魔法少女?がやってきた(脚本)
〇空
世界は光で溢れている
それが当たり前のこと
〇空
でも私は、その当たり前を失った
〇女の子の一人部屋
史織「おーい、歩夢!?」
耳に当てたスマホからはなんの返事もない。
史織「寝落ちしたわね」
史織を起こすのも悪いと思い、そのまま通話を切った
史織「ナビ、今の時間は?」
「時刻は2時36分です」
史織「そう、ありがとう」
「どういたしまして」
史織(歩夢と話してるの楽しかったな)
史織(でも、もうこんな時間か・・・・・・)
史織(夜がどれだけ深くなっても、なにも変わらない)
〇黒
だって、私の目の前に広がる景色は────
いつでも夜より深いのだから。
〇女の子の一人部屋
史織(また明日は寝不足かな)
史織(歩夢もきっと同じね)
史織(通話って手段が悪いのよね)
史織(だって目が見えても、見えなくても関係ないんだもん)
史織(私もそろそろ寝なきゃ・・・・・・)
史織「なに────」
史織(窓から音がする────)
史織「だ、誰かいるの!?」
(こんばんわー)
史織「えっ?女の子!?」
幼く可愛らしい声を聞いて、幾分か私の恐怖が氷解していく
(そう、私は女の子────)
私は窓に近づき、カーテンを開ける。
魔法少女「私は誰か、と言う問いに答えましょう!!」
魔法少女「私は魔法少女!!」
魔法少女「魔法によって生また、夢と希望をつかさどる魔法少女なのだ!!」
史織「ま、魔法少女・・・・・・」
史織「そんな馬鹿な話、ある訳・・・・・・」
魔法少女「その馬鹿みたいな話の結晶が、私なのだ!!」
魔法少女「こんな遅くに起きてる人が居たから、気になって覗きに来たの」
史織「ねぇ、ここベランダ無いんだけど・・・・・・」
魔法少女「大丈夫だよ。空を飛んでるもの」
史織「嘘・・・・・・」
史織「本当に空を飛んでるの?」
魔法少女「だよだよー」
私は窓を開け、手探りで手を伸ばす。
しかし、手の届く場所には誰もいない。
魔法少女「えへへ、もうちょっと先にいるよ!!」
史織(本当に空を飛んでる・・・・・・・)
史織(じゃあ、私の前にこんな姿の人間がいるの!?)
〇幻想空間
〇女の子の一人部屋
魔法少女「やっぱり何も見えないんだね?」
史織「うん────」
魔法少女「そっか。まぁ、目が見えてても私の存在には気付かない人ばかりだから、話せるだけで超ラッキー!!」
魔法少女「宜しくね、史織ちゃん」
史織「どうして私の名前を?」
魔法少女「だって通話してた相手が、名前を呼んでたんだもん」
史織「あ、そういうことね・・・・・・」
史織「それで魔法少女さんは、なにしにここへ?」
魔法少女「夜更かしさんを見つけたから、懲らしめに来たの」
魔法少女「テヘッ!!」
史織「こ、懲らしめるってなにするの!?」
魔法少女「嘘だよー。 そんなこと、魔法少女がするわけないでしょ」
史織「それなら、なにしに来たの?」
魔法少女「史織の願いを叶える為!!」
魔法少女「私は希望の星」
魔法少女「魔法少女だから!!」
史織「そんなことが出来るの!?」
魔法少女「できるの。 私は魔法少女だから!!」
史織「本当に可能なら────」
史織「だったら私の目を治して!!」
魔法少女「うんうん」
魔法少女「今まで辛かったね──」
史織「あの事故がなかったら、こんなに辛い思いをすることなかったの」
魔法少女「でも魔法じゃ、時間は巻き戻せないんだ。ゴメンね・・・・・・」
魔法少女「でも、目が見えるようにすることなら、できるよ」
魔法少女「お願い、史織の為に私の魔法を使わせて」
史織「本当に? 本当に、また見えるようになるの?」
魔法少女「うん。だって、魔法は人の願いを叶える為にあるんだもん」
史織「だったらお願い! また見えるようにして!!」
魔法少女「うん、分かった」
魔法少女「でも、ゴメン。 一つだけ条件があるんだ」
史織「条件?」
魔法少女「条件というより、代償かな」
魔法少女「願いを叶える為には、その人の強い願いが必要なの」
史織「代償・・・・・・私は何をしたら良いの?」
魔法少女「た、たいしたことじゃないの────」
魔法少女「私には名前がないの。 だから私だけの名前が欲しいの────」
史織「そんなことで良いの?」
魔法少女「でも名前をつける時、強く願わないとダメだよ」
史織「名前か、どんな名前が良いの?」
魔法少女「史織が良いな!!」
史織「えっ、私と同じ名前?」
魔法少女「うん、とっても素敵な名前だもん。 だからその名前が良い。 史織の名前を頂戴!!」
史織「うん、分かった」
魔法少女「ねぇ、私の名前を呼んで欲しいな」
史織「史織・・・・・・」
魔法少女「えへへ」
史織「ふふっ、史織ちゃん」
魔法少女「はーい、史織でーす」
魔法少女「ありがとう。 これで私も願いを叶えてあげられる」
史織「いつ願いを叶えてくれるの?」
魔法少女「明日の朝。 寝てる間に、願いは叶ってるよ」
史織「明日から、また明るい世界が見れるんだ」
史織「嬉しい────」
魔法少女「それじゃあ、まったねー!!」
私は窓を閉め、期待を膨らませながらベッドにもぐりこんだ。
〇黒背景
眠りに落ちゆく中、私の中である疑問が浮かんだ。
史織(私は夜でも部屋の明かりを点けないし、カーテンは閉め切っていた────)
史織(それに私は歩夢と話していた時、スピーカホンにしてない────)
史織(どうして私が起きてることが分かったの?)
史織(歩夢の声がどうして窓の外にまで聞こえたの?)
〇女の子の一人部屋
「史織、そろそろ学校の時間よ!!」
母の声がドア越しに聞こえる。
史織「今、準備終わったとこ!!」
史織は不慣れな手つきでカバンを手に持ち、手探りで部屋をゆっくり移動する
史織「じゃあ、行ってきます」
〇女の子の一人部屋
〇女の子の一人部屋
机の片隅に置かれたまま、私は部屋に残された
動こうとしても、体を動かすことができない
瞼の閉じない目が、景色を映し続ける
事故に合う前と変わらない、懐かしい部屋────
本当に魔法はあった
でも────
魔法少女は嘘だった────
人形────
これが魔法少女の正体だった
私(目の見えないことを理由に、私は狙われたんだ────)
〇女の子の一人部屋
名前の無くなった私は
目の前に広がる光景を
ただただ、見続ける────
窓から差し込む太陽の日差しは、
温かく────
柔らかで────
眩しかった。
名前は代償が大き過ぎる…と、イヤな予感をよぎってましたが、やはり😅
入れ替わった魔法少女は目が見えているのでしょうか🤔
見えなくても魔法の力で視えているのかもしれませんね…もはや魔女ですね!
じわじわホラーな展開が良きでした😇
先にスチルが見えたので「ん…?」と思ってましたが、ここまでがっつりホラーだったとは……😱
明るい演出を信じていたかったです🥲 笑
目が見えるようになったのに動けなくなるなんて、悲しくて皮肉な結末ですね。真実が分かった時にゾッとしました