彼女が美人に着替えたら(脚本)
〇マンションの共用廊下
ユカが帰宅すると、
差出人に覚えのない荷物が届いていた。
ユカ「誰だろう?」
ユカ「差出人は「ギャランティ」・・・・・・!?」
ユカ「でも、宛名は確かに私だわ」
ユカは差出人のわからない荷物に
首を傾げたが、商品名と書かれた欄が
あることに気がついた。
商品名:
美人ボディスーツ
ユカ「美人ボディスーツ!?」
〇女の子の一人部屋
ユカ「なに?なに?美人ボディスーツ!?」
ユカ「でも、どうしょ・・・・・・ 開けて大丈夫かなぁ」
ユカ「いや、「美人ボディスーツ」なんて超魅力的な物、もちろん開けるっしょ! 私宛てなんだし」
箱の中からは、
ビロード調の生地でできた
高級そうな箱が出てきた。
ユカは、
商品を送りつけて、
あとで高額な請求をする
詐欺かも知れない
とためらったが、
────
「美人」という言葉に
どうしても惹かれた。
〇水玉
ユカは、決して容姿は悪くない。
しかし、童顔だったし、
背も低い方だ。
体型も小柄で痩せている。
それなりにモテたし、
恋愛もしてきた。
しかし、美人というには
女性の色気や、華やかさが
ユカにはなかった。
健康や美容には
普段から気を配っている。
食事や、運動、ボディメンテナンス、
メイクに、ヘアスタイル、
ファッション・・・・・・
美の研究に余念がない。
しかし、
ユカの思う美人には
ほど遠い。
〇シックなバー
数ヶ月前
ユカ「あ!! ・・・ヒロシ」
ヒロシ「・・・おお ユカか・・・久しぶり。 元気か?」
ユカ「あ・・・うん」
女「ヒロシ?誰?」
ヒロシ「ああ・・・ただの知り合いだよ」
女「ほんと?あやしぃー」
ユカ(キレイな人・・・美人。 なによ!ヒロシの奴! ただの知り合いだなんて!)
どういうわけか
どの別れた彼も次に付き合う彼女が、
いつも自分より美人に思えた。
別れた相手に未練はないが、
そこのところが
どうも気に食わなかった。
〇女の子の一人部屋
だから、
もっと美人になりたいと思っていた。
「美人ボディスーツ」と書かれた
箱をいよいよ開けてみる。
ユカ「いよっし!開けるよ」
中にはフェルト生地で
丁寧に包装された商品と、
説明書が入れられていた。
「このスーツを着ると、
世界中の男を虜にする
絶世の美女になれます。
ただし、使用は一度きりとなります。」
ユカ「絶世の美女?? あちゃーこれはいよいよ詐欺かぁ?」
ひどく不親切な説明だし、
馬鹿馬鹿しいとも思ったが、
絶世の美女になれるという言葉には
逆らえなかった。
ユカ「ま、いっか。 面白そうじゃない! どれどれ・・・」
一見、ボディスーツは、
自分のバカさ加減を後悔するほど
お粗末な代物だった。
ユカ「ほぼ全身タイツじゃん!」
〇幻想空間
ただ、素材は見たことも
触ったこともない
よくわからないものだったし、
──────
青みがかったシースルーで、
どこか妖艶な雰囲気を
醸し出していた。
ユカは、
衝動を抑えられないタイプで、
よく考えず、
すぐに行動してしまう癖がある。
そういうわけで、
それを着てみることにする。
〇カラフル
ユカ「・・・・・・!! え!!!!!! うそでしょ・・・」
美女「これが私・・・!?」
鏡に映った自分を見て、
一瞬言葉を失うほど、
──────
まさに絶世の美女が
そこに立っていた。
これ以上はない、
というくらいだった。
嫉妬や劣等感は
一瞬でどこかに消し飛んでしまった。
美女「すごい!すごい! 私、超美人!!」
〇幻想
ユカは、ずっと求めていたものを
今まさに手に入れた恍惚感に
酔いしれた。
しばらくその絶対的優越感に
浸った後、
──────
美女「私って、 美人とは程遠かったってことね」
鏡に映る美女に、
もともとの自分らしさは
微塵も感じないことに気がついたのだった。
〇水たまり
それは予兆なく、
聞こえてきた。
脳に直接
流れてくる
自動音声のような声。
音声「この度は、美人ボディスーツの ご利用ありがとうございます」
美女「え?なになに? 頭の中でなんか言ってる!!」
音声「絶世の美女になられたことで、 これからは絶世の美女の人生を歩まれる ことになります」
美女「・・・・・・!?」
音声「そこで、 旧型のユカさんの代わりを お届けしましたので、────」
「ただいまより「交代」をお願いします」
美女「ど、どういうこと?? 交代って??」
〇女の子の一人部屋
「当方の報酬(ギャランティ)は、 旧型のユカさんが歩まれるはずだった 残りの人生となります」
「ご利用ありがとうございました」
ピンポーン
突然、部屋のチャイムが鳴る
〇シックな玄関
ガチャ
ユカ「私が新しい「ユカさん」です。 交代をお願いします」
〇黒
おわり
最後には怖い話になっていました…。
確かに自分に足りないものって欲が出て次から次へと欲しくなるものですが、美貌は何より欲しいものですよね。
でも残りの人生と引き換えとは…。後悔先に立たず…。
えーえー美人になれるなんてラッキーと思ってたら、もうもとの自分に戻れないって、ホラーみたいな予想外に恐ろしい内容でした。美人だと外見だけでよってくる男性が多そうだから、人の見極めがより難しくなりそうだな。でもって、これって結局ボディスーツだから、もう自分にも戻れないうえに、スーツを脱いだ時点でジ・エンドってことなのかな、、怖すぎる。洗濯もできませんね〜涙目
美人になるボディスーツを着て得られる今後の人生と、今の自分の将来どちらが幸せかはわかりませんが代わりの自分が現れて過去を奪われるのは耐えられないなぁ。
過去によって自分の存在が証明されてるものだと思うので。