中宮さんたちが天才になれる方法

かしみあ

中宮さんたちを天才にする方法(脚本)

中宮さんたちが天才になれる方法

かしみあ

今すぐ読む

中宮さんたちが天才になれる方法
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇教室
  密かに憧れていた中宮さんがある日変わってしまった。
  いつも笑顔で、さり気なくみんなに気遣いが出来て、可愛いものが好きで、趣味はお菓子作りという王道系の女子
  それが中宮さんだ。
中宮 朱音「∞✥○♫・・・・・・」
  そんな中宮さんが最近、授業中誰にも聞こえないくらいの声で訳のわからない呪文を唱えるようになった。
  朝は誰よりも早く登校するようになったのに元気は無く、友達と話をしていてもどこか上の空だ。
中宮 朱音「∞✥*☆・・・」
  怪我をした時もさり気なく絆創膏をくれたり本当に素敵な女子だった

〇教室
  その中宮さんが今、僕の手を握っているという信じられない状況が巻き起きている

〇本屋
  その経緯を説明すると、学校帰りに本屋さんに寄っていた僕は、忘れ物をした事に気付いた。
  友達の篠嶋に貰った生ワッフルをジャージのポケットに入れっぱなしで忘れてきてしまったのだ
  引き返すのは面倒だったけど、俺には大事なアイテムだった

〇学校の校舎
小鳥遊 聖「こんな時間なら流石に職員室と用務室以外は人居ないだろうな」

〇教室
中宮 朱音「きゃあああ〜!!」
小鳥遊 聖「わぁあああーー!!」
中宮 朱音「小鳥遊くん!」
小鳥遊 聖「中宮さん!!」
小鳥遊 聖「中宮さん何してるの!?」
中宮 朱音「あ〜あ!あとちょっとだったのに」
小鳥遊 聖「あとちょっとって何? 僕なんか悪い事した!?」
中宮 朱音「おまじないをしてたの」
小鳥遊 聖「おまじない!?」
中宮 朱音「この本に書いてある呪文を唱えたら願いが叶うの♪ 誰もいない教室だと特に有効で」
中宮 朱音「今日がもし成功してれば最終日だったんだ」
  なんともズッコケそうな話だったけど、中宮さんの話を聞いてあげないといけない気がした
小鳥遊 聖「中宮さん、そこまでして叶えたい願いって? 最近中宮さんの様子もおかしかったしずっと心配してたんだ」
小鳥遊 聖「僕で良ければ話してくれないか?」
中宮 朱音「私ね、天才になれるおまじないをかけてたの」
小鳥遊 聖「天才っ!?」
中宮 朱音「仲良しの朝日ちゃん・・・あ、私の従姉なんだけど、十歳歳下の彼氏と今年婚約して破談になったの」
中宮 朱音「破談になったっていうか、したのか」
小鳥遊 聖「えっ、それは何と声をかけてあげたら良いのか・・・」
小鳥遊 聖「その彼氏・・・推測で申し訳ないけど、急に朝日さんの前から姿を消してしまった・・・とか?」
中宮 朱音「それがずっと居たのよ」
小鳥遊 聖「どういう事!?」
中宮 朱音「婚約者が学校を卒業して就職したんだけど入社三日目で会社を、所謂バックれちゃったの」
中宮 朱音「朝日ちゃんが退職処理をすることになって」
小鳥遊 聖「げっ!」
中宮 朱音「朝日ちゃんは寿退社してたんだけどすぐ職場に戻ってね・・・」
中宮 朱音「会社行けなくなった婚約者のために自分の職場にバイトで雇ってもらうように頼んだの」
小鳥遊 聖「えーっ何その男。男として情けないな」
中宮 朱音「婚約者は朝日ちゃんの頼んだバイト先も辞めちゃったんだけど、次のバイト見つけたのを見届けて別れたんだって」
小鳥遊 聖「それは大変だったね でも結婚はしてなかったんだ?」
中宮 朱音「婚姻届は書いてたらしいんだけど提出はしてなくて 朝日ちゃんがシュレッダーしたんだって」
小鳥遊 聖「シュレッダー!!」
中宮 朱音「この間うちに遊びに来た朝日ちゃんに言われたの」
中宮 朱音「私には特出した才能もなけど、普通の幸せも手に入らなかった」
中宮 朱音「朱音は私みたいになっちゃ駄目だよ・・・って」
中宮 朱音「だから私、朝日ちゃんと自分が天才になれるようにおまじないかけてたんだ」
中宮 朱音「何か特出した才能を得られれば朝日ちゃんも私も幸せになれるかもしれない」
  そうか最近中宮さんが変な呪文を唱えてたり変な行動をしていたのは全部天才になるおまじないだったのか
中宮 朱音「でもおまじない駄目になっちゃったな・・・他人に見られたから」
小鳥遊 聖「わ、すまん中宮さん!!」
小鳥遊 聖「でもさ、天才になるにはおまじないじゃ効かないんじゃないかな? もっと現実的に違う方法を試した方が良いような・・・」
中宮 朱音「!!」
中宮 朱音「小鳥遊くん、もしかして何か秘策があるのね!?」
小鳥遊 聖「いや、あるわけじゃ無いけど・・・」
  この時、僕に全期待を向けてキラキラした目でこちらを見る中宮さんの力になってあげなきゃいけないんじゃないかって感じたし
  何より中宮さんがずっと頑張っていた謎のおまじないを台無しにしたのは自分だという罪悪感もあった
小鳥遊 聖「わ、分かった!中宮さん!」
小鳥遊 聖「僕が中宮さんを・・・中宮さんたちを天才にする方法を考える」
中宮 朱音「本当!?小鳥遊くんありがとう嬉しい!!」
  そう言うと中宮さんはギュッと僕の手を握った
  ついつい無謀な約束をしてしまったが、中宮さんを・・・中宮さんたちを放っておけないし
  この手を放してはいけない、と強く思った。

〇学校の校舎
  こうして僕の、いや僕らの挑戦と17歳の夏が始まった

〇教室
中宮 朱音「あっ、そう言えばごめんね 私ずっと小鳥遊くんの手を・・・」
小鳥遊 聖「や、全然全く、何の問題もないよ」
  何言ってるんだ僕・・・
中宮 朱音「そう言えば小鳥遊くんはこんな時間に何か用事だったの?」
中宮 朱音「部活は入ってないもんね」
小鳥遊 聖「あ、そうだ これ取りに来たんだよね」
  僕は椅子にかけてあったジャージのポケットから今朝、篠嶋に貰った生ワッフルを取り出した
小鳥遊 聖「中宮さんこんな時間だしお腹すいたでしょ? 良かったら食べない?半分で悪いけど・・・」
中宮 朱音「美味しそう〜♪ 小鳥遊くん甘い物好きなの?」
小鳥遊 聖「うん 良く食べるかな」
小鳥遊 聖「実はうちの祖母ちゃんがカフェをやってて。 カフェって言っても小さいとこだし変わった店なんだけどさ」
小鳥遊 聖「そこの新商品開発とか手作ったり提案するためにスイーツ食べてるんだ」
中宮 朱音「へぇ~小鳥遊くんすごいね」
中宮 朱音「じゃあそれは小鳥遊くんがお祖母さんと食べて 仕事で使うなら貰えないよ」
中宮 朱音「私にはこれがあるから大丈夫。 あ、小鳥遊くんにもあげるね はい」
  中宮さんは鞄から可愛く個包装されたキャンディを取り出した。
小鳥遊 聖「ありがとう」
  中宮さん本当女子力高いよな
小鳥遊 聖「中宮さんさっきの話なんだけど・・・ ほら中宮さんたちを天才にするって言う」
小鳥遊 聖「良かったら朝日さんに直接会って話してみたいんだ。 その方が具体的にイメージが湧くというか・・・」
中宮 朱音「なるほど~さすが小鳥遊くん」
中宮 朱音「それ朝日ちゃん絶対喜ぶと思う!」
中宮 朱音「朝日ちゃんに早速メールしてみるね♫」

〇学校の校舎
  朝日さんと会える日は思っていたよりすぐだった

〇学校脇の道
  中宮さんと話をした2日後の放課後に朝日さんとうちのカフェで待ち合わせをする事に決まった。

〇店の入口
小鳥遊 聖「中宮さんここ うちのカフェ」
中宮 朱音「わぁ~すごい」
小鳥遊 聖「どうぞ」

〇レトロ喫茶
  カラーン
小鳥遊 琴水「いらっしゃいませー」
中宮 朱音「あ、あのおじゃまします!!」
  中宮さん可愛すぎる
小鳥遊 聖「祖母ちゃん、同じクラスの中宮さん。 あとで中宮さんの従姉も来るから」
小鳥遊 琴水「そんなにかしこまらなくて良いのよ ここはお店ですし」
小鳥遊 琴水「好きな時に遊びに来て下さい」
小鳥遊 琴水「今、ちょうどお客さまは聖たち二人だけだから好きなところに座ってね」
小鳥遊 聖「あ、じゃあ中宮さんこの窓際の席で良い?」
小鳥遊 聖「ここだと外の景色がキレイなんだ。 ガーデニングも見れるし」
中宮 朱音「うん ありがとう」
中宮 朱音「ねぇ、小鳥遊くん この店すごく素敵」
小鳥遊 聖「本当?ありがとう」
小鳥遊 聖「うちハンドメイドカフェなんだ」
小鳥遊 聖「祖母ちゃんの趣味でね ここのパーツとか道具で手芸を楽しみながらお茶が出来るんだ」
中宮 朱音「素敵〜♡」
  カラーン
中宮 朱音「あ、朝日ちゃーん♫」
中宮 朝日「どうも〜」
小鳥遊 琴水「いらっしゃいませ どうぞゆっくりして行って下さい」
中宮 朝日「ありがとうございます」
中宮 朝日「小鳥遊くん初めまして 朱音の従姉の中宮朝日です」
小鳥遊 聖「初めまして小鳥遊聖です」
中宮 朝日「この間は朱音が色々お世話になったみたいで、ありがとうね」
小鳥遊 聖「こちらこそ仕事帰りにありがとうございます」
中宮 朝日「ここ小鳥遊くんのお祖母さまのカフェなんだね。 すごいオシャレ」
小鳥遊 聖「ありがとうございます。朱音さんにもさっき言ったんですがうちはハンドメイドカフェなんです」
小鳥遊 聖「あの朝日さん、とお呼びしても良いでしょうか?」
小鳥遊 聖「朱音さんを中宮さんって呼んでるので・・・」
中宮 朝日「オッケー 何でも良いよ♫」
小鳥遊 聖「あの、早速なんですが今日は朝日さんと中宮さんを天才にする方法を考えるため集まってもらいました」
中宮 朱音「ありがとう小鳥遊くん」
中宮 朝日「ありがとう小鳥遊くん」
小鳥遊 聖「因みに朝日さん最近恋愛の方は?」
中宮 朝日「この間フラれたばっかりだから今は彼氏も居ないよ」
中宮 朱音「えっ、朝日ちゃんこの間一回り近く歳下の彼氏と別れたんじゃなかったっけ?」
中宮 朝日「そうそう その後、会社で気になる人がいたからアプローチしてたんだけど反応悪くて」
中宮 朝日「そしたらその人の後輩がアプローチしてくれて、二人で食事行ったりしてたんだけど」
中宮 朝日「また別の後輩からも告白されて、どーしようと思ったんだけど、気になる人とはダメっぽかったから・・・」
小鳥遊 聖「待って朝日さん! 登場人物多くて分からない」
小鳥遊 聖「つまり今はその職場の気になる人を気になってるって事ですか?」
中宮 朝日「それが・・・分からないんだよね」
中宮 朱音「分からない?」
中宮 朝日「うん」
小鳥遊 聖「その気になる人はどこが良いなって思ったんですか?」
中宮 朝日「うーんなんとなく」
中宮 朝日「同じ職場で歳下っぽいけど前よりは歳離れてなさそうだし」
中宮 朝日「なんか良いかなって思ったけど、縁が無かったみたい」
小鳥遊 聖「朝日さんって年下が好きなんですか?」
小鳥遊 聖「元婚約者や元カレ年下の人多いですよね?」
中宮 朝日「いや、そんな事ないんだよね。 今までの職場で年下の人と出会う確率が多かっただけだよ」
中宮 朝日「独身の人も私の年齢になると年下の人の方が多いから」
中宮 朱音「確かに」
小鳥遊 聖「あの因みに過去を遡って好きだった人っています?」
小鳥遊 聖「う〜ん例えばその人と会えたり話せたら胸がキュンとしたり」
小鳥遊 聖「1日それで幸せ・・・みたいな事です」
中宮 朝日「う〜ん そうなると 中学の時好きだった先輩かな〜?」
中宮 朝日「それだとその気持ちに近いかも」
中宮 朱音「中学!?」
小鳥遊 聖「そこまで遡るのか・・・ でも一人でもそういう人がいて良かったです」
小鳥遊 聖「でも付き合った人にはいなかったんですね」
小鳥遊 聖「・・・分かりました朝日さん!!」
小鳥遊 聖「朝日さんの人生を元にした話を書きませんか?」
中宮 朝日「え? 話を書くって!?」
小鳥遊 聖「恋愛小説ですよ!! 漫画でも良い」
小鳥遊 聖「内容はのっぴきならない事情で婚約を解消してきたヒロインが、人生で初めて大恋愛をするっていう」
小鳥遊 聖「ハッピーエンドの胸キュンラブストーリーにしましょう!」
小鳥遊 聖「中宮朝日は作家になります!!」
中宮 朱音「おおーっ!!良い!! 私賛成!!」
中宮 朝日「えっ私、小説とか漫画って今まで書いたことないんだけど・・・」
小鳥遊 聖「だから書きましょう!!」
小鳥遊 聖「朝日さんのその人生経験、絶対に作品にした方が良いと思うし」
小鳥遊 聖「もしかしたらそこに朝日さんの才能が見つかるかもしれないじゃないですか」
小鳥遊 聖「それに朝日さんが今後恋愛する時、朝日さんのトリセツになります!!」
中宮 朱音「小鳥遊くん、それ良い!! 朝日ちゃんの恋愛に効果ありそう♫」
小鳥遊 聖「これが僕の考えた「中宮朝日を天才にする方法」です!!」
  朝日さんを天才作家にしよう!!
  そして小説通り恋愛も上手くいく・・・
  我ながら良いシナリオだ
  まぁ、恋愛は僕がアシストするとして・・・
  まずはそこからはじめよう

〇レトロ喫茶
小鳥遊 琴水「何だか楽しそうね どうぞクラブハウスサンドとケーキです 聖から」
中宮 朱音「わぁ〜美味しそう!! 小鳥遊くん良いの!?」
小鳥遊 琴水「メニューの物も何か好きな物あったら注文して下さいね 聖のバイト代から引いておくから大丈夫」
中宮 朝日「ありがとうございます 小鳥遊くん男前〜 朱音、見る目あるね♫」
中宮 朱音「えっ・・・あの」
小鳥遊 聖「・・・」
小鳥遊 聖「あの、話戻りますが朝日さんさっきの話・・・」
中宮 朝日「小鳥遊くん私やってみるよ」
中宮 朝日「書いてみるね・・・私なりの作品」
  朝日さんが乗り気になってくれたところで「第一回中宮さんたちを天才にするミーティング」は終了した

〇駅前広場
中宮 朱音「小鳥遊くん送ってくれてありがとう あとは女子二人で帰るから」
中宮 朝日「ガールズトークしながら帰るね 今日は本当にありがとう」
小鳥遊 聖「あぁ・・・ じゃあ気を付けて」
  天才作家にするなんて僕の思い付きだけど、中宮さんのおまじないよりは可能性あるだろう
  久しぶりに中宮さんの笑顔見れらて安心したな・・・

〇教室
中宮 朱音「おはよう小鳥遊くん」
中宮 朱音「昨日はありがとう ご馳走さまでした 朝日ちゃんも喜んでた」
小鳥遊 聖「そっか。喜んでくれたなら良かったよ またミーティングしよう」
篠嶋 恵汰「おはよう小鳥遊くん♫ なになになに〜? 朝からラブいじゃ〜ん♫」
小鳥遊 聖「なんだよ小鳥遊くんなんて呼ばないだろいつも」
小鳥遊 聖「ラブいっていうか・・・ あ、ありがとな篠嶋」
小鳥遊 聖「お前の生ワッフルは最高のアイテムだった」
篠嶋 恵汰「俺の生ワッフルがどうした!?」
小鳥遊 聖「お礼に今度奢るから」

〇店の入口
  第2回中宮さんたちを天才にするミーティングは朝日さんの招集によって開催された

〇レトロ喫茶
中宮 朝日「小鳥遊くん書けたよ」
小鳥遊 聖「読ませてもらいますね」
中宮 朝日「今回は漫画じゃなくて小説で書いてみたんだ」
中宮 朝日「とりあえず・・・ヒロインが運命の人に出会う前の話までだけど」
小鳥遊 聖「朝日さん・・・これ面白いです」
中宮 朱音「えー朝日ちゃんすごい!! 私も読ませて!!」
  僕が考えていた以上に朝日さんは小説を書くのが上手だったので、手応えを感じていた。
中宮 朝日「小鳥遊くんこの後なんだけど、ヒロインにどんな恋愛させたら良いと思う?」
小鳥遊 聖「因みに朝日さんはどんな人がタイプですか?」
中宮 朝日「それが分からないんだよね・・・昔はあったような気がするけど」
中宮 朝日「パッと浮かばない。 仕事はしてて欲しいけど」
小鳥遊 聖「そうですね・・・」
中宮 朝日「あ、でも気が合う人が良いかな」
中宮 朝日「やっぱり大事な時に気が合わないと前の時みたいにグダグダになっちゃうから」
中宮 朱音「そうだね。それは大事!!」
中宮 朱音「朝日ちゃんには白馬に乗った王子様くらいの人が現れて欲しい!!」
小鳥遊 聖「中宮さんそれそのまま書いたらファンタジー寄りになっちゃうから」
中宮 朝日「あはは」
小鳥遊 聖「見た目とかどうです?こんな感じが好きとか・・・」
小鳥遊 聖「芸能人でも良いし、漫画とかでも良いですよ」
中宮 朱音「あ、朝日ちゃん好きな少女漫画あったよね」
中宮 朱音「“恋するhoney”って漫画の夏宮くん!」
小鳥遊 聖「いいじゃないですか!恋愛小説なんですから少女漫画みたいな出会いは良いですよ」
小鳥遊 聖「思いっきり夢のあるものにしましょう!!」
中宮 朝日「そっか・・・じゃあ例えばこのカフェを舞台にするのも良いよね♪」
中宮 朝日「朱音と小鳥遊くんが仲良くなったのも、その小鳥遊くんのお祖母様がカフェをやってて」
中宮 朝日「ここで私たちがお茶してるのも考えたらドラマチックじゃない?」
中宮 朱音「確かに」
小鳥遊 聖「確かに普通に高校生活してたら朝日さんとカフェでミーティングするなんてないですよね」
  それも中宮さんが変なおまじないをしていたところをたまたま見たというキッカケだったし
中宮 朝日「会社帰りにいつも寄るこのカフェを出逢いの場所として書いても良いし」
中宮 朝日「ヒロインが会社を辞めてこのカフェで働くって設定も良いな」
中宮 朱音「朝日ちゃん良いね♪ ラブストーリーっぽい♪」
小鳥遊 聖「うん良いね」
中宮 朝日「そう言えば小鳥遊くんのお祖母様はここのカフェやってらっしゃるけど、ご両親は?」
中宮 朝日「ここのカフェ手伝ってたりするの? ・・・あ、話せる範囲で良いよ」
小鳥遊 聖「うちは・・・父はここのカフェをはじめ何店舗か店を経営してます」
小鳥遊 聖「母は専業主婦だったんですが、妹が中学に入ってからはここのカフェとか父の店をちょっと手伝ったりしてます」
小鳥遊 聖「それこそ手芸が好きなのでここでソーイングの会を開いたりとか」
  そう・・・父はいつも忙しいので母は僕と妹の事をすごく考えてくれていた
  妹が中学に入って部活に熱中するようになり、僕もここのバイトを楽しんでいるので母も自分の時間を楽しみ始めた
  僕らの事をいつも一番に考えてくれていて母にはすごく感謝している
中宮 朱音「へぇ~小鳥遊くんのお家ってすごいね! ね、朝日ちゃん!!」
中宮 朝日「そうだね・・・」
中宮 朝日「ねぇ、小鳥遊くんは将来何かやりたい事あったりする?」
小鳥遊 聖「僕は・・・このカフェを・・・祖母の店を継ぎたいと思ってて」
小鳥遊 聖「製菓の専門学生に行こうと思ってるんです・・・」
  実は父親には一度反対された
  ここのカフェは祖母ちゃんの趣味でやらせてあげているもので店舗としての儲けはそこまで無いらしく
  父の親孝行のひとつで祖母ちゃんが辞めたら畳む店だから、って
  当時、夢とか目標が全く無かった僕がここのカフェでバイトして初めて目標が出来た
  スイーツを食べて研究したり、このカフェに協力出来る事はしてきたつもりだ
  そんな気持ちを母さんは分かって応援してくれている
中宮 朝日「そっか・・・目標があって素敵じゃん♪」
中宮 朝日「じゃあ朱音も一緒にここで働かせてもらえば?」
中宮 朝日「お菓子作り好きなんだし、小鳥遊くんにお嫁さんにしてもらってさ〜♡」
中宮 朱音「ちょ、ちょっと朝日ちゃん!!」
中宮 朝日「はい、朱音の進路は決定ね! 小鳥遊くん朱音を宜しく」
小鳥遊 聖「あ、あの・・・」
  朝日さんの目が一瞬真剣で少し戸惑ったけど、中宮さんには幸せになって欲しいし、幸せにしてあげたい
  それがもし僕が側にいてあげる事なら、僕は中宮さんの側に居てあげたいしうちで働きたいなら協力してあげたい
  こんな気持ちになるのは初めてだった

〇駅前広場
中宮 朱音「小鳥遊くん今日もありがとう」
中宮 朝日「小鳥遊くんありがとう」
小鳥遊 聖「あぁ、気を付けて」

〇街中の道路
  僕がもし中宮さんの恋人になれたとして、将来的に中宮さんを幸せに出来るだろうか
  僕は朝日さんの婚約者みたいには絶対なりたくないな
  大事な人を守れるようになりたい

〇レンガ造りの家
「ただいま」

〇豪華なリビングダイニング
小鳥遊 葉乃「おかえり聖」
小鳥遊 聖「あぁ、母さん」
小鳥遊 葉乃「夕飯は食べて来るかなって思ったけど」
小鳥遊 葉乃「ビーフシチュー温めれば食べれるからね」
小鳥遊 聖「ありがとう・・・ 母さん」
  母さんはどんな時だって聖の好きな事をしなさいって言ってくれたから・・・
小鳥遊 聖「母さん僕、進路変更しようと思う」
小鳥遊 葉乃「製菓の専門学校に行くのは辞めるの?」
小鳥遊 聖「うん。僕大学に行く 経営学部に行くことにした」
小鳥遊 葉乃「経営学部って・・・聖」
小鳥遊 聖「祖母ちゃんの店継ごうと思ってたんだけどあの時は自分一人ならあの店で楽しく生きて行けるかなって思ってたんだ」
小鳥遊 聖「でも最近、将来好きになった人を幸せにするためにはどうしたら良いかって考えるような事があって」
小鳥遊 聖「祖母ちゃんの店で働くんじゃなくて、あの店を含めてオーナーになろうかなって」
小鳥遊 聖「なんか父さんの仕事みたいになっちゃうけど」
小鳥遊 葉乃「そう。聖が決めた道なら母さんは応援するよ」
小鳥遊 聖「母さん・・・」
  母さんとゆっくり話すのは久しぶりだった。将来の話も父さんに反対されてから家で話すのは止めたし
  母さんは寂しい思いしているんじゃないかって勝手に気遣って父さんの話もしないようにしていたから
小鳥遊 葉乃「聖には言って無かったけど、お母さんお父さん・・・薫さんにはすごく感謝してるの」
小鳥遊 聖「えっ、父さんに!?」
小鳥遊 聖「父さん仕事ばかりだから母さん寂しい思いしてると思ってたよ」
小鳥遊 葉乃「その逆よ」
小鳥遊 葉乃「聖は私の両親、お祖父ちゃんお祖母ちゃんの事はあまり知らないと思うけど」
小鳥遊 葉乃「うちのお父さんは定年よりもっと前、私が学年の頃に仕事を辞めちゃってね」
小鳥遊 聖「えっ!?」
小鳥遊 葉乃「うちのお母さんはすごく苦労して私とお兄ちゃんを育てたのよ」
小鳥遊 聖「そうだったんだ・・・」
小鳥遊 葉乃「薫さんと結婚してからこうして不自由なく暮らしてるし私たち家族を守ってくれてるってすごく思うのよ」
小鳥遊 葉乃「それにうちのお母さんはね、ずっと夢だった雑貨店をやりながら楽しく過ごしてるのよ それも薫さんのおかげ」
  そんな話全然知らなかった
  父さんが母さんを助けていた事、母さんの母さん・・・祖母ちゃんを助けていた事
小鳥遊 聖「そうだったんだ・・・」
小鳥遊 葉乃「だからね私、薫さんをすごく尊敬してるの」
小鳥遊 葉乃「お父さんは聖たちが小さい頃は特に忙しかったから聖は少し寂しい思いをして来たかもしれないけど・・・」
  幼い頃の休みの日のレジャーや夏休みの家族旅行は母さんと妹3人で行った記憶が多いし
  休みの日にキャッチボールみたいな事もした事が無かった
  僕は父さんみたいな仕事人間にはならないと思っていたけど、朝日さんの話を聞いてから考え方が変わった
  父さんは恥ずかしい人間じゃない。
  寧ろ奥さんに尊敬されているんだからすごいと思う
  朝日さん、中宮さんを天才へと変えるつもりが、僕自身が一番変わったのかもしれない。
小鳥遊 葉乃「薫さんね、聖が将来お祖母ちゃんの店で働くって言った時、反対してたけど後でね」
小鳥遊 葉乃「聖の好きな事させてあげようって言ってたのよ」
小鳥遊 聖「えっ、父さんが!?」
小鳥遊 葉乃「薫さんは学生起業した人だからね」
小鳥遊 葉乃「お店をやってみたいって気持ちは一番分かってる人だと思う」
小鳥遊 葉乃「聖がお祖母ちゃんの店でバイトしたいって言ってた時も、自分の学生時代みたいだって嬉しそうに笑っていたのよ」
  何も知らなかった
  父さんが僕を応援してくれてたなんて
  そして父さんと母さんがよく話をしているという事が分かった
  父さんは母さんのために時間を作って母さんを大事にしていた
  僕は何も知らなかったんだ
小鳥遊 聖「母さんありがとう。僕の知らなかった父さんの話してくれて」
小鳥遊 聖「僕、頑張る」

〇レンガ造りの家
  頑張るのは朝日さんと中宮さんだけじゃない
  僕も頑張ってカッコ良くならないと。
  中宮さんのためにも

〇学校の校舎

〇教室
篠嶋 恵汰「聖おはよー」
小鳥遊 聖「おう!おはよう」
篠嶋 恵汰「あれ?単語帳なんて持ってきてどうした?」
小鳥遊 聖「受験する事にした」
篠嶋 恵汰「え〜マジで!?」
  篠嶋はこう見えて成績も良いし、元々進学予定だったから焦ったりはしていないと思う
篠嶋 恵汰「俺も進学止めて就職しようかなとか色々考えたりした」
小鳥遊 聖「えっ、篠嶋が!?」
篠嶋 恵汰「まぁ、でも進学かな・・・」
小鳥遊 聖「そうか・・・。 受験頑張ろうな」
  篠嶋が就職を考えていたなんて知らなかったな
  まぁ、僕らって将来の事考える時期だよな・・・
中宮 朱音「小鳥遊くんおはよう〜」
小鳥遊 聖「中宮さん おはよう」
中宮 朱音「あれ朝から勉強してる〜 すごいね!」
中宮 朱音「単語帳?」
小鳥遊 聖「あぁ。 大学受験する事にしたんだ」
中宮 朱音「製菓の専門学校は辞めたの!?」
小鳥遊 聖「うん」
小鳥遊 聖「中宮さんと朝日さんのおかげで僕も変われたみたいだ」
中宮 朱音「なんか小鳥遊くん輝いてるね」
小鳥遊 聖「そう? ありがとう」
中宮 朱音「朝日ちゃんも昨日電話したら順調に書けてるって言ってたよ」
小鳥遊 聖「楽しみだな」
  僕は中宮さんに会うまで恋愛をした事がなかったし、結婚の事なんてもちろん考えた事も無かったから
  ギリギリの生活でも一人で楽しく暮らして行ければ良いと思っていたけれど
  朝日さんの話で自分の恋愛観とか両親の見方も変わった
  中宮さんたちはすごい

〇清潔な廊下
「じゃあ小鳥遊くんの進路希望は大学進学に変更ね」

〇事務所
小鳥遊 聖「はいお願いします」
  先週進路希望表を書いたばかりだったので、先生に言って放課後書き直す時間をもらった
桃屋先生「小鳥遊くん何かあった?」
小鳥遊 聖「ありました 良い方で」
桃屋先生「なら良かった」
  桃ちゃんは優しい僕らの担任の先生だ

〇清潔な廊下
  職員室を出て教室に鞄を取りに行った
  今日はバイトも無いし、ちょっと寄り道してから帰ろう

〇土手
  夏の夕方の土手はセンチメンタルで良い
  どんな感情の人にも寄り添ってくれるから
麻真島店長「あれ、中宮!!」
中宮 朝日「麻真島さん!! お久しぶりです。お休みですか!?」
  麻真島さんは以前働いていた飲食店の店長だ
  寿退社してすぐ職場に戻らなきゃいけなくなった時も快く受け入れてくれた
麻真島店長「今日休みだから散歩」
麻真島店長「こっちの方が便利だから最近越して来たんだよ」
麻真島店長「そっか中宮もこの辺住んでたもんな 今日休みなの? そっちも散歩?」
中宮 朝日「はい。 私は有給休暇なので土手で書き物をしてました」
麻真島店長「なんかカッコイイな」
中宮 朝日「あはは・・・ありがとうございます」
麻真島店長「中宮、恋愛は?」
中宮 朝日「今は・・・彼氏居ません」
  ──今まで色んな人の恋愛を見て来て他人の恋愛に口を出した事は一回もないけれど
  中宮は絶対別れ方が良い──
  婚約者とまだ別れる前、麻真島さんに言われた言葉だ。
  親でも友達でもない麻真島さんの客観的な一言は結構ハッとさせられた
麻真島店長「恋愛しろよ中宮」
麻真島店長「中宮はまだ独身だろ?」
中宮 朝日「麻真島さん・・・」
麻真島店長「大丈夫。 中宮はまだ独身だ。 謳歌しろって。な?」
  麻真島さんが優し過ぎるのと、今日の夕日があまりにも綺麗過ぎるのでちょっと泣きそうになった

〇土手
  綺麗な夕日だ
  今日は青春ってのを思い切り感じたい気分だった
  初めて誰かのためにカッコ良く生きたいと思ったり、父さんの事尊敬したり
  急に自分が大人になった気がしていた
小鳥遊 聖「あれ、朝日さん!!」
中宮 朝日「小鳥遊くん!?」
  こんなところで会えるなんて、やっぱり中宮さんたちには縁があるんだろうな
小鳥遊 聖「すごい偶然」
中宮 朝日「ね! びっくり〜」
小鳥遊 聖「・・・夕日が似合ってますね」
中宮 朝日「小鳥遊くんも」
中宮 朝日「学校帰りだったんだ?」
小鳥遊 聖「はい 何だか今日は思いっきり夕日を浴びたい気分で」
中宮 朝日「同じく!!」
小鳥遊 聖「あはは!気が合いますね」
中宮 朝日「ねぇ、小鳥遊くん 私頑張る色々と・・・ 小説も、恋愛も」
小鳥遊 聖「僕も、同じく・・・です」
  最高に綺麗な夕日が僕らの決心を聞き届けてくれたからきっと大丈夫
  そう思った

次のエピソード:中宮さんと僕らは青春中

成分キーワード

ページTOPへ