捕縛』『警察への譲渡』、 って事でいいんですね?」
未空日向「は、はい・・・そうなんですけど・・・ ・・・あ、あの、失礼なこと、 聞いていいですか?」
古雪義琉「はい?」
未空日向「あ、貴方って本当に 《古雪義琉》なんですか!?」
未空日向「私からすれば 今、目の前にいる人はただの 《古雪義琉》って名乗ってる知らない人なだけで」
未空日向「まだ貴方から何者で、何で私の頼みを 当然のように聞いてくれるのかを 説明してもらってなくて、 疑心暗鬼になってて・・・」
古雪義琉「・・・・・・」
古雪義琉「正直に言うと色々と理由はあります。 一番の理由は 《貴女のお母様》ですからね」
未空日向「え・・・!? や、やっぱり私のお母さんが・・・ 関係してるんですか?」
古雪義琉(オイオイオイオイ、この子1度言っただけで 信じかけてるとか言わないよな? さっき疑心暗鬼なんだとか 言ったばかりだぞ?)
古雪義琉(・・・・・・いや、この子は母親の 《あの人》と性格がかなり似てるし・・・ あの時もこんな感じで すぐ信じてくれたっけか)
未空日向「あ、あの・・・ 古雪さん?」
古雪義琉「あ、え、はい? なんか言いました?」
未空日向「あの・・・ また失礼かもしませんが、 聞いてもいいですか?」
未空日向「・・・会ったこともない私の依頼を すぐに聞いてくれるほど、 お母さんは貴方に何を、してくれたんですか?」
古雪義琉「・・・ 今はまだ、それに関しては話せないんですよ。 貴方のお母さんからの言いつけでね。 でも、一つだけ言うとしたら・・・」
古雪義琉「貴女のお母さんのお陰で、 今の俺はこの仕事が出来てるんですよ!」
未空日向「・・・そう、ですか・・・ お母さんは、やっぱり優しかったんですね」
未空日向(お母さん、 私が小さい頃から人助けが すごく好きな人だったからなぁ・・・ いつもいつも 誰かを助けたいって言ってた・・・)
未空日向「・・・古雪義琉さん。 今改めて、貴方にお願いします。 どうか・・・私の友達を傷つけた通り魔を・・・ 捕まえてください!!」
古雪義琉「・・・・・・」
古雪義琉「・・・えぇ、お任せあれ。 その通り魔、悪人を 俺が必ず捕まえてみせましょうとも!」
〇ビルの裏通り
古雪義琉と未空日向が出会っていた同時刻
路地裏にて
「・・・あぁ、もっと楽しみたい、 もっと、人を傷めたあの感覚を・・・」
「あの心地、あの悲鳴、 あの紅い刃を・・・」
その通り魔は、
この街で事件を起こす側としては
珍しくない《異能持ち》だった。
・・・【彼女】は楽しんでいる。
【粗灰烈華(そかいれつか)】は、
人を斬り裂く喜びを知ってしまった。
もはや普通には戻れない
外れた道へ、踏み出した。
粗灰裂華「あぁ・・・ 今日も楽しかった・・・ だけど・・・まだ、少し足りない・・・」
粗灰裂華「もう少しだけ・・・遊びたい・・・ ふ、ふふ・・・ 普通にしていればバレない・・・ 警察でも捕まえられない・・・」
粗灰裂華「けれど・・・ けれど、身を潜めるべきだけれど・・・ ふふ、ふふふふふふ・・・」
粗灰裂華「あの、女の子・・・友達に傷をつけた時、 とてもいい反応をしてくれた・・・ あの子に・・・今度はあの子にもう一度・・・」
歪んでしまった彼女の魔の手が、
未空日向に伸びていく。
何も知らない彼女に、
伸びていく___。
陽が照らすその街へ、
凶刃が影を落としに来る・・・
〇繁華な通り
未空日向「・・・・・・・・・・・・・・・」
古雪義琉「? どうかしました? 未空日向さん・・・?」
未空日向「あ、いえ・・・!!! 少し・・・友人のことが気になって・・・」
古雪義琉「ご友人・・・ですか、 《安達朱里》さんの事ですね?」
未空日向「はい・・・ 朱里は今病院で1人で苦しんでると思うと 私も辛くなってきて・・・」
古雪義琉「あまり気負い過ぎるのも良くないです、 ご友人を思う事はいい事ですが それを気にしすぎて 体調に問題が出ると元も子も・・・」
古雪義琉「とにかく、悲しむのは後にしましょう。 解決してからご友人を お見舞いに行きましょう? その方がご友人の為にもなるでしょう」
未空日向「いやいやまだ死んでもいませんからね!? 墓参りに行くみたいなノリで言うの ちょっとやめてください!!」
古雪義琉「あ、いやっ、そんなつもりは無くてですね!? え、えぇとすみませんでしたっ!?」
古雪義琉「と、とにかく俺は ちょっとアテがあるので 街の人に聞き込みしてきますっ!!!」
未空日向(・・・はぁ、 あの人・・・本当に大丈夫なのかな・・・)
未空日向「本当にお母さんは何であんな人と 関わりを持てたんだろ・・・ ますます気になって仕方がないよ・・・」
「・・・あら、こんな所に居たのね・・・ 案外簡単に見つかったわ・・・」
未空日向「っえ・・・!?」
粗灰裂華「ごめんなさいね・・・ なるべくバレないようにするつもりなの」
未空日向「あ、貴女はっ・・・あの時のっ!?」
粗灰裂華「・・・《人影霧散(イー・キラー)》・・・」
その瞬間、未空の目の前から
《通り魔》の姿が嘘のように消えてしまった。
未空日向「嘘、今さっきまで目の前に居たのにっ・・・!? ど、何処に行って・・・!?」
「残念・・・正解は、 貴女の目には映らないけど・・・ 《此処に居るのよ?》」
そしてその瞬間、
彼女《未空日向》の目には真正面から
飛んでくるように迫る銀色の刃物が見えた。